「なまえ様以外、何もかもが嫌いでございます」



狗神は私以外の人や物には一切、興味がないと言っていた。興味がない=嫌い。それは自分自身も当てはまるという。でも、嫌いの逆は好きという意味でもある。だから私は勝手に解釈をする。狗神にとって、嫌いという存在は羨ましい存在の事なのだと。



「嫌いか…。うん、うん…」

「なまえ様?」

「ねぇ、狗神」

「何でございましょう」

「私、狗神の事、嫌いよ」

「なっ!何故にですか!?」



何故って、それは狗神が一番知ってる事じゃないの?なんて言わない。笑って誤魔化すなまえに、狗神は教えて下さいと何度も答えを求めた。


「狗神が入れてくれた珈琲美味しい」

「我が君!話を逸らさないで頂きたいです」



真剣な目つきになる狗神。真紅の瞳に視線を逸らすことが出来なくなるなまえ。ずるいな。狗神は。その瞳に捕まってしまう私の事なんて、これぽっちも考えた事ないくせに。真っ直ぐで、自分の意思を貫く、紅い瞳。嫌いになれる事なんてない。私も、狗神も。好きと認めたくないだけ。


「なまえ様…」

「どうしたの?狗神」

「私がなまえ様を好きと言ったら…嫌いになりますか?」

「え…?」



狗神の指先が、なまえの顎を持ち上げ、自然と上を向いてしまう。ゆっくりと目を閉じると、冷たい狗神の唇がなまえに触れた。ねぇ、どうしてキスしたの?やっぱり、気づいてるんじゃない。それを、あえて私に言わそうとしてるんでしょ?



「好きです…なまえ様…」

「私は…嫌いよ…狗神…」

「では、どうして…今の…」

「嫌いだから…」

「は…?」

「まだ、私が言ってる意味…伝わらない?」

「フッ、いいえ…。もうとっくの前から気づいてました。嫌いの裏側は…」

「好きという意味…」




目を細めて、今度はなまえ自ら、狗神にキスをした。言葉なんて、くだらない。真実は行動だけ。目で見て、触れて、感じて。そのオマケに、言葉がつくのだ。


だから私は言い続けるよ


貴方が嫌いって…。




fin




miel