淋しい、寂しい、傍にいて
必ず、E組全員に恥をかかせてやる………!!

そう意気込んだは良いが、美帆にはE組との関わりは0。
E組に知り合いなど居ないし、旧校舎に近寄ったことも無い。だって、あんな下等な人たちと関わりを持ったって、意味がないじゃない。人脈というのは優れた人間の間で広げなければ意味を成さない。

E組の知らない所で、いかに情報を掴むのかがポイントというわけだ。
浅野は父親に探りを入れるだろう。あの人が簡単に口を割るとは思えないが。
美帆は美帆で動かなければ。何を使うか。誰を使うか。生徒会役員はダメだ。顔が割れているし、あいつらが上手く立ち回って動けるとは思えない。
ここはC組やD組のように目だ立たなくて美帆の良い駒になってくれる人………。

と、ケータイを取り出したところだった。

目の前のコンビニに入っていく、大きな人影。真っ黒い服を着た、大きな人影。

どこかで見たことがある。どこかで。そう、今日。まさしく今日見た、あのE組の教師だ。
なんと幸運なこと。あのE組の教師が、今、目の前に居る。

にやり、歪んだ口元を咎める浅野はここにはいない。表情を直すことなく、悪魔のような彼女はそのままコンビニへと入店した。

コンビニへ行き、まずはじめに奴が立ちよったのは週刊誌のコーナー。にやにやしながら………、いや、奴の場合はにやにやがスタンダードだが、立ち読みをしている。

ふとケータイを取り出し日付けを確認する。月曜日。あぁ、ジャンプか。
成人しても少年の心を忘れない人は当然いるであろうが、仮にもあの有名な椚ヶ丘中学校の教師が学校近くのコンビニで立ち読みとはいかがなものか。
そのままカメラアプリを起動、教師の姿と立ち読みしている漫画をしっかりと捉えて一枚、パシャリ。

よし、良い写りだ。

すると奴は読み終わった漫画を棚に戻し、後ろの方にある漫画を籠の中に入れた。
確かにものを買うときは後ろから。それは誰でもしてしまう行為ではあろうが、自分が立ち読みした漫画を戻して後ろから取るだろうか。なんたる非常識。

E組教師は心が狭い。

頭にメモする。そのまま彼はお菓子コーナー、スウィーツコーナーに移動。ありったけの甘いものを買い込んだ。

その姿も全てカメラでパシャリ。が、制服でこんなことをしているのがばれるとA組としては何かとイタイ。目にとまったレモンティーを取り、レジへを向かう。会計をすませたところで、ちょうど奴もコンビニを出た。

コンビニでの買い物に見えないほど大きな袋を抱えて歩く奴。どう見ても異常な光景であるのに、誰も奴を振り返らない。
これだから、感性が鈍い者は困る。レモンティーをチューと吸いながら呆れる。
お、奴が校舎へ戻っていく。

急いで追いかけたときだった。

ビリ!!嫌な音をたてたコンビニの袋。あれほどの重さにきっと耐えられなかったのだろう。
そこが破け、中から大量のお菓子やらスウィーツやら、ジャンプやらが飛び出した。
これはこれは、悲惨な。だが、ざまあみろ。
コンビニスウィーツが散らばり、崩れ、生クリームが地面につく絵を想像した美帆は思う。が、そのような事態にはならなった。なぜか。なぜなのか。

奴が、落ちた食べ物たちをキャッチしていたのだ。一秒もかからぬ速さで。
そんなもの、二本しか手がない人間に出来るはずない。そう、出来ない。
でも彼なら出来るのだ。なぜなら、手が二本ではないから。

にゅっと伸びたそれは、蜘蛛の巣のように形を変え、食べ物たちをひっつけた。まるで粘着テープのように。

「…………………………!?」

声が出ない。驚きすぎて、自分が驚いていることさえも分からない。
ただ、自分が不味いヤツに目を着けたことは理解した。

ゆっくりと振り返ろうとする奴。まずい、すぐさま角を曲がり、全速力で駅へと走る。
そのまま後ろを振り返らずに改札を通った。

急いでケータイのロックを解除。

決めた。E組の教師に恥をかかせることはしない。けれど、E組の生徒にはこれまで以上に惨めな思いをしてもらう。絶対。絶対に。教師の分まで苦汁をなめさせてやる。

心臓に誓ったのだった。



「浅野!!教師の件は忘れなさい!命令よ!」
「…………美帆、いつから君は僕に命令できるほど偉くなったんだ。」

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