甘い



「名前ちゃんお待たせ」






声をかけて笑顔で振り向いてくれるのは僕の可愛い彼女。
名前ちゃんとはたまたま行った喫茶店での出会いからの始まりだ。
初めて会った時から僕の一目惚れで喫茶店に通いつめ会話をするようになり先日一緒に出かけたときに告白をして晴れて付き合うことになった。
笑顔が本当に可愛い子だ。








「ふふ、緑谷さんどうしたんですか」
「っ、名前ちゃん可愛いなぁと思って…」
「へ、そ、そんなことないですよ!」





照れてそっぽを向く行動ですら愛しく感じる。
ぽつり。
空から冷たい滴が落ちてきた。空を見上げると雨が降り始めてきたのがわかる。








「あ、雨だ」
「傘持ってきてないです…」
「とりあえずどこかで雨宿りしなきゃ」
「あ、私の家この近くなんです。よかったら」







そう言うと僕の手を彼女は繋いで引く。
ま、待って?名前ちゃんの家?一人暮らしとは聞いていたがいきなりはまずいのではと思うが雨が強くなってくる。
風邪を引かせる訳にも行かず僕は名前ちゃんに引かれるがまま家へと向かった。







*







「お、お邪魔します…」
「散らかっててすみません」








部屋に入ると可愛らしい家具や綺麗に整頓された空間が広がる。
名前ちゃんの匂いがする。はい、と差し出されたタオルにありがとうと声をかけて使うと名前ちゃんの部屋にいるんだと再認識させられる。
思わずくらっとしてしまう。まずい、まだ付き合って日が浅いというのに自分の理性が持つのかと自分と葛藤する。彼女を悲しませることだけは絶対にダメだ。







「?緑谷さん?」
「ん?」
「大丈夫?怖い顔してる。よかったら座って。コーヒー飲める?」







うきうきしながら僕に気を利かせてくれる名前ちゃん。
その姿ですら僕は和んでしまう。名前ちゃんバカと怒られてもきっと反論できないだろう。
ただ、僕は1つ気になっていることがある。








「大丈夫?緑谷さん」







入れてくれたコーヒーからはいい匂いがする。可愛いマグカップが机の上に置かれると僕はその気になったことを口に出す。






「…名前ちゃん。僕のこといつまで緑谷さん。だなんて呼ぶの?」
「えっ」






いきなりのことに顔を赤くさせる名前ちゃん。
あーやばい。可愛い。困らせた時の表情というのはこうも気分のいいものだっただろうか。自分の中の悪い心が動く。








「僕の名前知らない?」
「……い、出久さん」
「さん?他人行儀でなんか嫌だなぁ…」
「で、デクさん!」
「…今は勤務中じゃないよ。」
「う、い、出久くん」






顔を赤らめてこれでもダメなのかと勇気を振り絞って言う彼女に笑みが出てしまう。可愛すぎるでしょ。
あぁ、もっと彼女のことを知りたい。自分の欲が少しずつ零れてしまう。






「名前ちゃん」
「は、はいっ」
「あはは、何緊張してるの?こっちおいで」







手を広げるとこくっと頷いて顔を赤らめた名前ちゃんが来てくれる。
隣にちょこんと座る彼女だがそれでは満足できない。
名前ちゃんの手を引き自分の膝の間に座らせて後ろから名前を抱きしめる。柔らかい。温かい。







「み、緑谷さん?」
「……」
「い、出久くん!」
「…よくできました」






後ろから抱きしめている腕の力が少し入ってしまう。ちゃんと名前を呼べた名前ちゃんによしよしと頭を撫でてあげる。
気づくと耳まで赤くなっている彼女ににやけてしまう。もっともっと。
彼女は今どんな顔をしているんだろうか。







「……名前ちゃん」
「出久くん?」
「こっち向いて」
「や、やだ」
「なんで?」
「だめ」
「顔が見たい。みせて」







ずるいよと言いながら僕の方に向く名前ちゃんの姿にごくりと喉を鳴らす。
赤い彼女を見てこの顔をさせてるのは僕なんだと。そう思うと嬉しい。
きす、なんかしたら怒られるかな嫌われるかな。そうは考えるが名前ちゃんの頬に自分の手を当てて頬を撫でる。







「ん、出久くんくすぐったいよ」
「…名前ちゃん」
「っ、出久くん」







どんどん近づきそして僕は名前ちゃんと口を合わせた。柔らかいその感触にもっとしたいと思ってしまう。何度も何度も角度を変えて。時折名前ちゃんから聞こえる声ですらもっと聞きたいと思ってしまう。







「っ、んん、出久く」
「…っ」
「っふ、ん」








可愛い。あと少しだけと調子に乗って名前ちゃんの空いた隙間に舌をいれる。
くちゅりといやらしい音と名前ちゃんの声が聞こえる。






「っふ、あ、んん」
「っ、はぁ」
「んんっ」








初めてなのか息ができていないのか僕の肩をぽんぽんと叩いて逃げようとする名前ちゃん。
離れた拍子に僕と彼女の唾液が糸を引いてやらしく思えた。
はぁはぁと息をきらしながら涙目になっている名前ちゃんを見てまた意地悪をしたくなる衝動にかられる。








「出久くん!」
「…嫌だった?」
「っ、そうじゃなくて、あの……初めてで」







初めて。その言葉に更に僕の心は躍る。








「っ、でも気持ちくて。私の知ってるキスじゃなっ…んん」
「可愛すぎ。じゃあ、慣れるまでしよっか」






何度も何度も名前ちゃんと大人のキスを繰り返す。
こんな姿を見るのは僕だけでいい。本当に独占欲が強いとはこのことを言うのだろうか。
可愛い名前ちゃんと一緒に飽きないで何回も唇を交わした。












《甘い》

「っ、ふ、も、むり」
「無理?でも嫌じゃないんでしょ?」
「う、出久くん意地悪だよ!」
「名前ちゃんにだけだよ」