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さかしまな魔法

※3部終了後の話。





私が下宿させてもらっている空条家には承太郎くんという一つ年上の男の子がいる。高身長・クール・イケメンという三拍子が揃った承太郎くんは学校でも女子からモテモテなんだけど、はっきり言ってしまうと不良だった。だって未成年なのにタバコ吸ってるし。めっちゃ喧嘩強いし。顔怖いし態度も悪いし。
そんな不良要素しかない承太郎くんは、なぜか同居人である私に対してはめちゃくちゃ過保護だった。登下校は一緒じゃなきゃダメだって言うし、友達と遊びに行こうものなら、いつ・どこで・誰と遊ぶのか報告しなければならない。やれ門限は守れだの遅くなるなら迎えに行くだの、うちの父親よりも厳しいのだ。たしかにホリーさんは承太郎くんに「なまえちゃんは女の子なんだから、優しくしてあげなくちゃダメよ」なんて言ってたけど。過保護にしろとは言ってない。

今日だって、つい友達と話し込んでしまい、あらかじめ伝えておいた時間よりも遅く帰宅した私を、承太郎くんは物凄い剣幕で怒った。年頃の娘がどうのこうの、夜道は危ないからうんぬんかんぬん…。

「……、さい」
「ああ?言いたいことがあるならはっきり言いやがれ」

私は大きく息を吸った。

「ガミガミガミガミ、承太郎くんうるさーい!」





「あらなまえちゃん、もう学校に行くの?」

足音を立てないように気を付けながら玄関へと向かった私を見て、洗濯物を抱えたホリーさんが不思議そうに首を傾げた。

「はい。ちょっとあの…委員会の仕事で」
「そうなの?じゃあ承太郎も」
「いやいやいや!」

承太郎くんはまだ寝ている、はずだ。何せ承太郎くんが起きてくる前に家を出ようと目覚まし時計を5個もセットして早起きしたのだから。全てはそう、承太郎くんと一緒に登校しなくて済むように…!だって昨日の今日だよ?一緒に登校するとか気まずすぎるでしょう!
だからお願いホリーさん、承太郎くんを起こしに行かないで!

「まだ寝てる承太郎くんを起こすなんて可哀想ですよー!私一人で行けますから!」
「でもなまえちゃん、」
「じゃあ、そういうことで!承太郎くんによろしくお伝えくださ」

ホリーさんに笑みを向けながら後ろ手に玄関の戸を開ける。
とん、と背中に大きな何かが当たったのと、ホリーさんが「あら」と声を上げたのはほぼ同時だった。
嫌な予感しかしない。

「ちょうど今、今日の承太郎はとーっても早起きだったのよって言おうと思ってたの!」

ホリーさんがにっこりと笑う。後ろを振り向くことすらできずカチンコチンに固まった私を余所に、ホリーさんは洗濯物を抱え直すと「いってらっしゃーい!」と言って廊下の向こうへと歩いて行った。

「……あ、わたし忘れ物を」

一旦家の中に戻ろうとした私の肩からするりと鞄が取り上げられる。反射的に後ろを振り返ると、承太郎くんが私の鞄を勝手に開けて中身を確認していた。

「ちょ、ちょっと…!」
「数学、英語、化学、生物、古典。教科書もノートも全部入ってるじゃあねえか」
「っ、」
「忘れ物なんかしちゃあいねえよなあ、なまえ」

帽子の陰から承太郎くんの鋭い視線が飛んでくる。私は俯いてはい、と頷いた。私の"承太郎くんを撒いて学校に行こう大作戦"は失敗である。

「委員会の仕事があるんだったか?さっさと行くか」

承太郎くんは鼻で笑うとスタスタと歩き始めた。私の鞄は彼が持ったまま。このまま一緒に登校するしかない。

「じょ、承太郎くん…今日はすっごく早起きだね…?」

承太郎くん、昨日あんなに怒ってたけど、もう機嫌は直ったのかな。彼の後ろを歩きながら窺うようにそう尋ねた。

「ああ、どこかの誰かが目覚ましを五つも掛けやがったからな。ちと早く目が覚めた」
「あ、はは……」

承太郎くんの声色はいつもと変わらないけど、どこか呆れを含んでいるように聞こえた。私は乾いた笑い声を上げながら承太郎くんの数メートル後ろを歩く。
……気まずい。気まずすぎる。

「おい」

いつの間にか承太郎くんは横断歩道の向こう側にいた。どうやら私との距離が開きすぎて、私が渡り損ねたと思ったらしい。私が追い付くのを待っているようだけど、別に承太郎くんと並んで歩きたいわけじゃないのだ。私は「いやだなあ」なんてぼやきながらのろのろと歩みを進める。
一歩、二歩、三歩。進んだところで、大きなクラクションの音が聞こえ、

「あ、」

私はたしかに横断歩道を渡り始めていたなのに、いつのまにか歩道まで戻っていた。道の向こう側にいた承太郎くんも同じくこちら側に戻ってきていて、私を荷物のように肩に担いでいる。
普段よりぐんと高くなった視界の隅で、先程まで目前に迫っていたはずのトラックがひしゃげて電柱に突っ込んでいるのを捉えた。

「……いつも言っているはずだが」

承太郎くんの低い声は、いつにもまして低かった。私をそっと地面に下ろした承太郎くんの顔はやっぱり怖い。

「あんまり離れられると困る。射程距離内にいないと守ってやれないからな」
「は、」
「いいな?」

念を押すように承太郎くんが問いかける。射程距離、と言われてもよく分からないけど、訳が分からないまま頷いた私の頭を承太郎くんの大きな手が撫でてくれたから、私はそれ以上何も言えなかった。

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