白いドレスと黒のワルツ
椚ヶ丘中学校は、偏差値66を誇る超エリート校。特に3年A組、特別クラスは群を抜いている。五英傑をはじめとしたA組の生徒は、定期テストでも500点満点に近い。

「美帆、集会始まる。」

そして、そのA組生徒が大半を占める組織が生徒会。
もちろん会長は理事長の息子、浅野学秀。

「藤田ー、全校生徒に配るプリントは?」
「あるよ。」

生徒会役員は昼休みの時間を使って生徒集会の準備を行う。いつものように、役員たちは体育館に集まり、準備を始めた。
放送部長の荒木がマイクの調整をしながら書記の藤田美帆に尋ねた。

「頼まれていた通りに印刷した。全校生徒分、ね。ちゃんと枚数も数えて付箋貼ってある。」
「あぁ、ありがとう。」

自分に背を向けながら礼を言う荒木に腹が立ったのか、バサリ、と大量の書類を乱暴に机に置く美帆。
それに気がついた荒木が美帆へと向き直り、
「はいはい、ありがとう。」と、礼を言い直した。
肩をすくめる美帆を横目に、机に上に置かれた書類へ手を伸ばす。
2年C組、2年D組、3年A組―――………
美帆の仕事はいつも完璧だ。全クラス分、きちんと用意されている、はず。

「おい、これ――……?」
「なに?間違いないでしょ?」
「………あぁ、」

何かを言おうとした荒木だったが、悪い笑みを浮かべる美帆に少し納得したように黙る。

「………ねぇ、荒木?今日もパフォーマンス。楽しみにしてるよ?」
「……、はいよ。」

語尾にハートが付きそうなほど、わざとらしく可愛い子ぶった美帆。
常にそう大人しくしていればいいものを、と思うが、口には出さないことにする。

月に1度行われる全校集会。あの3年E組も、わざわざ山奥から本校舎に来て参加する。
当然、そこでも差別待遇は同じ。E組をからかうことのできるこの集会は、他クラスの生徒にとって少し、楽しみでもあるイベントの1つ。
と、そこまで考えニタリ、と口元を緩める美帆。隣にいた浅野が不気味そうに、そして呆れたように言う。

「全校生徒の前だ。少し慎め。」
「あぁ〜ら、ごめんあそばせ。」

悪びれもせずに言う美帆に、ただただため息をつく浅野。
藤田美帆、このエリートだらけの学校でも平気で校内順位の上位に食い込む秀才。それでいて、顔が普通よりも整っているものだから質が悪い。
多くの生徒がその可愛らしい顔と優秀な成績で彼女に近づき、罠にハマるのだ。
彼女のことをよく知っているのは五英傑くらい。彼女もそれを計算して、人前では滅多なことはしない。

「続いて、生徒会からの発表です。」
「行ってきまぁ〜す。」

放送が入ったところで、表用の笑みを浮かべて舞台裏にスタンバイする美帆。

「はい、今皆さんに配ったプリントが生徒会行事の詳細です。」

いつものように話す荒木。そのまま説明を入れようとした、そのとき。

「すいません。E組の分、まだなんですが。」

E組のクラス委員が声を上げた。
すると、待ってましたと言わんばかりに笑う荒木。

「え、ない?おっかしーなぁ………。藤田さぁーん?E組の分はどこですかぁー?」

舞台裏にいた美帆が、「えぇ?」と小首を傾げながら表に出てきた。

「やだぁ私ぃ、E組のみなさんの分忘れちゃったみたいですぅ、ごめんなさぁーい!全部記憶して帰ってもらえますかぁ?」
「もう藤田さぁ〜ん、無茶言わないの!!」

美帆と荒木のやり取りに、全校生徒が笑う。

「本当にごめんなさぁい。でも、全校生徒分は間違いなかったですよねぇ?

優秀な、椚ヶ丘学園の全校生徒の分、は。」

今までの可愛らしい表情とは一変。悪魔のように口元をゆがめ、冷たい目でE組を見下ろす美帆。彼女の異常な性格が垣間見えるが、それも
「藤田さん、E組が優秀じゃないって言ってるように聞こえるよ!!
ダメ!!事実を言っちゃぁ!!」
と明るい荒木のフォローにより、笑いに変わる。全校生徒も、彼女の性格には気が付かない。
彼女は、ずっと今までそうしてこの学校で生きてきたのだった。

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