唇に毒をぬって

「おや、烏間先生。仮装は?」
「するわけないだろう。」
「えぇ、バンパイアとか似合いそうですけどねぇ。」

10月31日、ハロウィン。本来ならば秋の収穫を祝い、悪霊などを追い払う宗教的な行事だが、この日本では子供が大人からお菓子を奪うイベントとしてしか認識されていない。
それはこのE組も例外ではないらしい。中学生と言ってもまだまだ子供だ。

「トリックオアトリート!!」

朝からそんなセリフばかりが飛び交い、生徒は持参したお菓子を交換している。机にお菓子を広げてはしゃぐ生徒たち。皆それぞれ仮装していた。

参加するつもりはさらさらないので、市販のお菓子を大量に買い込んで出勤。やはり朝早々に生徒たちにたかられた。イリーナはイリーナで、どちらかと言えばアイツが渡す方なのになぜだか俺から踏んだくろうと必死になっている。生憎だが生徒の分しか用意していない。お前の分は無いぞ。
ターゲットである奴も奴で、今教室の端でハロウィン用コスプレ早着替えを披露している。
観覧料としてお菓子をとったり、お菓子一袋につき暗殺チャンス3回とかいう商売していた。いや、だからお前ら渡す方。

今日の教室はいつにもまして騒がしい。早々にたかられ、軽くなった袋をみやる。
もう1つも残っていない。
と、そんな時だった。

「トリックオアトリート!!」

悪魔のカチューシャを付けた相沢さんが笑顔で言う。そうだ、彼女にはまだお菓子を渡していなかった。

「すまない、もう売り切れだ。」
「えぇ!?あんなにあったのに!?」

悲しそうにする彼女に少し申し訳なく思う。もう一袋買うべきだったか。

「先生は仮装しないんですね。」
「まぁ、な。趣味ではない。」

トリックオアトリートと言ったのが彼女で良かった。カルマ君とかならば絶対いたずらされていた。もうここに来たくないほどいたずらされていた。絶対。

「よし、じゃあ私はイリーナ先生からもらってきます!」
「………あいつはくれるかわからないがな。」

「大丈夫ですよ!」と意気込んで振り返り、彼女は屈託のない笑顔で言う。

「でもその前に、烏間先生にいたずらですね!」

Happy Halloween!!

「あれ、烏間先生。仮装はしないんじゃ?」
「黙れ吸血されたいのか?一滴も残さないぞ。」



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