ケンカのあとは…11月29日birthday
「もうっ…火浦のバカ!!」
「…なんだよ!速水!!」
…あ〜…火浦とケンカしちゃった…

ケンカの原因…それは火浦がある女の子から告白された事。
火浦が告白されるなんて珍しい事じゃない。
火浦は男から見てもすごくカッコいい…闘球部のレギュラーメンバーで運動神経抜群。勉強はちょっと苦手だけど、明るくて友達思いで優しくて…誰とも仲良くなっちゃう様なヤツふ。
…女の子にすっごい人気あるんだよな〜…
だから、はっきり言って告白されるなんていつもの事……でも…その度に火浦は俺を選んでくれる。「俺は速水が一番好きだよ…」なんて言って…
俺は火浦のストレートな愛情をいつもすっごい感じちゃって…幸せなんだよな〜…

今回だっていつもと同じ事なんだけど…それなのに、なんで今回はケンカになるほど許せないかというと…
まず、その火浦に告白した女の子が学校一の美人だっていう事。そしてその女の子が告白した後に、火浦にぎゅーっと抱き付いたその場を目撃してしまった事と…抱き付かれてる火浦がなんかすごく嬉しそうにしてたから。
確かに火浦は女の子ともよく話すし、冗談を言い合う様な仲がいい子もいるよ。でも告白してきた女の子相手にあんな嬉しそうにしてる火浦は初めてで…
…なんだよ!火浦のヤツ!あんなにデレデレして…俺が一番好きじゃないのかよ!

…完全に俺の嫉妬だって事はよくわかってる。でも…火浦は俺の大切な大好きな恋人。やっぱり女の子に抱き付かれて嬉しそうにしてるのは…嫌だ。
火浦は俺にすごい愛情ぶつけてくるし、すごく大切にしてくれてる…でも、どうしたって俺は男。火浦もやっぱり女の子の方がいいのかな…なんて思ったりして…
俺は嫉妬と不安が募って、つい火浦に詰め寄っちゃって…

「…なんだよ……あんなに嬉しそうな顔して…」
「してねーよ!」
「してた!」
「……それはさ…」
「もういい!!」
火浦の言葉も最後まで聞かずに、俺はその場から逃げ出した。

一人の帰り道…
…あー…今日は火浦の誕生日だってのにな…
11月29日…今日は火浦の誕生日なんだよな。
今日は平日の金曜で学校もあるからなにも出来ないけど、明日の土曜に火浦と誕生日デートする予定だった。だから火浦には朝登校した時に「おめでとう」ってちょっと言っただけで…それ以外はなにもしていない。それなのに…よりによってこんな日にケンカしちゃって…

…まったくせっかくの誕生日だってのに何やってんだ…俺は…
そう後悔しつつも、俺の脳裏にあの時の火浦のデレデレした顔が浮かんで…やっぱり許せない。
もちろん火浦はちゃんと断ってたし、抱き付かれた時嬉しそうにはしてたけど決して火浦からも抱き締めた訳じゃない。完全に俺の勝手な嫉妬と不安なんだけど…
でも、無性に腹が立って…嫌だ〜…!って思っちゃって…恥ずかしいけどこんなにヤキモチ焼いちゃってさ。
つまり…俺は火浦の事が大好きなんだろうな〜…なんて改めて思ったりして…
俺はモヤモヤした思いを抱えながら重い足取りで帰宅した。


次の日。
今日は本当は火浦との楽しい誕生日デートの予定だったけど…
結局昨夜も今朝も火浦からはなんの連絡もない…もちろん俺からもしていない。
何度も火浦に電話しようと思ったんだけど………やっぱり出来なかった。

今日は火浦が俺と二人で見たいと言ってた映画に行って、昼ご飯を一緒に食べてお祝いして…この大切な一日をずっとずっと二人で過ごすはずだったのに…
部屋に一人でいてもつい火浦の事ばかり考えてしまう…時間を持て余し、やり場のない気持ちを抱えた俺は…半ば投げやりに一人で映画館へ向かう。

休日の映画館はカップルや家族連ればかり…大事な人と連れ立って歩く人達はみんななんだかすごく幸せそうに見えてしまって…

次回作のポスターの前に立てば…そういえば火浦が次はこの映画も観てみたいって言ってたな…。飲み物を買おうとショップに寄れば…火浦は映画の時は絶対お茶なんだよな…。なんて、俺はつい火浦の事ばっかり考えてしまう。火浦の事を考えない様にと思って映画に来たのに…結局考えるのは火浦の事だけ。
「…はぁぁ……」
俺は冴えない顔で深いため息をついた。

暫くすると、火浦と見るはずだった映画の始まりを知らせるアナウンスが流れる…
前売りで指定席を購入していた俺はシアターに入ると指定された席に座る。火浦が座るはずだった隣はやっぱり空席…
いつもいつも…俺の隣で笑ってくれる火浦が今日はいない…

ーブーーー…
上映開始のブザーと共に辺りが暗くなり…映画が始まる。
俺はぼんやり大きなスクリーンを眺めるが……あんなに見たかった映画なのに……全然楽しくない。
…火浦がいないとこんなにつまらないんだ…

火浦と一緒だとなんでも楽しくて…どんな事でも面白くて…輝いて見えて…俺は火浦の存在の大きさを改めて痛感した。
映画はどんどん進んでいくけれど…俺の気持ちは昨日のまま。
悲しくて虚しくて仕方なくて…映画はまだ途中だったけど、俺は席を立った。
どこにも寄る気にもなれず…俺はまた来た道を一人で帰る…

重い足取りで歩く帰り道。
思い出すのは火浦の優しい顔…俺の名前を呼ぶ穏やかな声…
俺の頭の中も心の中も…俺の全てが火浦だけ…
…火浦に会いたい…そればっかりが頭の中を支配してしまう…


家の近くまで来ると、誰かが門の前で立っているのが見える…まさか!…
俺はそっと近付く…それは……俺が会いたいと心から望んだ火浦だった。
俺は思わず火浦に駆け寄る…

「火浦………」
「…よぉ速水…」
火浦は少し照れた様に俺の名前を呼ぶ…
「…少し話したいんだけどさ、部屋あがっていいか?」
「………うん。」

俺と火浦は部屋に入るとベットに寄りかかり、並んで座る。
少しの沈黙…重たい空気…
なにか話さないと…と俺が口を開こうとした時、火浦が不機嫌そうな声で俺に話し掛けた。

「お前…どこ行ってたんだよ…」
「…その………」
「まさか!…お前一人であの映画行ったんじゃねーだろーなぁ?!」
「………ごめん」
「やっぱり……バカ!二人で行こうって約束しただろ?信じらんねー!」
「だって!……ケンカしてたし!」
「だからって一人で見に行く事ないだろ?お前と行くの楽しみにしてたのに!」
「火浦が……そもそも火浦があんなに嬉しそうにしてたのが悪いんじゃないか!」
「……だから!それは!…あ〜…もう!めんどくせー男だな!」
火浦はそう言うと俺をぎゅっと強く抱き締め…唇を重ねる。
火浦は俺を抱き締めたまま何度も何度も俺の唇を貪る様に深く吸い付く…

「…んっ…んん…」
少し離れてしまった二人の距離を取り戻す様な長く深いキス…火浦は唇をそっと離すと俺の唇を拭う…
俺を見つめる火浦の真剣な顔…俺は…胸がいっぱいになってしまう…

「速水、聞いて。…あれは違うんだよ…」
「…何が違うんだよ…」
「…あの子さ…お前に何となく似てたんだよ…」
「……え?」
思いもしなかった火浦の言葉…
驚く俺に火浦は言葉を続けた。

「なんかさ、お前に似てるな〜って思って…お前に抱き付かれてるみたいに思えたんだ。だからお前の事思い出してついにやけちゃって…それをお前が見てたんだよ…」
「……俺はあんな美人じゃないよ…」
「いや…お前は美人だよ。美人で可愛くて…素直で…優しくて…俺さ、女の子に告白される度にな…俺はやっぱり速水の事好きなんだーって改めて思うんだよな。」
火浦はにこっと笑う…
その優しい笑顔に、俺の目からじんわりと涙が…

「速水…泣くなって。」
火浦は俺の頬を両手でやんわり包むとそっと涙を拭う…
「俺…速水しか見てない。速水が大好き。だから…安心して。」
「……うん…」
火浦の男っぽい真剣な顔…俺は素直に頷いた。
火浦はまた俺を抱き締める…今度は優しく……
俺も火浦の背中にそっと手を回してしがみついた…


「…ごめん…俺、勘違いしてすごい嫉妬しちゃって…」
「まぁ〜…それだけ俺に惚れてる証拠だよな!」
…惚れてる…ってなんかその言葉恥ずかしい…

「そんなに嫉妬しちゃって…速水は本当に俺の事好きなんだな〜…可愛いなぁ〜…」
「もう…恥ずかしいからやめろよ…」
俺を優しく抱き締めたままからかう様に言う火浦の言葉に、俺の顔は真っ赤に…

「でも!!今回は完全に速水が悪いからな〜…なんか罰を与えないと…」
「…罰?!」
火浦の意地悪げな顔…火浦の罰ってなんかすっごい怖いんだけど……
「じゃあ〜…俺がこれから言う通りにお前も言えよ!」
「…うん…?」

「火浦大好き……ほらぁ〜言えって!」
「火浦大好き…」

「火浦愛してる…はい言って。」
「……火浦………あっ愛し…てる…」

「プレゼントは俺だから好きにしていいよ…ほらっ!」
「プレゼントは俺だから……好きにしていいよ…」

「じゃーお言葉に甘えて……」
ードサッ!……
火浦はそう言うと、俺をあっという間に押し倒して馬乗りに…火浦の男っぽい顔が一気に近付く…

「…ひっ…火浦…ちょっ…」
「まだだぜ…」
火浦は俺の顔を両手で押さえると耳元で囁く…

「俺のシャツ脱がせて…ほら言えよ…」
「…俺のシャツ…ぬ…脱がせて…」
火浦が俺のシャツのボタンを外す…

「…下も脱ぎたい…」
「……下も…脱ぎ…たい」
火浦はベルトを外すとジーンズを脱がせる…
俺はあっという間に下着だけに…
…あ…この展開は……もしかして…

「…これが最後…火浦とやりたい…」
「……火浦と………やりたい…」

「良くできました〜…速水はイイ子だな〜…じゃあ〜…ご褒美!」
火浦はそう言うと俺の首筋に舌を這わせて…何度もじっとりと舐め上げる…火浦の舌の動きに、俺の性欲もすっごい刺激されちゃって…

「…んんっ…火浦ぁ………やっ…」
「俺からのご褒美…いっぱい欲しいだろ?」
「……うん…欲しい…」
「どうしたの?今日はやけに素直だなぁ…速水…」
火浦の俺への愛情すっごい感じちゃって……俺も、火浦と仲直りの〜…したくて堪んなくなって…

「…俺…火浦が大好き!火浦の…いっぱい欲しい……」
「…速水ぃ…堪んねー事言うなよ〜…」
「だって…本当だもん……火浦にいっぱいして欲しい……」
「そんな事言って…あ〜…堪んねーって…」
「…火浦ぁ………もうしよう〜…」
「あ〜…もう!速水すっげー可愛いっ!!」
「あっ……」

ケンカした後の愛の営みはすっごい燃えるって言うけど…本当なんだな…
俺は寂しかった分、火浦の愛情すごく感じちゃって…珍しく俺の方が激しかったかも……




次の日…
俺は火浦と待ち合わせ。もちろん、誕生日デートをやり直すためだ。

「お待たせ!火浦!」
「おせーぞ〜…少し遅刻!」
「ごめん!…ちょっと身体が痛くて……」
「……お前…昨日あんなに激しくやるから………」
「…だって……」
「まぁ〜お前があそこまでになるの滅多にないからな〜…俺は嬉しかったけど!」
火浦の言葉に昨日のすごい淫らな自分を思い出しちゃって…俺は恥ずかしい…

「…ほ…ほら!時間ないから行こうよ!」
俺は恥ずかしさの余り慌てて話題を変える。
「映画楽しみだな!まぁ〜…お前はもう見ちゃったけどな〜…」
「本当ごめん…でもさ…確かに見に行ったんだけど、お前の事ばっかり考えちゃって…全然話なんて頭ん中入んなかった。一人で見てるのが虚しくなって途中で帰ってきちゃったし…」
「速水…」
「俺…火浦がいなくて何しても全然楽しくなかった。火浦がいないとこんなにつまんないんだ〜…って実感した。悲しくて…虚しくて…だからあんな嫉妬したのすっごい後悔して…火浦に会いたくて仕方なくて…」
「俺も…速水に会いたかった。…俺もお前にちゃんと説明しなかった事すごい後悔してた。」
「………火浦もそう思ってたんだ……」
「あったりまえだろ!俺…速水の事本気で好きだし!」
「…俺も…火浦が好きで好きで仕方ないよ…」
もう一度お互い告白したみたいな雰囲気に、俺達は二人とも顔が真っ赤に…火浦が顔を赤くする程照れるなんて滅多にないかも…可愛い…

「…映画、もう一度俺と一緒に見よっ!」
火浦は俺の髪を優しく撫でてにこっと笑いかける…火浦の可愛い笑顔…
「……うん!」


「今日は俺の誕生日デートだからな!費用は全部お前持ち!」
「え〜?!…でも…いいよ……」
「くくっ…冗談だよ!……あ…あとさ、ちょっと早く帰ってきて昨日の速水への罰の続きもしないとな〜…」
「え?!昨日で終ったんじゃないのかよ…」
「バーカ!あんなもんじゃ終んねーよ!昨日は速水の方がすごかったから…今日は俺が……な!」
…あんなもん?…昨日も結構激しかったと思うけど…大丈夫かな?俺の身体…
一抹の不安に駆られる俺…
火浦はそんな俺を見て意地悪げに笑う…
「素直でイイ子の速水にたっぷりご褒美もあげないとな〜…」
「もう…火浦は……」
俺の顔はまた真っ赤になっちゃって…

「…火浦……」
「ん?なんだ?」
「…誕生日おめでとっ!!」
俺は大好きな火浦の唇に軽くキスをした。
「…ありがとな!」
火浦は少し恥ずかしそうににこっと笑う…

「行こっ!速水!」
「うんっ!」
いつも通り、俺の隣には可愛い愛しい火浦。
火浦が差し出した手をぎゅっと握って、俺と火浦は並んで歩き出した。




*火浦さんbirthday記念に可愛い火速です♪いつも通りの相変わらずラブラブな火浦さんと速水さん…愛するが故、時にはこんな気持ちのすれ違いもあるのでは…でもやっぱり仲良しさん!こんなケンカを乗り越えながらもっともっとお互いを理解していくんでしょうね〜…
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