ワガママ
ここは、二階堂家の奥にある大河様の部屋。
俺の仕える大事な大河様は、部屋のベットで寝込んでいる…
今日は4月15日…大河様の誕生日…
それなのに、タイミングが悪いと言うかなんと言うか…大河様は昨夜から風邪をひいて熱を出していた。

「…やっぱり嫌だ!行くぞ…五十嵐!」
「…今日は無理です。いい加減諦めて下さい。」
今日は朝からこのやり取りを何回も繰り返している。
それと言うのも、本当は二人で出掛ける約束をしていたから……

「…五十嵐はそれでいいのか?」
「…いいも何も…仕方ないじゃないですか…」
「…五十嵐は大人だね!」
怒った様に言うと大河様は拗ねてベットに潜り込んでしまった。
俺はやれやれと思う反面、いつもは冷静で大人びた大河様の子供らしいワガママを可愛いと思ったり…
大河様は可愛い顔をしてなかなかの頑固者だ。
俺は大河様の機嫌を直す事をひとまず諦めて部屋の隅にある椅子に腰を下ろし、本を読み始めた。


大河様の部屋の時計が12時のチャイムを鳴らす。
相変わらず大河様はベットに潜り込んだまま……

「大河様、昼食に何か食べられますか?」
「…いらない!」
「…じゃあ、リンゴなら食べれますか?」
「……うん」
「はい、わかりました。すぐに剥きますから…」
「五十嵐…ウサギリンゴじゃないと食べないからね!」
「…承知してます。」

大河様は小さい頃から風邪をひいて熱を出すとリンゴを食べたがる。しかも、普段なら絶対望まないウサギの耳の形に皮を残した可愛いウサギリンゴを……

ー本当に…いつもの大河様はどこへ行ったやら……

普段の大河様はワガママなんて絶対言わない。きっと二階堂家の次期当主として、色々な事を我慢しているのだろう…でも、今日は熱のせいか…約束がダメになったせいか…普段では考えられない程ワガママだ。
俺に素直に感情をぶつけてくる大河様……そんなワガママいっぱいな大河様も俺は愛しい…

「大河様、剥けましたよ。」
俺がそう言うと大河様は身体を起こして可愛いウサギのリンゴを受け取り、口に運ぶ。

「大河様、残念な気持ちはわかりますけど……もういい加減機嫌を直して下さい。それじゃあ、治るものも治りませんから…」
「…じゃあ五十嵐、今日は一日僕の言う事を何でも聞くかい?」
「わかりました。」

ーいつもあなたの言う事は何でも聞いてるじゃないですか……

まるで幼い子供の様にひたすらワガママをぶつけてくる大河様が可笑しくて、俺は小さく笑った。
もちろん、大河様に気付かれない様に……

「五十嵐…喉が乾いた。」
「…はい、水ですね。」
「五十嵐…暑い。」
「…じゃあ、窓を少し開けますね。」

「……五十嵐は何でも言う事聞くんだね!」
「…だって、大河様がそう仰ったからじゃないですか…大河様、あんまりイライラしてると熱が上がりますよ…」

ー自分が言う事を聞けと言ったのに…まったく……仕方ない人だな……

思い付くままに感情を露にする大河様のそんな様子が可愛くて仕方なくて、俺は苦笑いする。
大河様はそんな俺をじっと見つめ…さっきまでとは違う、小さな声で俺に問い掛ける……

「…じゃあ、僕がキスしろ…って言ったら五十嵐はするのか?」
「……いいですよ…」

俺は大河様のその言葉に少し驚いたが、即答すると立ち上がり大河様のベットに近づく……
赤い顔をした大河様の肩を押さえつけて身動きを封じ、大河様の顔を見つめた。

「……大河様、目を閉じて下さい……」
そう言うと俺は大河様の唇に少しずつ近づく……

「…やっぱりダメだ!五十嵐に移っちゃう……」
唇が重なる寸前、大河様は顔を背けた。
俺は大河様を押さえつけていた両手を離し、大河様の髪を優しく撫でる……

「……ゴメンね…五十嵐…いっぱいワガママ言って……」
「……いいですよ…俺だけにはワガママ言って下さい…俺はそんな大河様も好きですから…」
「……五十嵐…ありがとう……」
大河様は優しく微笑む……

「最後に一つだけワガママ聞いてくれるかい?…」
「何ですか?」
「僕が眠るまで側にいて手を握ってて…」
「わかりました。大河様…そんなのワガママの内に入りませんよ…」

俺はベットの側に腰を下ろすと、熱く火照っている大河様の手を軽く握る…
「大河様…早く治して今日の分まで楽しみましょう。その時はちゃんとキスもしますからね…」
「……うん」

俺の言葉に優しく頷き、大河様は落ち着いた様に瞳を閉じた。
暫くすると、大河様の柔らかい寝息が聞こえてくる……

「……大河様…大好きですよ…」

俺は愛しく可愛い大河様の手を優しく握り、その熱を帯びた頬に軽く唇を寄せた…





*ようやく書きました…イガタイ…正直、他の素敵サイト様に素敵なイガタイ小説が沢山あるので、管理人の稚拙なものなど…と思っていたんですが、やはり書くと楽しくて……自己満ですが、書いて良かった♪
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