ただの気まぐれだった。あのうるさい女にイライラしていたところに現れた、使えそうな女。賢いようで状況を読み込むのも早かったし、下手なことはしない。いいものを拾った。
そう思うと同時に、彼女に対して興味が湧いた。
決して強くはない。吹けば飛ぶほど弱くて、脆くて、神威の強さにしがみつかなければ1人で生きていくこともままならない、無能な女。
けれども、興味が湧いた。
弱い奴には興味はない。強さだけがあればいい。今までの自分の考えを否定するようで、それでいて悪い気はしない。得体の知れない、説明のできない、理屈じゃない。そんな惹きつけられるなにかが、彼女にはあった。
異世界という場所で、イレギュラーな彼女はゆっくり、ゆっくりと確実に状況を飲み込んでいく。その順応さは、はたして強さなのか。
知りたかった。彼女の考えが。彼女の強さが。彼女の全てが。知りたかった。
全く自分とは異なる生き物。全く自分にはないものを持つ生き物。全く自分とは対極にいる生き物。
誰かに興味を示すとき、その対象となるものは2パターンあると思う。
1つは、自分とよく似ている者。類は友を呼ぶとはよく言ったもので、似た者同士であればお互い惹かれあう部分も当然あるだろう。
もう1つは、逆の場合。自分にないものを持っていて、自分にあるものを持っていない。真逆の者に対して、惹かれるパターン。
彼女は弱くて、脆くて、血を知らない。だが、それでいてくじけないなにかがある。それは自分とは対照的であり、真逆であると言える。
つまり、俺の興味は後者であるわけだ。
目を開ければ天人だらけで、目の前で女が殺された。そして、自分はその女の身代わりとして、奴隷になる。
ある日突然、そんな災難に巻き込まれた彼女は、どう思ったのか。期待はずれの世界の隙間で、何を感じたのか。残酷なことに過ぎ去っていく時に、彼女は何を決心したのか。はたまた、諦めたのか。
無関心な世界の中で生きてきた俺には、理解できないのだろう。そう思えば思うほど、手を伸ばしたくなる。届かないと思えば思うほど、届かせたくなる。
奴隷の身代わり。それが、ただの建前であるということに気がつくのは、そして、ことの始まりと知るのは、もっと先の話。
後書き
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