26

ザアアアアと降り続く雨。これで一体何日目だろうか。
空がこんなにも暗くじめじめした雨が降っていると、なんだか気分が落ち込んで私まで暗くなってしまう。
天気1つでそこまで変わるのか単純め、と言われればそれまでなんだけれど。

「おはよーございまーす。」

けれど今日は、そんな雨空を吹き飛ばす様な面白い話がある。

「転校生?」
「まあぶっちゃけ殺し屋だろうね。」

烏間先生からのメール。それは、転校生が来るという連絡だった。

「律、なにか知ってる事ないの?」
「少しだけ。初期命令では…私と「彼」の同時投入の予定でした。私が遠距離射撃。彼が肉薄攻撃。連携して殺せんせーを追い詰めると。」

「彼」、ということは、転校生は男の子ということか。

「ですが…2つの理由でその命令はキャンセルされました。」
「2つ?」
「ひとつは、彼の調整に予定より時間がかかったから。もうひとつは、

私が彼より暗殺者として圧倒的に劣っていたから。」

調整、とは……?彼、転校生はやはりまた機械かなにかなのか。

「私の性能では…彼のサポートをつとめるには力不足だと。そこで、各自単独で暗殺を開始することになり、重要度の下がった私から送り込まれたと聞いています。」

殺せんせーの指を飛ばした律がその扱い。いったいどんな怪物がやってくるのか。

――ガララッ!!
「「!?」」

みんなの緊張が最高潮になったときを見計らったかのように開けられた扉。
入ってきたのは、真っ白な服(?)、を着た………男性?女性?

驚いている私たちに気がついたその人は、スッと手を出すと………、

――ポン

軽快な音を立てて鳩を出した。手品だ。手品。

「はははっ、ごめんごめん、驚かせたね。転校生は私じゃないよ。私は保護者。まあ白いし、シロとでも呼んでくれ。」

だがしかし、いきなり白装束で手品とは。第一印象いまいちだと思う。初対面の人的には引くと思うんだけれど。と、何気なく視線を教室の上に向けると、

「……………………。」

液状化した殺せんせーが。

「ビビってんじゃねーよ殺せんせー!!」
「奥の手の液状化まで使ってよ!!」
「い、いや……律さんがおっかない話するもので……。」

殺せんせーの弱点15、噂に踊らされる。そんな単純な手にも引っ掛かるのか。情けない。

「ちょっと性格とかが色々と特殊な子でね。私が直で紹介させてもらおうと思いまして。おーいイトナ!!入っておいで!!」

イトナ。転校生はイトナ君というらしい。人間、なのだろうか。人間で私たちと同年齢で、それでいて、律より暗殺技術が高い?一体それはどういうこ――

――ゴッ!!

「!?」

考えに考えていたら、突然後ろから降りかかってきた……破片!?
ガラガラと音を立てて崩れている壁。どうやら転校生のイトナ君は壁を突き抜けて入室したようだ。いや、ドアから入れ!!!

「俺は…勝った。この教室の壁よりも強いことが証明された。それだけでいい……、それだけでいい。」

そう静かに言い、黙って着席した彼だけれど、ごめんなさい。私が良くない。
彼の隣の席である私は、もろに壁の破片を浴びている。もしもそれで毎日登校するとか言い出したら私の心臓は持たないんだけれども。
それにこの子、どこかおかしい。どうして今の季節にマフラーなんて。
今はどちらかと言えばじめじめして蒸し暑いという季節。それに彼、壁を突き抜けて手ぶらで入ってきたのに、全く濡れてない。
そのあたりが、彼が律よりもすぐれた暗殺者であることを繋がるんだろうか。

「ねえイトナ君。ちょっと気になったんだけど。」

彼に話しかけたのはカルマ。

「外どしゃ降りの雨なのに……なんでイトナ君一滴たりとも濡れてないの?」

私の心の声を代弁して、彼に聞いた。
するとイトナ君はきょろきょろとあたりを見回し、

「ッ!?」

じっと、彼を観察していた私と目があった。

「………おまえは、たぶんこのクラスで1番強い。」

しばらく私を見て、目をそらすと立ち上がったイトナ君。そのままカルマへ近付いていく。

「けど安心しろ。俺より弱いから…俺はおまえを殺さない。」
「……!!」

そう言って、カルマの頭を―――くしゃくしゃとなでた。
赤子のような扱いに、少し不満そうな顔をしたカルマ。

「それと、おまえもだ。」
「ぇ………。」

くるりと私に向き直ったイトナ君。

「おまえは賢い。けど俺より弱い。」
「………。」

「強い弱いとはケンカのことですか?力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ。」

くすくすとようかんを食べながら馬鹿にしたように言う殺せんせー。

「立てるさ。だって俺達、

血を分けた兄弟なんだから。」

「「!?」」

兄弟………兄弟……?……兄弟!?
私たちが思っている兄弟と、彼が言っている兄弟とは同じ意味なのだろうか!?

「負けた方が死亡な、兄さん。」

片割れだったヒト
その言葉一言で
クラス中がざわめいた



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