12

「イ、イリーナ先生、元気出して!!」
「ほら、京都に行けば何かあると思うし!」
「簪とかどう!?」
「おいしいものもたくさんあるからさ!!」

新幹線の中に響く私の声。
クスリ、私の隣の席で赤羽が笑うのが聞こえた。

――ガスッ!!

「いてっ!!」

なんだか腹が立ったので一蹴しておこう。

「イリーナ先生、一緒にお土産見に行こう!」
「美藍っ…!」

私のその一言でなんとか先生は元気になったようだった。

「美藍ひどいなぁー、蹴るなんて。」
「なんかムカついた。」
「だってビッチ先生子供みたいなんだもん。」
「先生は先生で楽しみにしてたんだよ、旅行。」
「そうなんだろうけどさぁ――……」

「うわっ!!」

赤羽と話していたら、急に上がった渚の叫び声。

「何で窓に張り付いてんだよ殺せんせー!!」

どうやら殺せんせーが電車に乗り遅れたようだ。
大荷物を背負ったまま、電車の窓に張り付いている。

「殺せんせー目立ちすぎない?」
「一応国家機密なんだけどね。」
「全く、うちの先生は……。」

菅谷作の鼻で、なんとか……ギリギリ、人に見えるくらいにまではなったけど。
京都で誰かにばれてしまわないか心配だ。

「で、美藍はさっきから何見てるの。」
「しおり。」

殺せんせーからもらったしおり。分厚くてとても見る気になれないけれど、ページをめくってみると内容は素晴らしく面白い。

「ここのお土産を買おうと思ってんの。」
「結構調べてあんじゃん。」
「八つ橋大好きだからさぁー。」

お土産人気トップ100はかなり役に立っている。わりと知られていないようなお店も紹介されているし、八つ橋もかなりの味があるようだ。

「抹茶と栗、かぼちゃ、さつま芋は買う予定。」
「ラズベリーってなに……?」
「ラズベリー味でしょ。」
「美藍買ってみてよ。」
「自分で買いなよ。」

×××

しおりを一緒に見ながら雑談。気が付けばもう京都。

「殺せんせー?宿までついたけど、大丈夫?」

真っ青な顔をしている殺せんせー。どうやら酔ったみたいで。

「…1日目ですでに瀕死なんだけど。」
「新幹線とバスで酔ってグロッキーとは……。」

「寝室で休んだら?」
「荷物持ってこうか?先生。」

この様子だとろくに歩けそうもない。もう顔の形がぐにゃぐにゃだ。

「いえ…ご心配なく。先生これから1度東京に戻りますし。枕を忘れてしまいました。」

あんだけ荷物あって忘れものかよ!!

きっとクラスのみんながそう心の中でツッこんだことだろう。

「ねぇ美藍、私の日程表知らない?」
「え?」

バックの中を覗き込みながら私に聞いてきた有希ちゃん。

「神崎さんは真面目ですからねぇ。独自に日程をまとめていたとは感心です。」
「あの日程表、忘れてきちゃったの?」
「どこかで落としたみたいで……。」

「ご安心を。」

そう言って新しい先生自作のしおりを持ち出した殺せんせー。予備を何冊持っているんだろう。

「先生手作りのしおりを持てば全て安心。」

「「それ持って歩きたくないからまとめてんだよ!!」」

「どこに、いっちゃったんだろう……。」

闇渡り

「有希ちゃんのしおりがないのは残念だけど、このしおりも結構面白いよ。
ほら、ここ。五重塔が倒れてきた時とか書いてあるし。」
「美藍、フォローの入れ方違うよ。」



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