廃れた森には永遠に眠る美しい魔女がいました
理事長先生のその言葉は、私にとっては死刑判決で、今まで築いてきたものを全て奪われてしまって、全て壊されてしまって、なんで、どうして、意味分からない。そんな言葉しか出てこなくって。
大人にとったら、そんなことって笑われるようなことなのかもしれないけれど、自分も大人になれば、そんなことで悩んだなぁって笑えるのかもしれないけど、でも今の私にはそれが全てで。それだけが全てだから。だから、だから。

「意味がわかりません。」

黙ってはいなんて言えるわけなくて。もともと気の強い性格だから、尚更。
今までずっと、E組をバカにしてきたのに、自分があのクラスにいくだなんて吐き気がした。あれだけの嫌がらせをして、もう、引き下がれない。

「国家機密だとは理解しました。その黄色い生物のことも理解しました。けれど、私がE組に行かなくてはいけない理由にはなっていません。」

理不尽だ。ふざけるな。相手が子供だと思って、勝手に決めないで。
そう思うと、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。

「大体、それほどの機密ならばしっかりと監視しておくべきでしょう。コンビニに行くことを許すだなんて、信じられない。よっぽどあなたたちの方が機密の意味を理解してないわ!」

声を荒げて言う私を、防衛省の人は驚いたように見ている。
耳元でしばったゆるふわの栗色ツインテールが、ばさりと揺れた。肩で息をして抗議申し立てる私は、滑稽に見えるのだろうか。

「どう考えても私に非はない!!国が責任を取るべきじゃない!!ふざけないでよ、なんでE組なんかに行かなきゃいけないの!?」

E組の単語に、烏間と名乗る人はぴくりと眉を寄せた。
彼はE組で体育教師として働いている。情が、あるのだろうか。生徒をバカにされたことが、気にくわないのだろうか。
彼の心を少しでも軋ませたと思うと、ざまあみろと口が歪んだ。
私は、今のあなた以上に腹を立ててる。

「国の監視の目が甘い限り、私以外にもあいつを見る人が出てくるわ!!それくらい考えなさいよ、大人でしょ!?」

大人。
私はそんな単語の使い方を、いつ知ったのだろう。いつまでもわがままで、意地悪で、子どもなままの私は、いつ大人になれるのか。いや、そもそも大人とは一体何なのか。何方に伺えばいいのか。分からない。

「とにかく!!私はE組なんかにはぜっ」

「藤田さん。」

――ぜったい、行かないから

その言葉は、音となることはなかった。攻撃を続けようとする私の意志を、彼は、いともたやすくへし折った。

「あなたの立場で国に申すことはないはずです。あなたがE組に行くことは決定事項。理解できますね?」

どれだけ何を言っても、この男が言うことを覆せるはずがないと、分かっていた。分かっていたけれど、それでも、悔しかった。
結局、みっともなく足掻くのは彼の前には滑稽にしか映らず、私の言葉などなんの意味も持たない。ましてや、意志なんて。

ぱたん。
無情にも、私を締め出すその扉は、重々しくて。簡単には開けられなくて。涙をのんで、理事長室を後にするしかなかった。

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