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キュッキュッという体育館特有のシューズの音と、女子の高い声。ボールをつく低い音に、審判のホイッスル。

様々な音が混ざり合うこの場において、私の足音などほんのわずかなもので、誰も気が付かない。そりゃあ、みんながジャージのなか一人だけ制服できっちり髪の毛も巻き上げ、運動する気なんてさらさらありませんなんて恰好は目立つけれど。それでも、特に気にかけられることはなかった。

別に、担任に言われたから来たわけではない。本当に自分の意志で、行かなくてはと思ったからきただけ。それがたまたま球技大会だっただけで、教室にいなくてもいい日を狙ったわけじゃない。たまたま今日遅刻してしまっただけで、誰かに会いたくなかったわけではない。

そんなこと心のなかで思いながら、でも声には出せずに、目立たない2階席を選ぶ私はずるいと思う。
E組の試合を見ながら、それでも自分は見られないようにと必死になる私は本当にずるいと思う。
誰にも会いたくないなんて思いながら、それでも誰かに見つけてほしくって、誰かに声かけてもらいたくって、少し期待している私は、本当に、本当にずるいと思う。

入学して初めての球技大会。そのとき私は、はじめてE組というクラスの実態を知った。
力の差が圧倒的にあるバスケ部を前にして、やる気のない態度。どうせ負けると動きもしないプレイヤー。さらし者なんだと、ほかの生徒を恨めしそうににらむ寂しそうな背中。

すべてがかっこ悪かった。すべてに自信がなかった。
力の差が明らかだって、戦えるのに。どうせ負けるとしても、勝とうとして負けるのと最初からあきらめて負けるのではわけが違うというのに。周りをにらみつけ、自分は被害者なんだと言いたげな瞳。

努力は惜しまない。自分がかわいそうであると思わない。自分を卑下しない。
すべてが私のポリシーに反していた。今思えば、E組への嫌悪感はあれがきっかけで持ったのだと思う。

でも、今はもう違う。
目の前にいるE組は、少なくとも負けるだなんて考えていない。自分たちのやりたい試合を、自分たちらしくプレイしている。そこには自信のなさも被害者意識もなくて、一生懸命さしかない。

試合終了のホイッスルが鳴った。
結果なんて、どうでもよかった。スコアなんて、どうでもよかった。
ただ、暗殺教室3のEとはどのようなクラスなのか、見れればそれでよかった。あのクラスの”殺り方”が見れれば、それで。

人目を避けて体育館を出た私の前に、水色の髪が、ゆれた。

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