団長と共に、香穂は船内を見てまわっていた。奴隷と言うものだから、人権が認められず檻の中だと思っていた。故に、少し拍子抜けしてしまう。

「ここが香穂の部屋ね。好きに使って」

ベッド、机、ソファ、クローゼット………。生活必需品が全てそろった広い部屋。香穂1人が生活するには十分すぎるほどのスペースがあった。窓からは変わらずに宇宙が見え、奥にはシャワールームがあるようだった。
奴隷だというのに縛られるわけでも監禁されるわけでもない。これは、取引先がよほどの大物であるか、自分の非力さを理解しているのか。はたまた両方か。冷静に感じた。

「食事の時間になったらまた来るよ」、団長はそう言い残して去っていく。特に引き留める理由もないので、黙ったまあ頭を下げて彼を見送った。

制服を脱いでシャワーを浴びる。シャワールームも別段変わった様子はなく、やはり自分が今いる世界は異世界なんかではないように思える。だが、窓の外に見える無数の星は元の世界では拝めない。
シャワールームから出て、変な服と称しられた制服をたたむ。クローゼットの中を開けると、意外なものが姿を見せた。
綺麗な宝石がちりばめられ、フリルをふんだんに使ったドレスがかかっていたのだ。赤、青、黄。何着も何着もあり、どれもデザインが凝っていてどれ1つとして同じものは無かった。
自分用の服だろうか。それこそ変な服だろうに。場違いな。
タンスなども漁り、ようやく見つけたチャイナ服と靴を身につける。それ以外はドレス、ネックレス、ヒールなど、普段着るには高級すぎるものばかりだった。

「香穂ー!」

身なりを整えたところで団長が部屋に入ってきた。食事の時間のようだ。あまり食べる気はしないけれど、そんなことを言えるわけもなく、黙って後に続く。
彼は商品だろうが女だろうが、躊躇いなく殺せる男だ。綺麗な笑顔を貼り付けたその裏に、一体どれだけの力を隠しているのか。真っ白で細く綺麗なその手は、一体幾人の血で染まってきたのか。決して信じてはいけない。彼を。香穂の他に黒髪の女が現れれば、きっと自分は不要となる。
ならば、他の女よりも秀でているべきだ。死ぬくらいなら、忠実で、逆らわず、面倒でない。そんな良い駒に、喜んでなろう。

後書き

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