社会人になって一年と数ヶ月。初めは慣れない仕事にも、徐々に覚えて、今では仕事を任されるようになった。まだまだ不慣れな部分はあるが何とか頑張っているなまえ。そんな中、人間関係で最も付き合いが多いと言われている飲み会。逃げたくても上司に言われれば、付き合わなければいけない日々。苦手だったお酒との付き合いにも慣れ、ビールや焼酎など、様々な味を覚えて、美味しいと思うようにもなった。休日の前には、近くのスーパーやコンビニに寄り、籠の中に缶や瓶などに入った、お酒が数種類。所謂、晩酌というやつだ。



「たっだいまー!」

「お帰りなさいませ、我が君」

「あれ?今日は狗神、一人だけ?みんなは?」

「狐殿と信楽殿は居酒屋に飲みに行きました」

「え?そうなの?珍しいね。あ、晩御飯は食べた?」

「はい。先に済ませました」



そっか、と言いつつ、ハイヒールを脱いで、家の中へと上がる。隣にいる狗神に、お酒が入った袋を渡して、冷蔵庫に入れて置くように指示し、自分の部屋に行き、鞄を置いて、着替えを持ち、お風呂場へと向かった。髪の毛を束ねて、シャワーを浴び、身体を洗って、湯船に浸かり、目を閉じる。今日も一日、ご苦労様と言いながら、この後の楽しい時間の事を思うと変な笑い声が出てしまう。いつもは長風呂だが、今日はさっさとお風呂を出た。鼻歌を歌いながら、洗った髪の毛をタオルで拭き、ドライヤーで髪の毛を乾かす。



「よし!準備完了!おーい!狗神いるー?」

「はい!我が君!お呼びでしょうか?」

「ふふっ。うん、呼んだよ。狗神」



ニコニコと笑うなまえを見て、今日も可愛らしいと思う狗神。ふわりと身体から香、匂いが鼻から伝わった。手招きされ、後を着いて行くと、冷蔵庫に閉まったお酒を取り出し、狗神に渡す。小さなおぼんの上にグラスを置いて、部屋で待っててと言いながら、なまえはフライパンを取り出して、お酒に合う、つまみを作り出した。



「いいのですか?我が君。私を部屋に先に行かせるなど…」

「んー?たまにはいいでしょ?一人じゃつまらないし、コックリさん達が飲みに行ってるなら、私達も飲もうよ。明日から休みだしね〜」



出来上がった食材を皿の上に乗せて、まずは一品!と気合を入れるなまえ。普段、なまえの部屋に入る事を禁止されている狗神は、もう一度、確認をとる。すると、早く持って行ってとフライパンに手をかけながら答えた。部屋に着き、ドアを開けると、綺麗に整頓されているなまえの部屋が視界に広がる。テーブルの上にお酒を置いて、まだなまえが来ない事を振り向きながら確認をし、キラリと目を輝かせた。



「我が君のベッド〜!」



大きく両手を広げ、我が君ラブ!と気持ち悪い笑みを浮かべながら、ベッドへと飛び込もうとダイブする狗神。後数センチでなまえの枕に顔が接触するというタイミングでなまえがお待たせ!と部屋に入ってきた。



「!?」



その瞬間、風になった狗神。人間の目には見えない素早さやで、あたかも、大人しくしていたしたと言わんばかりの正座姿になった。何も知らないなまえは暖かい鍋とつまみを置いて、テレビのリモコンを手にし、電源をいれた。



「それでは!いただきまーす!狗神、かんぱーい!」

「なまえ様に乾杯〜!」



グラスに注いだお酒の音がカランと鳴る。一口だけ、飲んだ狗神はチラリとベッドを見る。もう少しでなまえ様が愛用しているベッドと一心同体になれたのに!と心の中で愚痴を言い放つ狗神。ま、今はそんな事はどうでもいい。ベッドより目の前にいるなまえの方が一番大事なのだから。一緒にいれる大事な時間



「なまえ様、私で良ければ、一晩中、晩酌に付き合いますよ」

「本当!?ありがとう、狗神!」



狗神は、おたまを取り、鍋の具材を皿に盛って、なまえに渡す。お酒が減っているグラスの中に、注ぎ込んで、再度、乾杯をするのだった。






miel