05

二人の弾丸が殺せんせーに届いたかの距離で、いきなり先生の体が弾け飛んだ。まぶしい光があたりを包み、みんなが吹き飛ばされる。

「殺ったか!?」
「わからない……水面を見張れ!」

殺せんせーが爆発して、弾け飛んで、後には何もない。水圧の檻と弾幕。どこにも逃げ場はなかったはずだ。

「待って、なにあれ!」

誰かの声にみんなが一斉に銃を向ける。警戒し、あたりの緊張が高まる中、水面から出てきたのは……
顔が入った透明とオレンジの球体……?

「「いや、何アレ!?」」
「これぞ先生の奥の手中の奥の手。完全防御形態!!」

オレンジの殺せんせーの顔を包んでいる透明なもの。それは高密度に凝縮されたエネルギーの結晶体だそうだ。肉体を思いきり小さく縮め、その分余ったエネルギーを活用して肉体をがっちり固める。透明な部分がすべてを守ってくれるから、対戦性物質も核も水も、なにも本体のオレンジには届かない。
だがそれも24時間がリミット。その間身動きは取れず、かなりのリスクを伴う。

「じゃあ、24時間の間にどこか遠い宇宙へ運べばいいのね?」
「その通り。ですがその点は抜かりなくチェック済み。24時間以内にそれが可能なロケットはこの地球上どこにもない」

完全にやられた。私たちが夏休み特訓していたとき、殺せんせーもずっと考えていたんだ。
今後の課題は、あの状態になってしまったあとの対処。いや、でもあの状態に追い込むのにも相当な労力が必要だ。同じ手はきっと二度は食わない。奥の手中の奥の手を披露してしまったからには、きっとまた新しい防御態勢を編み出してくるはず。どうすれば……?

「美藍、解散だよ」
「ん?……あ、ごめん」

私が考え込んでいた間に、解散の指示が出ていたみたいだ。頭がぼーっとしていて聞こえなかった。カルマの手を借りて海から上がり、タオルを羽織る。

「……寒い」
「えぇ?結構な熱帯夜じゃない?」
「そうかなぁ……、なんか、疲れたや」

気合を入れて臨んだ作戦が失敗したせいか、疲労感が半端じゃない。ホテルへ戻るみんなの背中も小さく、どこか頼りない。ぐったりと机に突っ伏している人もいる。

「明日、何すんだろうね」
「明日……?うん……、そだね、あー、でも……考えらんな、い……かも」
「ねぇ、どうしたの……?」

「大丈夫、?」カルマがそう言いかけたとき、茅野っちの叫び声がした。

「神崎さん!!大丈夫!?」

目を向ければ、神崎さんがぐったりとした様子で倒れている。……いや、神崎さん……だけじゃない?
岡島君も、陽菜ちゃんも、莉桜も、みんなして様子がおかしい。

「やばい空気だね……」

カルマも上着を羽織って、みんなのもとへ急ぐ。その後ろをついていこうとして、私も足を踏み出した。
けど、なんだか思うように足が動かない。もつれてから回ってしまう。

「待……って、」

膝に手をついて、浅く呼吸を繰り返す。声を出そうにもうまくのどが開かない。寒かったからだが急に熱くなって、脳みそがぼんやりとしてくる。それでも寒気は止まらず、背筋がぞくぞくして冷や汗が止まらない。おかしい。これは、絶対におかしい。

ーーフロント、この島の病院は!

烏間先生の声が異常に遠くに聞こえる。ぼうっとしているせいで、耳がうまく聞こえない。
あ、これリンパ腺腫れてるな、なんて呑気なことを思ったとき。それまで一生懸命体を支えていた膝が限界を迎えた。力が抜けてしまえばあっという間で、膝から崩れ落ちる。
カルマの焦った声が聞こえた。……ような気がした。

私がいなくなった世界
声がしたなんていうのは
きっと私の願望



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