うるさく鳴る携帯のアラームを消して、いつもの時間に起床するなまえ。今日は珍しく朝から身体が軽く感じた。何だろうと思いつつ、寝間着から私服に着替えて身支度を整えながら、壁に掛けてあるカレンダーを見ると、そこにはピンク色で書かれている花丸の印。その脇に書かれてある文字。コックリさんと付き合って一周年。その文字を見ただけで気分が上昇している。きっとコックリさんも同じ事を思っているはず。なまえは少し浮かれながら、自分の部屋から出て、台所へと向かった
「おはよう。コックリさん」
「おはよう、なまえ。これ、運んでくれるか?」
「うん、いいよ」
綺麗に並べられた朝食を居間へと運んでいくなまえ。もう既に狗神と信楽は待機していた。二人にも挨拶をして、コックリさんを待つ。数分すると、本人がテーブルの前に座り、いただきますと四人の声が揃った。鳥たちの声を聞きながら、いつもと変わらない一日の始まり。いや、今日はそういう訳にはいかない。時間をみつけて、コックリさんと二人きりになって、色々な話をするんだとなまえの脳内は張り切っていた。ちらっとコックリさんを見ると、パチンッと目が合ってしまった
「ん?どうした、なまえ?」
「へ?ううん、何でもないよ。あ、今日のお味噌汁ちょっと味が違うなって思っただけ」
「おっ!よく気づいたななまえ!」
にこやかに話しながら、コックリさんの話を聞いていくなまえ。そして、朝食を食べ終わり、ゆっくりしていると、ニヤニヤと変な笑みを浮かべた狗神と信楽が傍へとやってきた。アニマル姿の狗神はなまえの頭に上る。その隣で新聞を畳み、眼鏡を外す信楽。変な空気に違和感を覚えつつも、早くコックリさんの手が空かないかなと時計をまじまじと見ていた
「そういえば、嬢ちゃん。今日は狐と何かあるのかい?」
「え?いや、別に何もないけど…」
「我が君!嘘はいけませんな!嘘は!」
「そんな、嘘なんかじゃ…」
「そうかい、そうかい。なんか今日の嬢ちゃんは、狐を見ながらそわそわしてんなぁって思ったからよ。だから何かあんじゃねぇのかなぁってさ」
「二人とも…?な、なに…?」
どこかしら上から目線なのが気になるが、あえてとぼけるなまえ。本当はこんな事、隠さなくてもいいのだろうが、何となく言ったら言ったで、コックリさんに迷惑をかけてしまうのではないかと、なまえなりに気を使った。狐、狐としつこい位に、コックリさんの名前を出す、狗神と信楽。逃げようとすれば、話を変えられてしまい、どう対応していいのか困るなまえ。この二人、今日の出来事を知っているんだと解った瞬間、なまえは、あぁ!と急に大声を出して、頭に上っている狗神を振り下ろし、驚いている二人を確認した瞬間、その場を去った。
「コックリさん!ねぇ!って…いない…?」
きっと台所で洗い物をしているかと慌てて、行ってみると、そこには誰もいなかった。一つため息をついて、気分転換に外に出ようと玄関に行き、靴を穿いて表に出た。折角の記念日なのに、コックリさんは何をしているのか。こうして外を出歩いている今も時間は刻々と過ぎていく。この心のモヤモヤ感をどうにかしたいと考えながら歩いていると、とある場所を思いついた。きっとあの場所に行けば、自分の気持ちも解ってくれるはずだとなまえは小走りで、猫神がいるタマの店へと行くのだった。
「こんにちはー!タマいるー?」
「ん?お客さんかにゃ?おや?なまえだにゃ。私に何の用かにゃ?」
「あっ!タマー!ちょっと聞いて欲しい事があるんだけど…」
相変わらず不気味な店内だなと頭の中で声を出す。だが今はそんな事どうでもいい。タマに色々と話を聞いて欲しいのだ。お互いに適当な席に座って、タマは話を聞いてあげるにゃと優しい微笑みでなまえに答えた。忙しいのにごめんねとなまえは軽く謝り、モヤモヤの原因であるコックリさんについて話を始めた。なまえが話をする度に、コクリと頷いて真剣に話を聞いてあげるタマ。なまえの相談が、この後、苦痛になっていく事に早く気付くべきだったとタマは思い知らされるのだった。