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美藍を少しからかった後、大部屋に戻る。そろそろ就寝時間。みんな寝ていなくてはいけない、けれど、中学3年生の男子生徒が素直に就寝するわけなくて。
「お、面白そうなことしてんじゃん。」
やっぱり、みんなで集まって定番、女子の話。
「カルマ、おまえ気になる娘いる?」
「美藍。」
「うん。そりゃそうだ。」
どうやらランキング作成中のようで。
「で?俺以外に入れたヤツなんて、いないよねー?」
「「「安心しろ。美藍は票を入れたら命が危ねぇランキング堂々1位だから。」」」
「さっすが!!抜かりがないねー。」
みんなの粋な計らいにより、美藍はランキングの紙には書かれていない。
「さて。じゃあ。」
「ん?」
「カルマさんの、」
「素敵な素敵な?」
「恋愛トークの時間です!!」
「いや、話す事ないよ?」
ほかの奴に矛先を向けてやろうと頭を巡らせるが、しまった。このクラスで目立った噂は今のところない。今のところ。
「うそつけ!!付き合ってんだろ!!」
「放課後デートしてたろ!!」
「大体班一緒だし!!」
「席隣だし!!!!」
「落ち着けって。」
こんなに炎上するものなんだろうか。中学3年生男子とは。
「まぁ待てよ。俺が今日の話してやるから。」
別に自慢話をすること自体は悪くない、けど。
でもなんだかこいつらにそんな話をするのは勿体ない気がするし、第一そんな内容の話がまるでない。悲しいほど。
だから受け流そうとしていたのに、突然にやにやしながら出てきた杉野。
あぁ、これは嫌な予感。
「実は、なぁ――」
×××
「「「抱き合ってただぁ!?」」」
「おいちょっと待て!」
「どういうことだそれ!」
「説明しろカルマァァァァ!」
「ついにアイドルが悪の手に……っ!」
「いや、誤解……、誰だ今悪の手っつったの。」
「あ、そういや赤羽からカルマ呼びにもなってたな。」
「「「なにぃぃぃぃぃぃぃ!?」」」
「ちょ、杉野!待てって、ほんと誤解だって!!ちょっと色々あって、」
「「「カルマお前もう黙れ!!」」」
ひどくないだろうか。杉野の爆弾発言により男部屋は一瞬にして大騒ぎ。ひどくないだろうか。一体誰がこの騒ぎに終止を打つんだ。俺か?俺なのか?
「………確かに、ちょっと衝動的になって抱きしめちゃったけど。たぶん美藍は恋愛的なものとしては受け取ってないと思うし。」
初めっからそうだ。彼女の恋愛ゾーンがどこなのか、俺には全く分からない。友人と呼べる範囲が広すぎる。どこからが恋愛対象として見てくれるのか、どこからが男として見てくれるのか。そもそも恋愛感情があるのか。
「まぁ、その鈍感さに乗っかっちゃって、さ。しっかり男友達の立場確保しちゃって。」
席が隣だろうが、班が同じだろうが、放課後遊びに行こうが、彼女にとって俺は友達だから。悲しいと言えば悲しいが、意識していないのを逆手にとってぐいぐい近付いていったのも事実。
「恋愛感情なんてない、ありもしないきれいな友情創りあげちゃったんだもん。今さらマジの方で好きなんて言えないよ。」
だから、きっとしばらくはこの状態で。もしかしたらずっとこの状態で。
踏み込もうにも踏み込めない距離を、保ちながら彼女が誰かのもとへ行ってしまうのを見るしかないのだろうかと、最近になって思いはじめて。
「「「………………。」」」
なんだか、湿っぽくしてしまった。みんなが騒ぎたかった内容とは少し、違ったんだと思う。
「ごめん、気にしな―――」
「なんか。」
「カルマが哀愁漂わせて恋愛話してると………」
「「「様になっててちょームカつく。」」」
………前言撤回。なにが湿っぽいだ。
「今日の俺、扱い散々じゃね?」
「ま、まぁまぁ。」
「じゃ、じゃあ代わりに友達としていい感じの女子教えてくれよ、な!」
はぁ、いっか、今日は疲れたし。この場の雰囲気壊すのも面倒だし、これ以上恋愛について突っ込まれたくないし。
「んー、奥田さんかなぁ。」
「お、意外だな!」
適当に話に乗って、ほかの奴の情報集めてやろうと。
僕の愛は届きそう?
弱い僕が勇気を出せない間に
誰かが、彼女を幸せにしませんように。