夢主=コックリさんの妹設定
絶対に恋だの愛だの、自分の人生には関係ないと思いたかった。自分の中で、好きになってはいけないと封じたはずなのに、その扉が開いてしまうようで怖い。昔から友だった、狐。とその妹、なまえ。二人は何処に行くのも一緒で、中が良い兄と妹。狐とそっくりで、髪も長く、遠くから見れば、美人で、近くでみれば可愛い存在だった。他の妖も、なまえを狙っていた。兄のガードがない時に、話かけたり、告白したりして、なまえは周りからしてみれば憧れだった。
「兄様、今日は何処へ出かけるのですか?」
「いつもの店だ。今日、作る晩御飯の材料を買わないとな。何か食べたいものでもあるか?」
「いいえ。兄様が作る料理なら何でも構いません」
「そうそう、狐の飯は美味いからな〜」
「なっ!いつから居たんだ!信楽!」
「よぉ、狐。嬢ちゃんも」
「信楽さん…」
「その手を離せ!」
信楽は、木の上で寝ていた。下から、話声が聞こえたらしく、誰だ?と覗くと、コックリさんとなまえだった。丁度いい事に、晩御飯の話をしていたので、下に降りて、背後から声をかけたのだ。そして、なまえの両手を掴み、接近していたら、バシッと手を叩かれてしまい、自然と手が離れてしまった。
「んだよ、狐。俺と嬢ちゃんの邪魔すんなよ」
「お前が邪魔してんだよ!このクソニートがっ!」
「兄様…喧嘩はダメですよ。それに、信楽さんだって悪気がない訳じゃ…」
「そうそう、おじさんは嬢ちゃんが心配で」
「嘘をつくなっ!あっ!ヤバイ、特売の時間がっ…。なまえ、俺は先に行ってるから、後で来い!100グラム98円の挽き肉!待ってろよぉぉおおお!」
「あ、兄様!」
「頑張れよ〜狐。さ、嬢ちゃん、おじさんと一緒に散歩でもしようか。目的地までよ」
「え?あ、はい…。すみません、いつも兄が信楽さんにご迷惑をおかけしてしまって。もう、兄様は信楽さんの事を何も解ってないんだから…」
「よせよ、嬢ちゃん。謝る必要なんてないしな。元気だせ」
「信楽さん…ありがとうございます」
ふふっと微笑みながらなまえは信楽にお礼を言った。狐の妹じゃなければ、速攻、お持ち帰りをしたい。この複雑な関係。唯一、信楽はなまえの傍にいても良い存在になっている。なまえが小さい頃から、いつも三人、一緒にいたのは今でも忘れてはいない。時が経てば経つほど、信楽に懐いてくるなまえに、最初は只の子供として見ていた。それが成長するにあたって、違う感情が芽生えてきた
「好きだ…って言えたら、どんなにいいだろうな…」
「何か言いましたか?信楽さん」
「いや、何も言ってねぇよ。なまえ」
この時、信楽は初めてなまえの名前を呼んだ。一定の距離を保ちつつ、信楽となまえはお互いに見つめ合った。名前を呼んでくれた事に、言葉が出ないなまえ。今すぐ、抱き締めて、もう一度、好きだと伝えたい信楽。でも、それは叶わぬ願い。なまえを困らせたくはない。だが、名前で呼ぶくらいなら、今もこの先も許されるだろう。そして、沈黙の空気が嫌で、信楽は煙草を吸い始めた
「悪りぃな、嬢ちゃん」
「え、え…?」
「おじさん、用事がある事を思い出したぜ。狐に宜しく伝えておいてくれ」
「あ…信楽さん!」
なまえに背を向けて、反対方向に歩き出す信楽。背を向けたまま、なまえに手を振る。茫然と立ち尽くしたまま、なまえは信楽の姿が見えなくなるまで、視線をずっと外さなかった。チクリと胸の奥が痛くなる信楽。自分の言葉とは裏腹に、後悔をしていた。自分は、あの場から逃げたのだ。用事なんてないのに、嘘までいついた。
「あ〜あ。ついてないぜ…。好きになった相手が、友の妹…だなんてよ。おじさんの妹だったら、良かったのにな…」
ぽん、と親指で煙草の先端を叩くと灰がパラパラと風にのって飛ばされていく。やっかいな恋をしてしまったと、信楽は飛ばされていく灰を眺めながら、自分の気持ちも、この灰と一緒に飛んでしまえばいいと、伝わらない気持ちを胸にしまい込むのだった。
fin
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繰繰れ!アンケートでネタを提供してくれた匿名の方、ありがとうございました!
信楽でシリアス
内容
「信楽とコックリさんの妹の話」