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「イ、イリーナ先生、元気出して!!」「ほら、京都に行けば何かあると思うし!」
「簪とかどう!?」
「おいしいものもたくさんあるからさ!!」
新幹線の中に響く私の声。
クスリ、私の隣の席で赤羽が笑うのが聞こえた。
――ガスッ!!
「いてっ!!」
なんだか腹が立ったので一蹴しておこう。
「イリーナ先生、一緒にお土産見に行こう!」
「美藍っ…!」
私のその一言でなんとか先生は元気になったようだった。
「美藍ひどいなぁー、蹴るなんて。」
「なんかムカついた。」
「だってビッチ先生子供みたいなんだもん。」
「先生は先生で楽しみにしてたんだよ、旅行。」
「そうなんだろうけどさぁ――……」
「うわっ!!」
赤羽と話していたら、急に上がった渚の叫び声。
「何で窓に張り付いてんだよ殺せんせー!!」
どうやら殺せんせーが電車に乗り遅れたようだ。
大荷物を背負ったまま、電車の窓に張り付いている。
「殺せんせー目立ちすぎない?」
「一応国家機密なんだけどね。」
「全く、うちの先生は……。」
菅谷作の鼻で、なんとか……ギリギリ、人に見えるくらいにまではなったけど。
京都で誰かにばれてしまわないか心配だ。
「で、美藍はさっきから何見てるの。」
「しおり。」
殺せんせーからもらったしおり。分厚くてとても見る気になれないけれど、ページをめくってみると内容は素晴らしく面白い。
「ここのお土産を買おうと思ってんの。」
「結構調べてあんじゃん。」
「八つ橋大好きだからさぁー。」
お土産人気トップ100はかなり役に立っている。わりと知られていないようなお店も紹介されているし、八つ橋もかなりの味があるようだ。
「抹茶と栗、かぼちゃ、さつま芋は買う予定。」
「ラズベリーってなに……?」
「ラズベリー味でしょ。」
「美藍買ってみてよ。」
「自分で買いなよ。」
×××
しおりを一緒に見ながら雑談。気が付けばもう京都。
「殺せんせー?宿までついたけど、大丈夫?」
真っ青な顔をしている殺せんせー。どうやら酔ったみたいで。
「…1日目ですでに瀕死なんだけど。」
「新幹線とバスで酔ってグロッキーとは……。」
「寝室で休んだら?」
「荷物持ってこうか?先生。」
この様子だとろくに歩けそうもない。もう顔の形がぐにゃぐにゃだ。
「いえ…ご心配なく。先生これから1度東京に戻りますし。枕を忘れてしまいました。」
あんだけ荷物あって忘れものかよ!!
きっとクラスのみんながそう心の中でツッこんだことだろう。
「ねぇ美藍、私の日程表知らない?」
「え?」
バックの中を覗き込みながら私に聞いてきた有希ちゃん。
「神崎さんは真面目ですからねぇ。独自に日程をまとめていたとは感心です。」
「あの日程表、忘れてきちゃったの?」
「どこかで落としたみたいで……。」
「ご安心を。」
そう言って新しい先生自作のしおりを持ち出した殺せんせー。予備を何冊持っているんだろう。
「先生手作りのしおりを持てば全て安心。」
「「それ持って歩きたくないからまとめてんだよ!!」」
「どこに、いっちゃったんだろう……。」
闇渡り
「有希ちゃんのしおりがないのは残念だけど、このしおりも結構面白いよ。
ほら、ここ。五重塔が倒れてきた時とか書いてあるし。」
「美藍、フォローの入れ方違うよ。」