
17. 小さな侍
今日の吉原はあいにくの雨。
そのせいか、お客さんは銀時さんたちだけ。店内も明かりがついてるけど、薄暗い。雨音に気をとられていれば月詠さんの凛とした声が耳に響く。
「これで4件目じゃ」
みんなに見えるようにテーブルに並べられた数枚の写真。
私もお盆を胸に抱えながら、銀時さんの背後からチラリと邪魔にならないように覗き込む。
その写真は、正面や斜め上からと角度はバラバラだったが、みんな着物を着た女性の写真。腕や顔などに怪我を負っている。痛々しい姿につい目を逸らした。
「この人じゃないですか。団子屋にいた」
「あー、確かにあのねーちゃんだな」
新八くんが1枚の写真を手に取り、銀時さんと私に見せてくれる。そうだ、この人は団子屋の店員さんだ。その人物は首に包帯を巻いていた。
「閉店作業を1人でしてたところを襲われたそうじゃ」
「この数日間で4人も。犯人は同一人物かい?」
日輪さんの言葉に月詠さんは曖昧な表情。
「この人、スーパーの店員さんだよね。なまえ姉」
「本当だね……」
日輪さんの横から晴太くんが見せてくれた女性は、4人でスーパーに行った時に見かけた店員さんだ。見知った顔が2人もいて、この事件がさらに身近に感じる。
「だが、4人に決め手になる共通点はない。強いて言うなら、全員が女で20代前後であることじゃな」
「無差別か、それとも何か狙いがあるのか」
共通点……なんだろう。違和感がある気がするのに、それが何か分からない。
「百華も街の警備を強化している。極力は女1人で出歩くなと警告も出している。
日輪、なまえも1人では出歩かんようにな」
月詠さんは写真を回収し、私と日輪さんに忠告して颯爽と出て行った。
「なまえ、さくら屋から帰る時も気をつけるんだよ。なんなら百華を1人護衛につけても」
「いえ、大丈夫ですよ日輪さん。さくら屋からアパートまでそれほど遠くないですから」
日輪さんの気遣いはとても嬉しいが、私1人の為に、忙しい百華を護衛になんて出来ない。丁寧にお断りする。
それより私は日輪さんの方が心配だ、と話をすれば晴太くんが自信ありげに胸を叩いた。
「母ちゃんのことは俺が護るから心配しないで! 」
「晴太くんは小さな侍だね」
「ふふ。頼もしいねぇ」
晴太くんの頭を撫でれば、嬉しそうに笑った。