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――だって俺たち、血を分けた兄弟なんだから「……………。」
彼の爆弾発言から約半日。時は放課後。
机で作ったリングの中で、今、試合形式の暗殺が始まる。
「では合図で始めようか。」
この1日、堀部イトナ君は私たちと一緒に教室にいた。が、彼の正体は解らなかった。
殺せんせーと同じように、甘いものが好きで、巨乳好き。
けれど、それだけでは兄弟とは言い切れないものがある。
甘いものと巨乳が好きな人なんて、この世に一体何人いると思っているのか。
「暗殺………、」
この試合、いや、暗殺で、彼の正体がわかるのだろうか。
殺せんせーが隠してきた過去が、わかるのだろうか。
「開始!!」
――ザンッ!!
試合開始直後、私たちの目は1ヶ所に釘付けになった。
それは、斬りおとされた先生の腕に、ではなく………
「まさか……。」
「うそ、でしょ?」
「「触手!?」」
イトナ君の頭には、殺せんせーと同じように触手が。
ヒュンヒュンと音を立てながら動いている。
これなら、あの大雨の中でも濡れずにすむ。全て触手で弾いてしまえばいいんだから。
マッハ20の怪物。確かに、律がサポート出来る範囲を越えている。
「どこでそれを手に入れたッ!!その触手を!!」
「先生……?」
寺坂たちに怒った時以来、1度も見たことがなかった。殺せんせーのマジギレ。
殺せんせーは、過去に………一体何があったんだろう。
「君の弱点は全部知っているよ。」
攻撃を続けるイトナ君。
「脱皮は見た目よりもエネルギーを消耗する。よって直後は自慢のスピードも低下するのさ。」
殺せんせーの弱点、16。脱皮直後。
「常人から見ればメチャ速い事に変わりはないが、触手同士の戦いでは影響はデカイよ。」
「――!!」
確かに、私たちから見て速さに変化があったようには思えない。けれど、随分押され気味だ。
「加えてイトナの最初の奇襲で腕を失い再生したね。再生も結構体力を使うんだ。」
殺せんせーの弱点、17。再生直後。
「また、触手の扱いは精神状態に大きく左右される。」
「あ………。」
そこで思い出す、殺せんせーの弱点、2。テンパるのが意外と早い。
「予想外の触手によるダメージでの動揺。気持ちを立て直すヒマも無い狭いリング。
今現在どちらが優勢か。生徒諸君にも一目瞭然だろうねー。」
これが、全て。このシロという人の計算なのか。
「さらには、献身的な保護者のサポート。」
殺せんせーの弱点、18。特殊な光線を浴びると硬直する。
「兄さん、俺はおまえより強い。」
殺せんせーが追い詰められている。あと少しで、地球が救える。
……なのに。
「……………。」
クラスのみんなの顔は、どうして晴れないんだろう。どうしてみんな悔しそうな顔をしているんだろう。そして、どうして私も、悲しいんだろう。
初めは、私が殺せるとは思っていなかった。こんな怪物、手に負えるだなんて思っていなかった。
でも、確実に、殺そうと思って努力しているときは楽しかった。私という居場所を、初めて見つけることができたと思った。
後だしのじゃんけんのように次々に出てきた殺せんせーの弱点。
本当なら弱点は、私たちがこの教室で見つけたかった。E組が……殺したかった!!
「ひとつ、計算に入れ忘れていることがあります。」
――ドッ!!
殺せんせーに最後の攻撃を仕掛けたイトナ君。
「!!」
でも、そこにあったのは――
「おやおや、落し物を踏んづけてしまったようですねぇ。」
対先生ナイフ。
「同じ触手なら…対先生ナイフが効くのも同じ。触手を失うと動揺するのも同じです。」
ぼふっと殺せんせーの脱皮した皮でイトナ君を包む。
「でもね、先生の方がちょっとだけ老獪です。」
そのまま皮ごと、イトナ君を外に投げた。
「君の足はリングの外。」
ルールに照らせば、イトナ君は死刑。ということは、
「先生が、勝った………!!」
世界の果てのファンタジー
性能計算なんかでは測れない
経験≠フ、差