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「――――!!」重い。水着じゃないから、服が重い。息も続かない。流される度に、岩に身体がぶつかって痛い。
息を吸おうと開けてしまった口から入る、大量の水。余計に、苦しい。
パニック状態で、水面になんて考えも浮かばない。
痛む身体は静かに沈んで流されていく。もう、息が持たない。そう思った瞬間、目の前が暗くなって――
「(誰か…………!!)」
――バサァッ!!
「相沢さん、大丈夫ですか!?」
「ゲホッゲホッ………………。」
「美藍!!!」
「カルマ君、相沢さんを頼みます。」
急に入ってきた酸素。肺に入った水が邪魔をして、上手く取り込めない。
ハァハァと息が上がって、まともに話せない。頭もぼんやりしていて、何が起こったのかよくわからない。ただ1つだけわかるのは、殺せんせーに助けられたということ。
「………カルマ……。」
「大丈夫?美藍。」
どうしてカルマがここに?皆は無事なの?
聞きたい事はたくさんあるけれど、上手く声にならない。咳ばかりが出てくる。
「無理しないで。大丈夫、皆助かってるから。」
そんな私を見て、優しく声をかけてくれるカルマ。
ならば状況を確認しようと立ち上がる、が、足首を痛めたのか上手く立てない。すぐにカルマが肩を抱いて立たせてくれた。
「………イトナ、君?」
プールを見るとイトナ君とシロの姿。どうやらあの2人が今回の暗殺の計画者のようだ。
殺せんせーはかなり押され気味…………、!!
「は、原さん!!」
殺せんせーの頭上にいた、原さん。今にも木から落ちそうだ。これでは殺せんせーも集中して戦えない。
「助けないと……!!」
「大丈夫。任せて。
ね、寺坂?」
焦る私に、カーティガンをかけたカルマ。にこっと笑って寺坂を見る。寺坂は黙ったまま、シロに近付いていった。
「え、なに……するの?」
E組の中で1人だけ状況を読み込めていない私。私が溺れている間に何やらあったらしい。
「イトナ!!テメェ俺とタイマン張れや!!」
「ちょ、カルマ!!」
「いーんだよ、死にゃしない。」
物騒なことを言う寺坂に、余裕なカルマ。寺坂が危ないというのに、私だけカルマに肩を抱かれたままじっとしてるなんて、出来るものか。
「生徒を殺すのが目的じゃない。生きているからこそ、殺せんせーの集中を削げるんだ。だから、寺坂にも言っといたよ。
気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言やスピードもパワーもその程度。死ぬ気で喰らいつけって。」
目を向けると、イトナ君の攻撃を受けとめた寺坂。ギュッとシャツで触手を握っている。
「でも、何発も受けるのは――……」
「くしゅんっ!!」
「………?」
聞こえた可愛らしいくしゃみは、イトナ君のものだったらしい。
「寺坂のシャツが昨日と同じって事は…、昨日寺坂が教室に撒いたヘンなスプレー。アレのスプレーを至近距離でたっぷりと浴びたシャツってことだ。
それって殺せんせーの粘液ダダ漏れにした成分でしょ。イトナだってタダで済むはずがない。」
私があっけに取られているうちに、原さんを救出する殺せんせー。
「で、イトナに一瞬でも隙を作れば原さんはタコが勝手に助けてくれる。」
ざざざっとカルマのハンドサインで駆けていく皆。
「吉田!松村!!おまえらは飛び降りれんだろそこから!!」
「「はァ!?」」
「水だよ水!!デケーの頼むぜ!!」
「「………!!しょーがねーなぁ……」」
ぴょん、飛び降りた2人と、クラスの皆。
「殺せんせーと弱点一緒なんだよね。じゃあ同じ事やり返せばいいわけだ。」
大量に水を浴びたイトナ君。これで、彼らのハンデが少なくなった。
「どーすんの?そもそも皆、あんたの作戦で死にかけてるし。寺坂もボコられてるし――……、美藍もケガしたし。まだ、続ける?」
「……………。」
計画が崩れて、去っていくシロとイトナ君。良かった。なんとか追い払えた。
「足、平気?」
「うん。ありがと。」
近くの小さな岩に座る。少し足は痛むけれど、すぐに治りそう。
「カルマ!!テメーも1人高い所から見てんじゃねー!!」
「ぶ!!」
騒がしいな、と思いプールを見ると、ちょうどカルマが寺坂に水に落とされた瞬間だった。
「はぁァ!?なにすんだよ上司に向かって!!」
「誰が上司だ!!触手を生身で受けさせるイカレた上司がどこにいる!!」
びしょびしょなカルマと、寺坂。なんだか仲がよさそう。
「大体テメーはサボり魔のくせにオイシイ場面は持って行きやがって!!」
「あーそれ私も思ってた。」
「なんだかんだで美藍に手、出してるしね。」
「肩なんて抱いちゃってさー。」
「この機会に泥水もたっぷり飲ませようか。」
ぎゃいぎゃいと水にぬらされているカルマ。寺坂も楽しそうだ。
こうやって、クラス内がまとまっていくことが、すごく嬉しい。
寺坂に飛び蹴りをお返しにお見舞いしているカルマだけれど内心はそう思ってるはずだ。
綻ぶ笑顔
暗殺よりも、勉強よりも
なによりも、大切なコト