第38話 夜兎の血 銀時side

「銀ちゃん、もう怪しい奴ら片っ端から潰してくのがいいアル」

「バカ、それは最終手段だ」

「それ余計な仕事増やすだけですよ。地道にいけば何か掴めます」

「悠長なこと言ってんなヨ新八ィィ!
お前、なまえがどうなってもいいアルか?! 」



胸ぐらを怪力娘に掴まれた新八は数メートル先に投げ飛ばされた。
頼んでもないのに、いつもの風景を繰り広げてくれるアイツらをよそに、俺はため息をつく。


あれから、なまえの周辺を調べてはいるが、何も掴めてない。
なまえを恨んでる奴なんていない、と関わりのある奴らは言う。
んなこと、俺も分かってるっつーの!
だからこそ、なまえが狙われる理由がわからねェ。


あの人斬りにそもそも依頼をした犯人を捕まえないと、この事件は解決しねェ。



数日前にひのやで見たなまえを思い出す。
さくら屋の噂を聞いたアイツは、ひどく傷ついた顔をしてた。
けど、そんななまえを見て、俺はいつも通りに接することが出来なかった。
俺が触れて、あの時のことを思い出したら、余計にアイツを傷つける。


伸ばした手はアイツの柔らかい髪に触れることなく、元に戻した。



「どうすればいいんだよ」

「あと、なまえとは関係ないが、新たな問題も吉原で起きておる」



俺の小さな呟きは聞こえておらず、月詠は壁に寄りかかり、胸元から何かを取り出す。小袋の中身は大量の半透明な粒。


「あ? それただのざらめじゃねェか」

「ざらめって甘いやつデショ。私食べたいネ」

「それの何が問題なんですか? 」

「これは、十数年前に開発された代物しろもの

”ハーゼ ブルート”」






「……はい? 」


急な横文字を言われても俺にはさっぱりだ。月詠が知ってるか? と同意の視線を送ってくるが、知らねェとお手上げ状態。




「噂によれば、あの宇宙海賊 春雨で作られた非合法的な薬。

その脅威さから、強制的に開発中止に追い込まれた」


袋を受け取り中身を確認するが、匂いはない。
どんな効果がある薬なのか。
月詠が一瞬神楽を見る。神楽はキョトンとした顔をして次の言葉を待った。


「これは、普通の人間をあの戦闘民族、

……夜兎と同等の身体能力を発揮させる薬じゃ」




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この粒が、神楽アイツらと同じ能力を出させる?
いやいや、うちの神楽ちゃんも相当強いからね。
こんな粒飲んだくらいで、同じなんて言われちゃ、万事屋の名が廃るよ、ほんと。



歌舞伎町に戻り、手の中で月詠から預かったハーゼブルート? を持て余し、月詠から聞いた情報を思い出す。



___正確には、完全に同じではないが、非常に高い身体能力を得られる。

が、身体に負担がかかり過ぎて、普通の人間が使用するとどうなるか。

理性を失い、身体はその突然の負荷に耐えきれなり、壊れる___




そんなのが吉原で出回り始めてるってんのか。なまえの問題も解決してないのに、次々と……



「銀ちゃん、それ」



風呂から出たらしい神楽はタオルを首にかけ、俺の手の中にあるコレを指さす。
珍しく眉間にシワを寄せて、難しい顔。何かを言いたげだ。



「私、ブ●ーレットの事は知らないケド」

「いや、トイレに置くヤツなそれ」

「あのバカ兄貴なら、何か知ってるかもしれないアル」



神楽の兄貴……
あの飄々としたアイツか。たしかに昔にコレは春雨で作られたとか言ってたな。


でもあの兄貴。俺に会ったら絶対殺りにくるよね?
話聞くどころじゃないよね?
あの、口より先に手が出るような野蛮なヤツと、ちゃんとお話出来る自信ないよ銀さん。



「……コレ出回ったらどうなるアルか? 」

「まぁ、夜兎並みの戦闘力をただの人間が発揮できるなら、他の戦闘種族、夜兎の力を欲する奴らが血眼になって欲しがるだろうな」



そんな事になれば、吉原は一気に戦場になる。
いや、もうどこまで情報が回ってるのかわからねェ。
吉原だけじゃなく、他の町にも影響を及ぼすかもしれない。関係のない人々も巻き込まれる。



「……絶対、そんなことさせないアル」

「あぁ。誰も危険になんか晒さねーよ」



なまえも、アイツの居場所も俺たちが守る。





……そうなると、俺たちだけじゃ情報を集めるには限界がある。


”ドSマヨラーゴリラ”トリオに頼むのは癪だが、税金ドロボーにもたまには仕事をしてもらうか?


見慣れた顔を思い浮かべて、ハッと我に返り、急いでかき消す。




「おいおい、家にいる時までアイツら思い出しちゃったよ。胸クソ悪りィ」



とりあえず新鮮な空気でも吸おう。うんそれが良い。



外に出れば、月はわずかに欠けているが町をぼんやりと青白く照らしていた。
そう言えば、祭りの日は星がよく見えたな。




「待てよ……」




あの時、犯人は間違ってそよ姫を連れ去ったんだよな。
提灯を落として、町の灯りを消したのは人々を混乱させる為っていうのはわかる。(大規模すぎるが)

あそこには大勢の人がいた。にもかかわらず、なんで姫さんを選んだのか。



暗闇から誰かを連れ去るなら、なおさら慎重に間違えないようにするはずなのに、何で犯人は間違えたんだ……?

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