少しくらい、大人しくしていてやってもいいかもしれない。
そう思っていた。少なくとも、学校に着くまでは。
E組に落ちた事は認めない。それは絶対。私はまだA組で、今はE組(仮)だ。生徒会役員を降りるつもりもないし、次のテストできっと他の生徒も納得してくれるはず。それまでの辛抱。私の実力を、みんなに見せつけるまで、今は大人しくしていてやっても、いいかも。なんて。
それが誤魔化しだとも気がつかずに、腹の中でふんぞり返ってそう言っていた。高いプライドが落ちたという事実を認めないのなら、なかったことにしてしまえばいい。私は落ちていない。落ちていないけれど、まぁ今の状況を許してやろう。E組とも、ほんの少しくらいは仲良くしてやろう。
昨日の夜から、眠れずに布団の中でずっとそう思ってた。愛想良く自己紹介するつもりだったし、今までの差別は立場上仕方ないものだと言い訳するつもりでもあった。この際、E組も駒にしてしまおうという下心もあったのだと思う。
けれど、いくらどれだけ脳内シュミレーションをしても、実際その場に立ったときの自分の感情なんて予測できない。苛立ちなんて、不快感なんて、全く予測できないし、制御できない。
「A組からきた藤田美帆さんだ」
ぎこちなく礼をして、顔を上げたと同時に飛び込んできたのは自分への疑いの目。信用されていないのは明らかで、それが当然の報いと言われれば確かにそうなんだけれど、納得できない。だから、だからつい言ってしまった。
「……藤田美帆です。あなたたちと慣れ合うつもりは一切ありませんので、気安く話しかけないで下さい」
きっと一様に細められるクラス全員の目と、深く深くため息をつく烏間先生。彼にクラス内でも上手くやれ、と言われたことはもう私の記憶にない。否、今消した。
ヌルフフフ、と笑い声を上げる黄色に苛つきながら、クラス全員から向けられる嫌悪の目を感じながら、私は静かに静かに席についた。