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「実は先生…人工的に造り出された生物なんです!!!」「「「だよね。で?」」」
イトナ君が帰ったあとの教室。
予想外の触手の登場に、殺せんせーの隠された過去が明らかになるかもしれない。
チャンスだ、と感じたクラスのみんな。けれど、答えははぐらかされてしまった。
「知りたいのなら行動は1つ。」
殺せんせーが茶化すのはいつものことで、それをつっこむのは私たちの仕事。
「殺してみなさい。」
私だって、いつもは殺せんせーの横で、みんなのそばで、クラスの輪に加わっている。
「暗殺者と暗殺対象。それが先生と君達を結びつけた絆のはずです。」
でも、なんだか今日はそんな気になれない。どこか、なにかが、もやもやする。
今さっき、殺せんせーは人工的に造り出されたと言った。
ならば、きっと、イトナ君以外にも、殺せんせー以外にも、触手を持った生き物がいるかもしれない。
そして、イトナ君のように、一見普通にしか見えない姿をしているかもしれない。
ではもしも――………
「美藍?」
「……へっ?」
「どうしたの?」
声のした方へ顔を向けると、不思議そうに私を見ている茅野っち。後ろには、渚とカルマもいる。
「イトナ君、気になる?」
「あ、あ――……いやぁ……。」
さっき、ふと、思い浮かんでしまったこと。
「イトナ君って、普通だったよね。」
「普通?」
「見た目、普通の中学生だった。」
「あー、まぁ、ね。」
「もしも、さぁ。」
私の妄想にすぎないんだけれど、どこか否定しきれない。でも、なんだか認めたくない。
可能性が0ではないことが、何よりも怖い。
――もしも、このクラスに触手を持った人がいたら、どうする?
「………え?」
「触手が人工的に造り出されたものなら、まだ他にも触手を持つ人はいるかもしれない。でも、触手って持っていても一般人となんら変わりのないように見える。さっきのイトナ君みたいに。
だったら、このクラスにすでに殺せんせーを殺そうとして、触手をもった人がいて、普通に生活していて、E組に溶け込んでいて、殺せんせーを殺す機会をうかがってる。
そんなことも、ないわけじゃ――」
そこまで言って、気がついた。
「茅野っち?」
茅野っちの表情が、微かにだけど強張っている。
「ご、ごめん。」
考えなしにペラペラと出てきてしまった、私の予想。いや、予想とも言えない。妄想だ。
もっとよく考えてから話せばよかった。茅野っちを、いたずらに怖がらしてしまったではないか。
「いや、私の妄想だからさ!!気にしないで!」
「わかってるよ!だいじょーぶ!」
ははは、とお互いぎこちなく笑い合う。
見えない敵。見えない力。怖いものを、怖いと思えない、恐怖。
イトナ君を見て、そのことに気が付かされた。
「美藍、帰るよー。」
「う、うん!」
気が付いてしまった不幸と気が付かなかった幸い
その後、みんなで話しながら帰ったけれど
なに1つ、私は覚えていなかった