「我が君…お話、いえ、お願いがあるのですが…」
「お願い?」
「はい。今晩、なまえ様とご一緒に寝させてもらいたいのです」
「はっ…?」
狗神からの突然のお願い。その内容は一緒に寝たいというお願いだった。持っていたペンがポロッと落ちる。何で急にそんな事を言うのか。なまえは、いいよとも言わず、ダメとも言わず、まずは理由を聞いた。狗神の視線が横にいく
「夢を…見るのです…」
「夢…?どんな…?」
「まだ自分が、捨て犬だった頃の夢です…」
言いずらそうに話をする狗神。それもそうだろう。誰にでも嫌な過去があれば、夢に出てきてほしくなくても、それを忘れさせないようにする夢の中。自分で消したと思っていても、頭の中では全てを消去できない。自分が子供の頃、怖い夢を見て、親に泣きついたように、狗神もまた、誰かの傍にいたいのだ。そんな狗神の気持ちを悟ったなまえは、落ちたペンを拾い、狗神に構わないよと返事をした。
「ありがとうございます。我が君」
「但し、条件がある」
「条件?」
「私が寝ているベッドの下の傍で寝る事。寝ている間、変な事しないで。それが条件」
「御意。なまえ様」
忠誠心が高い狗神は、約束を破った事はない。条件など出さなくても、変な事はしないと思うが、たまに、そんな事は聞いていませんと嫌味を言ってきた事が二、三度ある為、自分の為にも、狗神の為にも、今回の事に関しては条件を出した。時刻を見ると、そろそろ寝る時間だ。狗神は自分専用の布団を持ってきて、なまえが指定した場所に布団を敷き、寝る準備をする。今晩はなまえの部屋で狗神は一緒に寝る事ができ、少し安心する狗神だった
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「んっ…」
ころんと寝返りをしたら、軽く目が覚めてしまったなまえ。もぞもぞと動いている気配に、驚くも、隣に狗神が寝ている事を忘れていた。今の所、何もされていない。再び目を閉じるなまえ。すると、今度は狗神の方から声がした。
「うっ…っ…」
苦しそうな声。しかも一度ではない。数分置きに魘されているような声。狗神の様子がおかしいと気づき、なまえはベッドサイドに置いてある照明をつけた。起き上がって、ベッドの上から狗神の様子を窺う。左右に顔を動かし、額から流れている汗。なまえは寝る前に狗神が言っていた言葉を思い出す。
「まさか…あの夢を…?」
もし、そうだとすれば、早く悪夢から目を覚めてほしい。なまえは布団から出て、ベッドから降り、部屋の電気をつけた。寝ている狗神の傍まで行き、流れてている汗を指で拭おうとすると、狗神はその気配に気づいたのか、パシッとなまえの手首を掴み、なまえを睨みつける。
「やれやれ…貴方方人間は、どこまで私の夢に出てくるのですか…」
「狗神…?」
「人間如きが…私を苦しめて、虐待などして、何が楽しいのですか…?」
「っ…!?」
「そんなに苦しむ姿を見るのが楽しいなら…私がお前等を苦しめてやりますよ」
「あっ…!くっ…うっ…」
ゆっくりと起き上がると、なまえの掴んでいた手が首へと移動した。細い首は、あっという間に狗神の手によって、握りしめられる。呼吸が徐々に狭まっていく。一体、何が起きているのか、なまえは眉を寄せて、ぎゅっと目を閉じてしまう。どうしたの?狗神と言葉にしたくても、今の状況では無理だ。片方の瞼を開け、狗神を見る。ククッと笑いながら、楽しそうになまえの首を絞めつけている。その瞳はなまえを見ているようだが、見てもいなかった。
「いっぬ…が、みっ…」
「フフフッ…もう、あの頃の私とは違うのですよ…」
「ふっ…っ…」
「さぁ、今度は私が貴方を殺してさしあげましょう」
今の言葉にゾッとするなまえ。抵抗するも、その分、力が弱まってしまい、呼吸する事さえも困難だった。このままじゃいけない。何とかしないと。なまえは、自分の首を掴んでいる手首を両手で握り、最後の力を振り絞った。
「狗神っ!!」
「っ…!?わ…わがっ…き、み…?」
「っはぁ…ごほっ…ごほっ…っ…」
夢という名の悪夢から解放された狗神。首を掴んでいた手も、一気に緩み。そのおかげで、なまえは解放され、一気に呼吸をした事によって、むせてしまった。下を向いて咳をし、喉を摩るなまえの姿を見て、狗神はさっき、自分がしていた行為が蘇ってきた。
「も、申し訳ございません!我が君!」
「こほっ…ん…もう、平気だから…」
「私はなまえ様になんてことをっ…!」
さっき自分がしていた行為が夢なのか、それとも今が夢なのか、混乱する狗神。両手で自分の頭を抱えながら、なまえに何度も謝った。なまえは思った。首を絞められて、苦しくて、狗神も怖かった。けど、一番苦しい、辛い思いをしたのは、狗神自身。その痛みを、悪夢によってなまえは狗神から少し貰ったのだ。消せない過去という夢を
「狗神…」
「あっ…なまえ…様…?」
「これで少しは楽になれた…?」
狗神の頬に触れて、自分から狗神の唇にキスをした。そして抱きしめた。まるで自分が母親のように背中と頭を撫で、大丈夫。私がいるから大丈夫だよと伝えて行く。段々と狗神の瞼が下がっていく。なまえの背中に手を回して、眠りにつく狗神。もう、あんな夢を見る事のないよう、なまえは朝になるまで、ずっと狗神の傍に居続けようと決めた。
「狗神…おやすみなさい…」
fin
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繰繰れ!アンケートでネタを提供してくれた匿名の方、ありがとうございました!
狗神で甘々
内容
「虐待を受けていたころの悪夢に魘される狗神さんの話」