ラブストーリーは突然に…
ここは荒崎小学校闘球部の部室。
俺、白川、逆巻拳、豪兄弟の4人は先に練習着に着替え他のヤツラが来るのをを待っていた。今日一日の授業はとっくに終わり、既に部活の時間は始まっているのだが…まだメンバーが全員揃っていない。
闘球部主将の陸王さんは次の練習試合の事で校長に呼ばれて校長室に行っている。他の奴らは……どうやら何か悪さをしたらしく…担任に説教を喰らっているらしい………
バカなヤツラだ。どうせやるならバレない様にやればいいものを。


「おい、滝!今日の体育バスケだったろ?陸王さん見たか?!シュート、バンバン決めてさ〜…かっこ良かったよなぁ〜…」
「…白川……いてーんだけど…」
興奮して俺をバシバシと叩いているのは白川。
こいつの陸王さんへの憧れはとにかく尋常ではない…俺達の中で断トツ一番。
憧れというより…もはや “ 恋愛的な好き " に限りなく近い………

白川は男だがやたらとキレイな可愛い顔をしている…身体も細身でスラッとしていて…一見すると女に見えてしまう…俺が初めて白川を見た時、完全に女だと勘違いしてしまったほどだ。
ゴツい荒崎の面々の中では特にそのキレイな風貌が余計目立ち…校内で白川の事が好きな男も結構いると聞く。
…おい…マジかよ…白川は男だぜ?!
…どうやら白川は荒れる荒崎の唯一の乙女らしい……
そんな乙女な白川が陸王さんに恋してるなんて…なんかリアル過ぎんだろ…

「そんでな、俺が陸王さんが転がしたボール捕ったらさ、 “ 白川ありがとな! " って笑ったんだぜ!」
今にも飛び上がりそうなほど嬉しそうにニコニコしている白川…

…そりゃあいくら陸王さんでも礼ぐらい言うだろ……白川だから言った訳でもねぇだろうし……なんなんだよ…こいつ…

「お前…なんでそこまで陸王さんに陶酔してるんだ?確かに陸王さんは男から見てもすげーかっこいいし…逞しいし…俺だって憧れてるけど……」
俺は前から抱いていたちょっとした些細な疑問を、軽〜い気持ちで言ってから……激しく後悔した……

…あ!…ヤ…ヤバイ!……余計な事聞いてしまった……白川の “ 陸王さん語り " が始まっちまう…

白川は激しい荒崎の面々の中ではどっちかというとまだ大人しい方だ。ただ、陸王さんの事となると話は別で…………
そんな事を聞こうもんなら、自分の陸王さんへの愛や陸王さんの凄さなんかを延々と聞かされるのだ……
お前は一体どこまで乙女なんだよ!…俺は女じゃねーんだ!そんなもんにいちいち付き合ってられるか!バカバカしい!
……と…俺が思わず怒りを覚えてしまうほど、とにかく白川の “ 陸王さん語り " は果てしなく長い。
俺はそれでもう何回も失敗しているのに……後悔先たたず……


「あれ?お前らに話した事なかったっけ?…俺はただ陸王さんの外見に惚れてるだけじゃないんだぜ……」
俺の激しい後悔の胸中も知らず、白川は聞いて欲しそうな意味深な言い方をする…

「…いや…また時間のある時にだな……」
「…なんだよ!どういう事だ?なにがあったんだ?」
俺が事態の収拾に向かう中、白川のその言葉に食いついたのは逆巻拳だ。

…こんのバカっ!食いつくんじゃねーよ!……白川の思うツボじゃねーか!…

俺は単純バカな拳にイラッとしたが…言ってしまったものは仕方がない。

「聞きたいか?俺と陸王さんの馴れ初めを……」
まぁ…陸王さんもまだ来ないし事だし、白川のノロケ話に付き合うのは正直面倒だが……暇潰しに聞いてやる事にした。


ーーーーーあれは俺がまだ幼稚園の頃………
俺の通ってた幼稚園には悪ガキ軍団がいてさ…当時の俺は身体も小さくて気も弱くて…そいつらに女みたいだってからかわれてたんだよな。
…今だったらそいつら全員ボッコボコにしてやるけどな。

ある日、近くの公園で遊んでたらまたそいつらにからかわれて…そんで、俺もさすがに頭にきて殴りかかった訳。でも、人数も体格もそいつらが上回っててさ…俺はそいつらに半ばボコられたんだよ。
その時助けてくれたのが陸王さん!
陸王さん、何処からともなく現れて…「卑怯な事すんな!」ってそいつらに向かって怒ってくれて…それ以来、そいつらも俺の事からかわなくなったんだよな。
俺…今でもそん時の事よく覚えてんだ。
陸王さん、すげーかっこよくて…ヒーローみたいに見えて…俺はその時初めて陸王さんに会ったんだけど…今思うと完全な一目惚れだよな…
その後は会う事もなかったんだけどさ……俺は忘れた事なかった。
だから、小学校に入学して陸王さんを見た時スゲー嬉しかったよ…まぁ当の陸王さんは殆んど覚えてなかったけどな!
その時、俺は一生陸王さんに付いていくって決めてさ、それで陸王さんの後を追って闘球部に入部したって訳だ!……ーーーーーーーーーー

どんなノロケ話になるかと思いきや…思いがけないほどの陸王さんと白川の深いい話に、俺達は何だか感動すら覚えたりして…
…なるほど…白川はそれで陸王さんに惚れちまった訳か……そりゃ惚れるな。
まぁ〜…幸せなのは悪い事じゃねーし。
その時の陸王さんを思い出しているのか、白川はやたらとうっとりしている。

「でも…陸王さんあの試合以来弾平とかなり仲がいいぜ…」
部室に白川のやたら幸せいっぱいな陸王さん大好きオーラが漂う中…今度は豪が余計な事を言いやがる……
…せっかく白川がいい気持ちになってんだから、もう少し浸らせてやればいいものを……嫉妬でもしたら面倒だろ。
拳といい豪といい…こいつらは本当に空気の読めない兄弟だぜ……

ところが、白川は平然として言った。
「陸王さんが誰と仲良くしようが、関係ねぇ!俺は一生陸王さんについていくだけだぜ!」

………一生!! ……こいつならやりかねない……

…これが白川の陸王さんへの愛の深さか……なんて重い男なんだ……
みんな白川の凄まじい愛の深さに絶句……
その白川だけは思い出に酔しれ浮かれている………
部室の中は、白川の放つ陸王さんへのラブオーラと俺達のドン引きな空気が入り交じり…一気に異様な雰囲気に……

その時部室のドアが開き、陸王さんが入ってきた。

「よぉ!遅れてすまねーな!」
「陸王さん!遅かったですね!」
白川は待ってましたとばかりに、乙女の様な煌めく瞳で陸王さんに飛び付く。

陸王さんも陸王さんで、
「おー白川!今日も相変わらず可愛いツラしてんな!」
なんて白川の頭を優しく撫でながらいつもの軽いノリで言うもんだから…白川の乙女の瞳はますます輝く……

「陸王さん!練習試合どうなりました?」
白川は陸王さんにベッタリまとわりつき離れない…

「…あぁ…決まったぜ!相手は弾平の球川小、来週の土曜日だ。詳しい時間なんかはまだ決まってないがな…」
「陸王さん、今度は球川のヤツラをぶっ潰してやりましょう!!」
「…おぉ〜…白川…なんかスゲーやる気だな!」
「陸王さん!俺、頑張りますから!!」
燃える白川………愛の力か、白川のやる気は凄まじい……
そんな白川の尋常じゃないやる気に疑問を持ったのか、陸王さんは俺に近付くとそっと耳打ちする…

「……なぁ滝…白川のヤツどうしたんだ?…今日は一段とハートのオーラがスゲーんだけど……」
「まぁ…自分の陸王さんへの深い愛を再確認したんでしょーね………」
「ふーん?…何があったか知らねぇが…まぁ好かれて悪い気はしねーけどな!」
「…陸王さん、白川とはきっと長い付き合いになりますよ……」
「……?……よくわかんねーけど…まぁいっか!白川の事は嫌いじゃねーしな!」
さすが陸王さん…懐が広いぜ…
陸王さんならこの白川の深〜い重〜い愛を受け入れられるかも…
俺ならきっとノイローゼだ……

「さぁ!まだ来ないヤツもいるが、練習はじめるぞ!!」
「おうっ!!」
白川は陸王さんの後に続いて、意気揚々と歩いていく。
その後ろ姿からは果てしないラブオーラが放たれている………
俺は、白川の深〜い愛が自分に向けられずに本当に良かったと改めて痛感し…そのラブオーラを避ける様に、二人から少し離れてグランドに向かって歩き出した…





*白川があんまりいいとこなかったので書いてみましたが…やっぱり痛い感じの白川になりました〜…
滝は白川に冷たくていいですね〜♪
1/1
novel荒崎小学校 top