
君が笑う理由
「お仕事は順調ですか?」
「はい、おかげ様で。白澤様の女好きにも慣れました。ただ……」
ここは地獄、閻魔殿。日本で最も有名な英雄であろう桃太郎が、書類片手に地獄の補佐官様と話していた。
「あの……香梛さんって知ってますか?」
「香梛さん……あぁ、財務の?」
「そうです。極楽満月でお金の管理をして貰っているんですけど……」
うーん、と口ごもる桃太郎に、鬼灯はなんだか予想がついた。彼女は話せば良い人なのだと分かるが……。
「俺、まだ一度もお会いしたことないんですよ」
またか。やはり、またか。
一つため息をこぼし、彼の話に耳を傾ける。
「白澤様に店内を説明してもらったときにちらっと紹介していただいただけで。顔も全然見えませんでしたし、彼女も俺のこと見えてないと思うんですよ。でも部屋から全く出てこないし、ノックしても無視されることが多くて………」
そこまで言い、言葉を切る桃太郎。ふと顔を青くさせて、鬼灯を見る。
「まさか、嫌われてるんですかね……?」
「いえ、それはあり得ません。彼女が嫌いなのはあの淫獣だけですよ」
「やっぱり仲悪いんですね……」
「彼女も気を使って合わないようにしているだけでしょう。あの2人は"混ぜるな危険"ですから」
むしろ、よく白澤さんが紹介しましたね。
そういえば、苦笑いを返す。
「紹介って言うのかな……あれ」
ひと月ほど前の事を、思い出していた。