08
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カリカリとシャーペンの音が響く教室。中間テストの真っ最中だ。テストは、全校生徒が本校舎で受ける決まり。つまり、私たちE組だけアウェーでの戦いになる。
でも、関係無い。私たちは殺せんせーという素晴らしい先生に教わっている。全て、マッハで教えてくれた通りに、解いていけばなんの問題もない。
私たちだってやればできる。
すらすらとみんなが問題を解いていく。そのペンには迷いがない。
この調子なら、全員50位以内いけるかもしれない!!
そんな希望が芽生えたときだった。
「(え………。)」
次の瞬間、背後から見えない武器が切りかかってきた。
×××
「………これは一体どういうことでしょうか。公正さを著しく欠くと感じましたが。」
「おっかしいですねぇ〜。ちゃんと通達したはずですよ?」
潮田渚 合計点数351点 186人中105位
「あなた方の伝達ミスじゃないですか?なんせおたくら、本校舎に来ないから、ハハハッ!!」
磯貝悠馬 合計点数367点 186人中68位
寺坂竜馬 合計点数230点 186人中159位
「伝達ミスなど覚えはないし、そもそもどう考えても普通じゃない。テスト2日前に…出題範囲を全教科で大幅に変えるなんて。」
「わかってませんねぇ、えーと。烏間先生?うちは進学校ですよ。直前の詰め込みにもついていけるか試すのも方針の1つ。
本校舎のクラスでは、なんと理事長自らが教壇に立たれ、見事な授業で変更部分を教え挙げてしまわれました。」
「…………。」
私たちの背後から切りかかってきたもの。それは、この学校そのものだった。
テスト2日前に全教科の出題範囲を大幅に変更。E組にはその知らせは届いていない。
理事長は、自分の主義のためにこんな妨害までしたのだ。
普段のテストならばまだ良かった。そりゃあ怒るだろうけど、それでも失うものはまだ少ない。それをよりによって、なぜ今回で。
「先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見過ぎていたようです。君たちに顔向けできません。」
殺せんせーにこの教室から出て行かれたら、私たちも、烏間先生も困るのに。
「まぁ、そう言うよね。」
「赤羽?」
ニヤッと笑いながら思いっきり対先生用ナイフを黒板に投げつけた赤羽。
「いいの〜?顔向けできなかったら俺が殺しに来んのも見えないよ。」
「カルマ君!今先生は落ちこんで――……」
バサッと自分の解答用紙を投げつけた赤羽。
「俺、問題変わっても関係ないし。」
赤羽業 合計点数494点 186人中4位
「俺の成績に合わせてさ、あんたが余計な範囲まで教えたからだよ。だけど、俺はE組出る気ないよ。前のクラスに戻るより暗殺の方が全然楽しいし。ね、美藍?」
「………はいはい、そうだねぇ。」
今回のテストはクラス全員が50位以内というわけにはいかなかった。が、みんながみんな理事長の策にかかった訳ではない。
「私も、殺せんせーには感謝しないとかなぁ。」
相沢美藍 合計点数489点 186人中7位
「社会が足引っ張ってこの順位だけど、殺せんせーのおかげで他の教科はほぼ満点だよ。」
「だってよ?どーすんのそっちは。全員50位以内に入んなかったって言い訳つけてここからシッポ巻いて逃げちゃうの?それって結局さぁ
殺されんのが怖いだけなんじゃないの?」
「なんだー怖かったのかぁ!!」
「そう言えばいいのにねぇ!!」
赤羽の一言で一瞬にして盛り上がった教室。
「逃げるわけではありません!!!」
殺せんせーも元気を取り戻したようだ。
「ほんと赤羽、あんた優しいよね。」
「ん〜?惚れた?」
「あほか。」
あほなところはあるけれど、こいつはかなり優しいと思う。このE組みんなの立場と、烏間先生の立場を守ったんだから。
「私のときだって、わざわざ彼女候補なんて冗談言ってみんなの注目集めてさぁ。上手いよね。」
「え?」
「なに、素直に言ったら悪かった?」
「いや、冗談って……。」
「は?」
「ん〜………。」
「なによ。」
「………なんでもない。」
困ったように考え込んで、そして、困ったように笑った。
困った理由が聞きたかったんだけど、教えてくれる様子は全くないので、仕方ないから諦めるとする。
テストの結果も良かったし、なにより私たちはE組であることを誇れたから。
きっと、この学校でも笑っていられると思う。
麗しき劣等
「なにそれ。ヘンな赤羽。」
「………ねぇ、カルマって呼んで?」
「な、なに急に。」