25

「……………。」
人生では究極の選択を迫られる時が必ずある。そんな時、迷わずにすぐ決断できる人なんて一体いくらいるだろうか。自分の選んだ道に後悔をせずに、前を向ける人なんて一体いくらいるだろうか。
人は、迷う生き物だ。だからきっと、こういった場面で早く決断できる人なんてきっと――

「わかったから選びなって。」
「………はい。」

私は今、迷っている。

「チーズ明太子にするか、ねぎタコにするか………。」

たこ焼きの味をどれにするかで、迷っている。
2つ全て買ってしまうという選択も無いわけではないのだが、私がそんなに食べられるわけもなく。いや、食べられる。たこ焼きならばいける。いやダメだ。太ってしまう。

「そんなカロリーなんて気にしなくていいと思うけどー。」
「カルマは細いからそう言えるの!!」

久しぶりのカルマとのショッピング。
いや、ショッピングと言ってもただフードコートで駄弁っているだけなんだけれど。

「しょうがないなぁ。」

たこ焼きでも食べよう、という流れになってかれこれ数分。ずっと迷っていた私のもとに救世主が現れた。

「両方買って、半分ずつ食べればいいでしょ?」
「いいの!?」
「俺もどっちも食べたいし。一石二鳥。」
「ありがとう!!」

はいはい、と呆れながら列へ並びに行ってくれた。私は席確保でそのままステイ。
それにしてもカルマ優しい。さりげない優しさってやつなんだろうか。

「あれはモテる。」

1人頷く私は周りから見れば変人だ。知り合いに見られていたら恥ずかしいなーと思ったその時。

「美藍?」
「え?」

突然かけられた声。どこかで聞いたことのあるような、ないような。いやある。
でもE組のみんなじゃない。とっても、久しぶりな、この声は――

「美里、………。」
「久しぶり、だね。」

少し控えめに微笑んだ美里。彼女は、私が2年の時のクラスメイト。かなり、仲が良かった、けれど。

「私、隔離校舎だから。会わないもんね。」
「そう、だよね。うん。」

私から連絡先を消した。でもそれは彼女だけじゃない。
上手くいかなくなってきた時から、人間関係が面倒になってきた時から、クラスのみんなと距離を取り始めた時から。私のケータイの中から、みんなの連絡先は消えた。
そしてそのままE組になったから、もうみんなとの関わりは皆無になっていた。

「でも、さ。美藍はすごいよ。」
「……………?」
「E組に行っちゃったけど、成績はいいじゃん。」

私の成績がいいのは、私がやる気を出したから。それはクラスのみんなの、いや主にカルマの?おかげだ。
私は恵まれた場所にいると思う。周りからはそう見えないだろうけれど。

「楽しいよ、E組。」
「よかった。ヘンな噂があったから、心配してた。」
「噂?」

――赤羽業との、噂

「………カルマ、?」
「うん。」

予想外の名前に、一瞬止まる。けれど、すぐに事情が読めた。
きっと私がカルマに脅されてるだのカツアゲされてるだのといった類の噂だろう。
カルマのことだ。そんな噂も流れかねない。

「大丈夫、仲良くやってるよ?」

確かに私も、3年生になるまではカルマのことは不良としか思っていなかった。
でも、実際かけ離れていると思う。そう考えると、なんだか可笑しくなってしまった。

「ほんと?」
「ほんとほんと。めちゃ優しい。」
「そっか。」

私の笑顔を見て、少し寂しそうに、けれど嬉しそうに笑う。

「あ――、じゃあもう行くね。」
「え、ちょ――………。」

何かに気が付き、焦ったように立ち去る彼女。またね、も何も言えないまま去ってしまった。

「美藍。」
「あ、お帰りカルマ。」

ちょうどその場に帰ってきたカルマ。美里は、きっとカルマを見つけたから帰ったんだろう。

「大丈夫だった?」
「んー?」

向かいに座りながら、尋ねる。

「いじめられなかったか聞いてるの。」
「全然?」
「あ、美藍はいじめるほうか。」
「待ってそれどういう意味。」

べーつにぃ、とバカにするカルマと、ぎゃあぎゃあ騒ぐ私。
それを、遠くから見ている美里がいたなんて、気が付かなかった。

かつての私とかつてのあなた
「ねぇ、今チーズ多いところ食べたでしょ。」
「おーいしー。」
「あぁっ!!もうチーズ残ってないじゃん!!カルマずるい!!」
「ねぎあげるねぎ。」
「チーズよこせ!!」
「(ほんとに仲良いんだ………。)」



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