第26話 大人組は名探偵 銀時side

「銀時さん、こんにちは」



まばらにお客がいて、その対応に追われてるなまえが、俺の姿を見るとふわりと微笑む。
邪魔にならぬように、小さく手をあげて適当に席につく。彼女は申し訳なさそうにおじぎをすると、別の席にオーダーをとりにいった。


そんな彼女の姿を無意識に目で追う。クルクルと変わる表情は見てて飽きない。




早く俺のトコ来てくれねェかな……




……って何考えてんだ俺は!
俺今1人で笑ってたよね?? なまえに見られたら変だと思われンだろ!
いつもの(余裕な? )銀さんでいろ。
大丈夫、俺出来る子だから。



「銀時、頭抱えてどうしたんじゃ」



名を呼ばれて振り向けば、今日俺をここに呼び出した張本人の姿。肩を叩かれ、外へ来いと目で合図される。

ここでは話せない内容なのか。
疑問を抱えつつ、ひのやの路地裏へ回る。そこで1枚の写真を月詠から見せられた。



「こいつは数日前、女たちに危害を加えた事件の犯人じゃ。あの話覚えているか? 」
「あぁ」



歳は40代前後ってところ。いかにも悪人面の男だ。しかし、なぜそれを俺に見せる?



「事情聴取をしたんだが、こいつはなまえも狙っていた」
「は?! 」



急な爆弾発言についデカい声が出る。なんでここでなまえが出てくるんだ。

話を聞けば、コイツは雇われた奴で、誰を襲うかも全て指示されたらしい。
しかも依頼主の姿は1度も見たことがない。コイツはあやつり人形ってわけか……



「毎回、待ち合わせの場所に手紙があり、そこに全て記されていたらしい」

「ずいぶんとシャイな依頼主じゃねェの」

「5人目の標的がなまえだった。
他の4人と違う所は、襲うのではなく、捕まえろと命令されたことだ」



誰なんだその依頼主は。なんの目的でなまえを?
アイツが誰かに恨みを買うようにも思えない。
身代金目当て? いや、彼女は富豪の娘でもない。吉原に住んでる一般市民だ。



もう一つ気になるのは……



「あと、コイツの足を斬りつけた奴は誰だ?

まさか、善良な市民サマが吉原の人斬りだと分かり、危険も顧みず、足を斬りつけ、百華に捕まるように仕向けた、なんてうまい話ある訳ねェよな 」

「吉原の一般市民ならまず百華に通報するだろうな。自ら手を下すなど、まずない。

祭りの騒ぎもそうだった。わっちらが調べる前に犯人を見つけ、先回りされておる」



こんな写真の男どこにでもいる。一目見て人斬りだと分かるわけがねェ。調べない限りは。

こんな悪人に、自ら首を突っ込む物好きはそうそういないだろう。
何かそいつはなまえの事情を知ってるのか?
吉原の住人か、あるいは外部の人物か。



「なまえにこの事は? 」
「写真は見せたが、この男は知らないそうだ。全部は言えなかった。なまえの不安を煽るだけだと思ったからな」
「護衛は? 」
「頑なに断られた」



月詠も俺もため息をつく。
アイツはいつもそうだ。帰り道送ると言っても、もう暗いからと俺たちの事を心配して断る。自分のことは後回しで他人のことばっかりだ。



「どんな事でもいい。なまえに何かあれば教えてくれ」
「最初からそのつもりじゃ。でなきゃ話さん」



あの祭りの事件を思い出す。
なまえを見つけた時、その時まであった様々な悪い予感が砕け、心が軽くなったのを覚えている。
同時に近くにいながら、助けられなかった自分に嫌気がさした。もうなまえを危険に晒したくない。

店内に戻れば、待ってましたと言わんばかりになまえが小さく手招きする。忙しいピークは過ぎたようだ。



「銀時さん、いつものいちごオレです」
「さんきゅ」



この笑顔を見れなくなるなんて、まっぴらごめんだ。

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