寝ようと思っても、寝付けない。本を読んだり、紅茶を飲んでリラックスしたりするも、ベッドの中に入っても目がさえてしまう。ちょっと涼しい風にでもあたろうと、ベランダに出てみる。真っ暗な外。月も出ていない。風に揺られて、木々達の音が少し不気味に感じる。ちょっとだけ怖い。部屋の中は明るく、暖かいのに、一歩違う場所に出れば、そこはもう暗闇の中。
「何してんだ?嬢ちゃん」
「っ!信楽!」
ビクッと肩を震わせて、後ろを振り返ると信楽の姿があった。部屋のノックもせずに、急に声をかけられて、心臓がドキドキ鳴っている。信楽に注意をするも反省する訳でもなく、むしろ今の反応が面白かったとからかわれてしまった。納得がいかないなまえは信楽から目を反らし、背を向ける。そんななまえの姿を見て、まだ笑っている信楽。悪りぃ悪りぃとなまえの頭を撫でるも、無視される。ちょっと意地悪し過ぎてしまったかと撫でていた手を放し、ゆっくりと背後から近づいて、両手を腰に回して後ろから抱き付いた。
「信楽…今度はなに?」
また遊ばれているのかと拗ねた口調で返すも、何もしない信楽。ちらっと顔を信楽の方に顔を向けると、信楽は空を眺めていた。何かを考え、何かを思い出しているような表情。初めて見る。こんな信楽の顔を。すると突然、なまえの方向に顔を向け、お互いに目が合ってしまった。いつもなら、視線を逸らしてしまうのに、今日は逸らす事なく見つめてしまう。
「なまえ…」
触れる唇。信楽から優しいキスが送られる。そっと目を閉じてキスを受け入れるなまえを見て、ついばむキスを何度かすると、信楽の舌がなまえの口内に入って、濃厚なキスへと変わる。んっと喉をならすなまえ。積極的な信楽とのキスは未だに慣れない。恥ずかしくして逃げてしまうも、それを許すはずもなく、何度も角度を変えてなまえとのキスを楽しんでいた。唇を解放すると、なまえの口から唾液が首元へと伝わっていく。その表情を見て笑う信楽
「エロい顔…もっとおじさんに見せてくれ…なまえ」
首元の唾液を人差し指ですくい、なまえの目の前で舐める。それでも足りないと思ったのか、本当は綺麗になっているにも関わらず、まだ残っていると嘘をつき、首筋に顔を沈め、下から上へと舐めていく。こんなに嫌な事をされているのに、突き放す事が出来ない。認めたくないけど、信楽が好きなのだと思い知らされる。顔を離して、もう一度、口づけを交わす二人。キスが終わると、信楽はなまえの身体をお姫様抱っこし、紅くなっている頬に唇を落とし、そのままベッドへと運んだ。
「寝れないんだろ?おじさんが抱き締めててやるから、寝なさい」
「信楽…」
「なんだ?寝れないなら、このまま、さっきの続きでもするか?」
さっきの続きという言葉に反応し、恥ずかしながらも信楽の胸の中で、眠りにつこうとする。信楽の服についている煙草の香りがふわりと鼻をくすぐる。おやすみなさいと心の中で呟いて、なまえは目を閉じ、眠りについた。静かな寝息を聞きながら、信楽は小さな声で、愛してると呟き、まるで大切な宝物のようになまえを抱き締めていく。心配させてしまったのだと自己反省するも、たまにはこういう日があってもいいなと、ついつい寝たふりをして喜んでしまうなまえだった。
fin