12月20日



12月20日。クリスマスで浮かれているとはいえ、やはり俺は受験生。過去問を買おうと、書店に足を運んでいた。
過去5年分でいいか……、いや、8年?ふと、窓の外を見ると、見慣れた藍色の髪が見えた。

「あれ?」

持っていた本を棚に戻し、書店を出る。過去問は後で買えるけど、美藍に声をかけるのは今しかない。すれ違う人ごみに彼女を探し、見つけた。
難しい顔でケータイを見つめ、眉を寄せている。律と話しているのだろうか。

「美藍」
「うぎゃっ!!」

「なにしてんの」、と声をかけると、ビクッと猫みたいに驚いている。飛び上がった拍子に落ちそうになったケータイを、あわてて掴んだ。

「そんなに驚かなくても」
「びっくりした!!!どうしたの!!なにかあった!?」

ケータイを渡せば、画面を伏せて握りしめる。ものすごく動揺していて、何かを隠そうとしている。挙動不審だ。
誰かと待ち合わせをしているようではない。中村さんと一緒じゃないのか。

「過去問買おうと思って、書店行ってきたんだけど。美藍は?」
「わ、私!?私、私ね、うん、私ね。いや、うん、えっと!」
「まさかまた迷子?」
「えっ!?いや、うん、そんな感じ?」

そんな感じ、って。オレに聞かれても困るんだけど。
様子がおかしすぎる彼女を変だと思いつつも、俺に知られたくないことなら無理に聞き出さない方がいいよな、と自分を納得させる。
適当に会話を誤魔化して、書店へと戻った。

そりゃあ、彼女のことをたくさん知りたいとは思うし、俺のことを知ってもらいたいとは思う。でも、俺にだって彼女に言いいたくない事はあるわけで、彼女にも俺に言いたくないことはあるわけで。
知りたいけど、知りたいけど、一番優先すべきなのは彼女の心で。彼女が話したくないことは無理に聞き出さないのが俺の俺なりの優しさ、だと思っている。この優しさがあっているかなんてわからないから、声を大きくしては言えないけれど。
それでもやっぱり気になるものは気になる。少しもやもやしたまま家に帰り、勉強しようと書店で買った過去問を見やる。

「……、どこの高校だよ、これ」

………過去問、間違えてた。
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