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「あっつ――――い!!」暑い。暑い。暑すぎる。こうも暑いとミンミンミンミンうるさいセミにも腹が立つ。
殺せんせーに言われて水着に着替え、近くの沢へ移動中。
水着にジャージで制服よりは涼しいはずなんだけれどそれでも暑い。
「さて皆さん!さっき先生は言いましたね。マッハ20でもできない事があると。」
沢に近付いたところで声を出した殺せんせー。
「そのひとつが君達をプールに連れていくこと。残念ながらそれには1日かかります。」
「1日……って、大袈裟な。本校舎のプールなんて歩いて20分……。」
「おや、誰が本校舎に行くと?」
え、と固まった皆。するとどこからか聞こえてきた水の音。涼しげな音に、皆足早に駆けていく。
「!?」
茂みをどかして覗いたそこには、以前は足首の高さまであるかないかの沢があった。
が、今は本校舎のプールなんかよりも豪華なプールが。
「なにせ小さな沢を塞き止めたので……。水が溜まるまで20時間!!
バッチリ25mコースの幅も確保。シーズンオフには水を抜けば元通り。水位を調整すれば魚も飼って観察できます。」
キラキラと太陽にあたって輝く水が眩しい。あたりの緑もとてもきれいだ。
「制作に1日。移動に1分。あとは1秒あれば飛び込めますよ。」
「「「い……いやっほぉう!!!」」」
×××
「美藍、競争しよう!!」
「えぇ!?メグと!?勝てる気しないんだけど!!」
「クロールね、行くよ!!」
先にスタートを切ったメグにつられて、私も急いで飛び込む。
元水泳部のメグには負けるけれど、私もそれなりに泳げる方、だと思う。
「ゴール!!」
「うっわ、私遅くなってる!!」
「遅くなってるメグにも負けるよ、私。」
これは特訓だー!!というメグは、どこか嬉しそう。大好きな水泳が出来るから、なんだろう。
ふぅ、と一息ついて仰向けで浮かぶ。
「茅野っち、うきわとらないの?」
「泳げないの!!」
うきわに乗ってボールを抱えている茅野っち。
「体のラインもはっきり出るし。」
「大丈夫さ茅野。その体もいつかどこかで需要があるさ。」
「岡島君、そのカメラ完璧ダメだからね?」
「美藍はそのまま止まっててくれよ。いいのが撮れないから。」
「私の話聞いてる?」
ハハハっと2枚目面してカメラを準備する岡島君。その後ろに迫る影に気が付いていない。
「なにしてんの?岡島君?」
「え゛…………?」
肩をたたかれた岡島君。振り返るとそこにはカルマが。わざとらしい君付け、怖いくらいの笑顔。これだけで固まる要素はそろっていると思う。
「い、いやぁーあのー………。」
苦笑いの岡島君のもとへ伸びてきた触手。
「カメラは没収です!!」
一度もシャッターを切ることはなく、殺せんせーに没収されてしまった。でも、カルマに壊されるよりはマシだと思う。
「カタいこと言わないで殺せんせー。水かけちゃえ!!」
ルールに厳しい殺せんせーに水をかけた陽菜ちゃん。殺せんせーも一緒に遊んでくれるかな、と思ったんだけど。
「きゃんっ!!」
「「「………………。」」」
「えっ……。」
「何、今の悲鳴。」
一瞬、私たちの時が止まった気がした。もしかしたら、これは。
「……………。」
岡島君の近くにいたカルマが、殺せんせーが乗っている台を揺らす。
「きゃあッ!!ゆらさないで水に落ちる!!」
「「「………………!!」」」
殺せんせー、もしかして。泳げない………!?
水殺。今までで1番のヒントになる。
もしも、ことが順調に運べば、この夏で、全ての決着がつくかもしれない。
静かに爪を研いで
これを最大限に活かせば
100億円も目じゃない