信楽の言葉を聞いて、素直に出てくれば良かったものの、なまえは黙ったまま居なくなった。おかしいと思った信楽は、曲がり角まで歩き、笑いながら声をかけるも本人はいない。首を傾げ、吸いかけの煙草を煙草ケースの中に入れて、道路に落ちていた鍵を拾い、鼻歌を歌いながら、なまえが向かっている先に歩き出した。


***


再度、走ったなまえはやっと自宅へ着いた。三階のオートロック付きのマンション。エレベーターの乗り、制服のポケットから鍵を取り出そうとするも、その感触がない。嘘でしょ!?と焦るなまえ。エレベータの扉が開いて、自宅のドアの前で鞄の中を探す。一体どこで落としたのか解らない。保健室?それとも道端?仮に保健室だとすれば狗神に電話をすればいいと携帯を取り出して電話をかけようとすると、目の前に信楽の姿が現れた



「これ、なーんだ」

「あっ!私の鍵!どうして…」

「ん?偶然、拾った。困ってるだろうと来てみれば、案の定だ」

「拾ってくれて、ありがとう。返して欲しいんだけど」

「おじさん疲れちゃったなー。腹減ったし、咽喉も乾いた」



バレバレの演技をする信楽に対してなまえは、こうなってしまった以上、仕方がないと諦め、携帯をしまい、お茶でもどう?と解りやすい態度で接した。これで鍵が返ってくれれば何も文句はないとなまえは安心しきっていた。交渉成立だなと笑いながら、自分の家のドアを開ける信楽。なまえの右隣りの住人は信楽なのだ。面倒だと頭の中で思いながら、中へ入ると、いきなり信楽が抱き付いてきた



「なっ!ちょっと、信楽!?」

「言ったろ?腹減ったし、咽喉も乾いたって」

「そうだけど、この状況と何が関係あるっ…ん、んっ!」



手慣れた指先でなまえの顎に指先をあて、上を見上げるようにし、唇を重ねる信楽。肩から鞄が落ちる。訳が解らなくなるなまえ。そっと太腿から背中にかけて触っていく信楽。時折、ビクつく反応。そのまま次は頭を撫で、耳に触れる。人差し指と親指で挟むようにし、くすぐっていく。



「ふっ…ぁ…」



弱い耳を撫でられ、口元が開き声が出てしまった。信楽はなまえの唇から離れて、髪の毛を後ろにやり、右耳を口に含ませ、舐め始めた



「やっ…!信楽…やだっ…!耳は…っ…」

「弱いからやめろってか?でもよ、嬢ちゃん…この耳で、おじさん達の会話、聞いてただろ?あぁ…それとも、こっちの耳か…?」

「ひっ!も…やめっ…」



反対の左耳の穴の中に、息を吹き込むと、なまえの身体全身が何度か跳ねた。くちゅ、と信楽の唾液が耳の中から聞こえる。このまま黙って信楽の行為を受け入れるしかないのかと我慢していると、突然、身体が浮いた



「うわっ!?へ!?今度はな、にっ…?」

「さっさと言わねぇと…大変な事になるぜ?なまえ」



お姫様抱っこをしながらリビングへ向かう信楽。そのまま少し先に行くと部屋がある。器用に片手で開けて、目の前の大きなベッドになまえを寝かせ、信楽が覆いかぶさってきた。言わなきゃと脳に命令をし、言葉を発しようとすると、それを邪魔するかのように、信楽の顔が近づいて、唇と舌で塞がれてしまった。





miel