ベッドの上で寝て3日間が経つ。最初は苦しそうに寝ていたが、今は少しだけ、楽に寝ている。深呼吸もゆっくりと一定のリズムになり、額にも汗はかいていない。それでも、まだ、熱があるなまえ。そんななまえの看病をしている信楽。朝から夜まで、ずっと傍に付きっきりだ。博打から負けて帰宅すると、慌てて何か用意をしているコックリさんを見て、何かあったのか?と聞くと、なまえが風邪をひいたと伝えられた。ぐったりとしているなまえの様子を見て、信楽は自ら進んで看病をすると言ったのだ。何かあった時に、直ぐに助けてあげられるように、信楽はなまえの部屋から離れなかった。
「んっ…あっ…しが…らき?」
「嬢ちゃん…。具合の方はどうだ?」
「まだ、ダメかな…」
「そうかい。あ、飲み物、飲むか?」
「うん…飲む」
寝ているなまえの首筋に、手を置いて体温を確認すると、それに気づいてしまったのか、なまえが目を覚ました。まだ表情が疲れたような顔をしている。起き上がるなまえの背中を支えて、コックリさんが用意をしてくれた、蜂蜜レモンをマグカップに注ぐ。甘酸っぱい香りが心地いい。熱いぜ、と言いながらマグカップをなまえに渡した。
「んっ…う、ん…。美味しい…」
「それは、良かったな」
「温まる…」
もう一口、飲むと、なまえのお腹付近から、きゅるるると音が聞こえてきた。信楽の視線がなまえのお腹へと向けられる。人前で空腹の音を鳴らしてしまったなまえは、顔を紅くして、ちょびちょびと、蜂蜜レモンを飲み、誤魔化そうとしていた。きゅっと、お腹をへこませて、鳴らさないようにするも、また、次の音が鳴りだした。
「…。嬢ちゃん、腹が減ってるのかい?」
「えっ…えっと…。う、うん…。お腹へった…」
「じゃ、少し、食べるか?卵粥」
「食べる。って…え?だ、大丈夫だよ。自分で食べれるよ…」
「遠慮すんなよ。なまえの風邪が治るまで、おじさんが看病するって決めたんだ。だからよ、大人しく言う事、聞いてくれ」
サイドテーブルに置かれてある小さな鍋。その中身は卵粥だった。茶碗に盛りつけて、軽くスプーンで混ぜて、それをなまえに渡すかと思いきや、信楽は熱い卵粥を一口分、スプーンの上にのせて、息を吹きかけて冷ます。それをなまえの口元に持ってきた。恥ずかしがるなまえ。でも、信楽が言っていた言葉の事を思い出して、今回は甘えてしまおうと思い、口を開けた。ほんのりと暖かい卵粥が口の中で広がり、喉を通って、胃の中に入っていく。
「美味しい…。流石、コックリさん」
「おぉ、それは良かった。あ、因みに、その卵粥…。おじさんの手作りだぜ」
「へ…?え、これ…信楽が作ったの…?」
「言っただろ?おじさんが看病するって。ま、全部が全部、おじさんがやったとは言えねぇけどよ…。そのお粥は、おじさんが作ったんだぜ?」
「ごめん…てっきり、コックリさんだと思って…」
「気にすんな。ま、料理は狐の方が上手いからな」
「うっ…。じゃ、もう一口…欲しいな…」
信楽が料理をするイメージが頭の中で思いつかない。こんなに美味しい卵粥を作れるなんて知らなかった。本当に美味しくて、なまえはいつの間にか全部、食べ終えてしまった。信楽に、ごちそうさまと言うと、笑顔でおう、と一言だけ言って、なまえの頭を何度も撫でた。温くなってしまった蜂蜜レモンも飲み終えて、またベッドの中へと戻ろうとする。
「嬢ちゃん、もうちょい、壁側に寄ってくれねぇか?」
「…?こう…でいいの?」
「サンキュ、嬢ちゃん。ほらよ、おじさんの胸の中で寝た方が、早く治るぜ?」
「し…信楽…!?」
端に寄ると、信楽がベッドの中へと入ってきた。何事かと思っていると、いきなり、腕枕をされ、そのまま信楽の胸の中へと顔を疼くませるような形になってしまったなまえ。信楽の左手でがなまえの背中を優しく撫でて、赤ん坊のようにポンポンと叩く。布団の中の暖かさと、信楽の体温を感じていると、瞼が閉じかかる。なまえは自然と目を閉じて、寝てしまった。
「嬢ちゃん、早く治って、おじさんを構ってくれ。嬢ちゃんは、おじさんの生きがいなんだからよ」
先程、撫でていた頭にキスを一つだけする信楽。すると、なまえは微笑みながら、大好きと呟いた。一瞬だけ驚くも、もしかすると寝言かも知れないと、なまえの言葉には返答はしなかった。それから数分後、結局は信楽も、寝ているなまえに対して、愛してるぜと囁き、一緒に夢の中へと入っていくのだった。
fin
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繰繰れ!アンケートでネタを提供してくれた匿名の方、ありがとうございました!
信楽で甘々
内容
「コックリさんと風邪の信楽バージョン」