藤田さんが教室に現れなかった三日間は、長くもあり短くもあった。
今まで皆勤であった彼女が休むということはかなり大きな意味を持っており、浅野くんからは烏間先生に相談、という形の苦情があったらしい。
ーーメッセージも返信がない。電話にも出ない。聞けば学校にも来ていないという。どういうことだ。
それを聞いた僕たちはハッとした。
あの日以来、誰一人として彼女に連絡していない。大丈夫の一言も、学校に来てねの気遣いも、誰一人として彼女に向けていなかった。
それどころか、連絡先すら知らない始末。
嫌味で、差別好きの藤田美帆。
でも本当は、努力家で一生懸命で、だからこそ、諦める人が許せない正義感のある人。
僕らは本当に、彼女のことを何も知らなかった。
「人の感情や思考とは複雑なものです。先生もわからずに失敗した経験があります」
いつにもまして静かな教室に、殺せんせーが名簿をもって入ってきた。
「感情や思考は、そのとき、その場所、その人を取り巻く環境によって大きく変わってくる。一つの感情にも様々な種類があり、また一つの感情にはたくさんの感情が入り混じってできています」
教卓の上で名簿を開き、1人にチェックマーク……、藤田さんの欄に欠席と記す。
「それらをすべて伝える必要は全くない。100%伝わるわけもない」
名簿の藤田さんの欄から目を離さずに、それでもしっかりと話を続ける。
「ですが、見えないものは行動に移さなければ一切伝わらない」
ーー言葉にしなくても伝わるだなんてこと、ないのです
名簿から目を離して、クラスを見渡す。いつもならとる点呼をせずにそっと名簿を閉じて、教室から出て行った。