02
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「殺せんせー!見えてきたよ!」一階のテラスから倉橋さんの明るい声が聞こえた。どうやら島が見える場所まで来たようだ。
日焼けしたくない、とカンカン帽をかぶってパラソルの下へ入っている美藍へ声をかける。
「美藍、そろそろ島だって」
「うん、聞こえた」
椅子から立ち上がった拍子にハラリと足を滑るシフォンスカート。その白さと短さに、変に緊張してしまうのは仕方のないことだろうか。
あぁきっと、「私たち、最初は海中のチェックだよねー」なんて背を向ける彼女は、俺がそんなこと考えているなんて微塵も気が付いていないだろう。
夏はいやな季節だ。思春期の俺にとっては敵だ。
髪をかき上げるしぐさも、ちょっとしたときに目についてしまう首元も、すべてが毒でしかない。
ぼーっとしながら「うん、」と小さく返す俺に、美藍が振り返る。
「熱中症?」
「いや……違うと思うよ」
「そーお?」、首をかしげながら、いつの間にか間近に迫っていた島へ上陸するために2階のテラスを後にする。そんな彼女の藍色の目は本当にきれいで、さっきまで俺が何を考えていたかなんて、言えるわけないだろ。
いつまでたっても変わらない関係に、俺は今、確かに焦っている。
「トロピカルジュース、いかがでしょうか?」
手渡されて反射的に受け取ったジュース。冷たい感覚に、熱っていた体温が冷めていく。
「私も飲みたい!」
「いいよ、俺のあげる」
「ありがとう!」と笑顔で言う彼女を見たら、さっきまでの焦りなんてもう、どうでもよくなった。
愛しき虚像
「おいしい?」
「さいっこう!」