普段は裸眼のくせに、新聞など見る時は眼鏡をかける信楽。なまえはそんな信楽の姿を見るのが好きだ。なんだろう。眼鏡をしてるだけなのに、胸がキュンとする、この感じ。たった、一つのアイテムでこんなに人は変わる者なのだろうか。



「なんだよ、人の顔をじっと見て。おじさんの顔に何かついてるか?」

「うん。ついてる」

「え?教えてくれよ、嬢ちゃん」

「眼鏡が…」

「それ、ついてるじゃなくて…掛けてんだよ」



持っていた新聞を折り畳み、こっちにきなさいとと手をポンポンと床を叩きながら合図をする。合図をする信楽に、なまえはちょこんと信楽の隣に座った。そしてまた、じっと信楽を見る



「なんだよ、そんなに見られると恥ずかしいじゃねぇか」

「だって、信楽が眼鏡をかけてる姿、なんか…好き」

「もっと具体的に言ってくれよ。」

「具体的に…?んー…似合ってるって事かな」

「そ、そうか…」



違う言葉を期待していた信楽は、ちょっと残念そうになる。そんな信楽を見て、ふふっと笑うなまえ。目が疲れたのか、信楽は眼鏡を外した。いつのも信楽だと口にして、立ち上がり、飲み物を持ってくると言いながら、立ち上がるなまえ



「眼鏡を外したら、用済みってか?」

「そういう訳じゃないけど…」

「おじさんより、眼鏡をかけたおじさんが好きなんだろ?あーあ…心が痛むぜ…」

「そういう意味じゃない!」

「だったら…本当の意味ってのを教えてくれ」



しくしくと泣き真似をする信楽に、なまえは、また隣に座り、今度は信楽の顔をこちらに向かせる。なんだ?と驚く表情をする信楽に、両頬を包んでいるなまえの手が暖かく感じた。



「私は、信楽の顔が好きだよ。普段の時も、眼鏡をしてる時も…全部…」

「なまえ…」

「だから、こうして…ずっと見ていたいなって…」




なまえの顔が近づいてきて、急接近する。後数センチ動けば、唇が触れ合ってしまうのではないかと思う位近い。いつも余裕な信楽も、こんなになまえが接近してくるとは思っていなく、何も手出しはしない。もう一度、なまえは信楽に好きと伝えて、微笑んだ。可愛らしい微笑みに信楽も一緒に笑うのだった。




fin




miel