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愛で結ぶにはまだ早い

奈良坂くんが日浦ちゃんを弟子にしたらしい。

私が何度「弟子にしてください!」と頭を下げても了承してもらえなかったから、彼はてっきり弟子は取らない主義なのだと思っていた。だって彼が好きだというたけのこのお菓子まで献上しても、お菓子だけ受け取って私の弟子入りは断られ続けたのだから。

やっぱり年上を弟子にするのは気が引けたのだろうか。いや、奈良坂くんはそんなこと気にするようなタイプじゃないはず。

じゃあアレだ、いとこの那須ちゃんから頼まれたのかも。ということは私も那須ちゃんに口利きしてもらえば奈良坂くんの弟子になれるのではないだろうか。よし、ではさっそく那須ちゃんにお願いして、


「お役に立てなくてごめんなさい…」
「いや全然!全然気にしてないから!!」

なんと、世の男共が好きそうな病弱系美少女のお願いもダメだったらしい。おそるべし奈良坂くん、君の理性は一体どうなっているんだ。

ここまで来ると最早考えられることはただ一つ。
奈良坂くんが私を弟子にすることを頑なに拒むのは、私が当真勇の幼馴染みだからではないだろうか。





「いや、さすがにそれはないっす」

私が思い付く限り奈良坂くんと一番親しそうな米屋くんに相談すると、米屋くんは呆れたようにそう言って首を横に振った。
米屋くんなら奈良坂くんが常日頃から感じている当真くんへの愚痴や悩みなんかを知ってそうだと思ったんだけど、どうやら当てが外れたらしい。

「当真さんは関係ないと思うけどなー」
「ええ!?じゃあ私自身に問題があるとでも言いたいのかな米屋くん……!」
「いやそういう意味じゃなくて!んー、なまえさんがそんなに気になるって言うならそれとなく聞いてみましょうか?」
「ありがとう…!そんな米屋くんにはお姉さんがジュースを奢ってあげよう!!」
「マジすか!ラッキー!」

でも、もし奈良坂くんが私の弟子入りを拒否する理由が当真くんのせいではなく私自身に原因があるとしたら。その原因が私が意識すれば直るものだったらいいけど、「生理的に無理」とか「キモイ」とか言われたらどうしよう……。いや、米屋くんならいい感じで報告してくれるよね!?そんな期待も込めて、ジュースと一緒にお菓子も買ってあげた。信じてるよ、米屋くん。





ボーダーの食堂で三輪隊の面々を見かけたのは、米屋くんとの会話から三日ほど過ぎた日のことだった。
いつもなら奈良坂くんに駆け寄って「弟子にしてください!」と頼むところだが、米屋くんからの報告を受けていなかったから、そうしたいのをぐっと堪えて三輪隊の死角になる席に座った。盗み聞きなんてするつもりはないけど、ちょっとでも奈良坂くんの声が聞こえたらいいなあなんて。そう思った私がバカでした。

「なあ奈良坂、お前なまえさんのこと嫌いなの?」

タイミングを見計らったかのようにそんな質問をしたのは、他でもない米屋くんだった。

お前…!それとなく聞いとくって言ったじゃん!!何でそんなド直球なんだよ!バカか!ああそうだ米屋くんはバカだった!!バカに頼んだ私が悪かった!!!

そう叫んでしまえればどんなに良かったか。私がここで出て行けば奈良坂くんが私のことをどう思っているのか分からず仕舞いになってしまうし、ていうか私ストーカーみたいじゃん。
叫びたかった言葉はオムライスと一緒に飲み込んだ。大好きな半熟デミグラスなのにちっとも味がしなかった。

「いきなり何だ?」
「だってさあ、なまえさんがあんなに弟子にしてくれって言ってんのに、お前ちっともそんな気なさそうだし。なまえさんのこと嫌いなのかなって」
「……別に、そういうわけじゃない」
「なんだよ、じゃあ弟子にしてやればいいじゃん」

もう弟子云々はどうでもよかった。
奈良坂くんが私のことを嫌っているわけではないのなら!もうあれでしょ?年上を弟子にするのがイヤなだけでしょ!?

一気に気分が高揚した私は、ルンルン気分でオムライスを味わった。そこから先の話は全く聞いていない。

ただ後日米屋くんから、「奈良坂の前で当真さんと仲良くするのやめてやってください…」とよく分からないアドバイスをもらった。





***





まだみょうじさんがボーダーに入隊したばかりの頃。俺は一度だけみょうじさんに「もっと脇を絞めた方が命中率も上がると思いますよ」と声をかけたことがあった。

誰にでもこういうことをするわけじゃない。ただみょうじさんがいつも一生懸命に練習しているのを知っていたから。
人一倍練習している彼女なら、フォームを直せばすぐに上達すると思った。だからオレは彼女に一言だけ、アドバイスをした。



「当真くん聞いて…!私B級に昇格だって!!」
「へー、せいぜい防衛任務で足引っ張んなよノーコン」
「うるさいなあ…!もうノーコンじゃないし!!」

みょうじさんがB級に昇格したと知ったのは、みょうじさんが嬉しそうに当真さんに報告している姿を見かけたからだった。
あの二人、付き合ってるらしいよ。そう言ったのは誰だっただろう。

あの二人が所謂幼馴染みだと聞いたあとも、その噂はいつだって俺の頭にこびり付いていた。
男女の幼馴染みが仲良しだなんてマンガや小説の中だけだろうと言いたくなるほど、二人はいつも一緒に行動していたから。


「奈良坂くん、わたし師匠が年下でも気にしないよ!?だから私を弟子にしてください…!」

「透くん、なまえさんが自分も弟子にしてほしいって言ってたけど…」

「なあ奈良坂、お前なまえさんのこと嫌いなの?」


誰に何と言われても了承しなかったことに年齢なんて関係ないし、ましてや当真さんの幼馴染みだからとか、みょうじさんのことを嫌っているとかでもない。

みょうじさんがB級に昇格したのは喜ばしいことだった。でもそれは、できれば本人の口から直接聞きたかった。

俺の弟子になりたいと何度頼まれても、俺よりもっと適任が近くにいるじゃないかと言いたくて仕方がなかった。


「……当真さんがいるなら、俺じゃなくてもいいだろう」

まるで子どもが嫉妬しているような言い方だったが、陽介はただ苦笑いを浮かべただけで「そうだな」としか言わなかった。
後日、陽介からいらぬことを吹き込まれたらしいみょうじさんから「当真くんと絶交すれば弟子にしてくれるの?」と言われた。とりあえず陽介の眉間にライトニングを打ち込んだ俺は悪くない。

title/寡黙




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