happy birthday!
俺は果てしなく…果てしなく悩んでいた…
授業中も…闘球部の部活の時も…家に帰っても…

何をそんなに悩んでいるのかと言うと…今週の日曜は可愛い逆巻の誕生日なのだ。
せっかくの誕生日…何かをプレゼントしてやりたい!そして、どうせなら逆巻がすごく喜ぶものを贈りたい!
でも、何を贈ったら逆巻は喜んでくれるのか…俺にはさっぱりわからないでいた…
風間小闘球部主将として仲間として…いつもいつも逆巻の側にいるはずなのに…俺とした事が情けない!
実はもっと前から考えていたのだが…全く良い案が浮かばず、今に至る…

…こんなに悩むくらいなら、いっそ逆巻に直接聞いてみた方がいいのではないか…
そう思った俺は勇気を出して逆巻に声を掛ける。

「…な…なぁ…逆巻…」
「…ん?何だ?」
「…あ……その……いや!やっぱり何でもない!」

…ダメだ!…直接逆巻に聞いてしまったら…雑誌で見たサプライズとかいうのにはならん!…

プレゼントに悩む俺がすがる気持ちで立読みした雑誌…そこに書いてあったのだが、女はサプライズというものに弱いらしい……
まぁ…逆巻は男だけど…俺にとっては可愛い女みたいなもんだし、喜ばせたい…という観点では一緒だ。
そこで俺はサプライズをしてみようと考えたのだ。
挙動不審な俺の様子に逆巻は首を傾げる…

「…なんかさ、最近のお前変だぜ…いつも考え込んでて…なんか悩みでもあんのか?」
「…なっ…何でもない!!別に悩んでなどいない!」
…あ〜逆巻に気付かれては大変だ!
俺は心配する逆巻の顔もろくに見ずに慌ててその場を離れてしまった。

……逆巻は一体何が好きなのか?何を送れば喜ぶのか?…ゲーム?漫画?確かにどっちも好きな様だが…ゲームは高価だ…そんな高い物はかえって迷惑では…漫画は手頃だが、あいつは漫画ばかり読んでるし、これ以上漫画を増やして母親に怒られたら可愛そうだ…ケーキはどうだ?いや、敢えて俺が送らなくても家族で食べるか…じゃあ、参考書とか…いやダメだ!あいつが喜ぶ訳がない…逆に怒らせるかもしれない…

「……う〜ん……」
今までの人生の中で、答えの出なかった事などなかった。考えれば考えた分答えが出て前に進める…そう思って今まで過ごしてきた。
しかし…逆巻の事となると全くわからない…考えれば考える程わからなくなるのだ…
これは俺にとって初めての経験…なんでこんなに逆巻の事となると悩んでしまうのか…本当に俺にもわからない。唯一わかるのは…逆巻を喜ばせたい…という俺の気持ち…ただそれだけだ。


闘球部の練習後…
「五大主将…お疲れ様でした!」
「……あ…あぁ…またな…」

仲間が帰り支度をすませて俺に声をかけると次々と部室を出て行く…俺は相変わらず一人で悶々と悩んでいた。
いつもは逆巻と一緒に帰るのだが…悶々と悩み続けていた俺は、逆巻がそんな俺を置いて先に帰った事すらわからないでいた。

「…何がいいか…どうすればいいか…」
一人残った俺がブツブツ言っていると…

…バターン!!
大きな音を立てて部室のドアが開く。
そこには明らかに怒った顔をした逆巻が立っていた。
つかつかと俺に近寄り、大声で俺の名前を呼ぶ…

「…おい!五大!!」
「…ん?……なっ…なんだ?」
「お前、何か変だぞ!いつもぼんやりして…俺の話も聞かないし!顔も見ない!」
俺は図星をつかれ、ギクッとした…しかし、ここで全て話しては……逆巻を喜ばせるプライズにはならない。
俺は慌てて逆巻から目を逸らすと、精一杯の嘘をつく…

「……そ…そうか?そ…そんな事はないぞ…俺はいつもと変わらんぞ……」
「…嘘つくな!!隠し事はやめろ!何かあるならちゃんと言え!」
自分から目を逸らして曖昧な事ばかりを並べ立てる俺…
そんな俺の態度に怒った逆巻が勢いよく俺に掴み掛かってきた。
……間近に迫った逆巻の顔をよく見ると…うっすら涙が浮かんでいるではないか…
その切なく悲しい顔に俺はすっかり動揺してしまう…

「……さ…逆巻…」
「五大のバカ!!俺に隠し事すんな!!」
涙目でそう叫ぶ逆巻の真剣な顔……俺はそこで初めて自分の態度が逆巻を傷つけていたという事に気が付いたのだ……
どうやら逆巻を喜ばせたいと思う余りとってきた俺の行動……それが逆にこいつを悲しませていた様だ…
なんてバカな俺だろうか…

「……すまない…」
俺は逆巻に今までの事全てを話した。

「……なんだ、五大はそんな事で悩んでたのか?」
「…そんな事って言うけどな……俺には大事な事だ。…どうしてもお前を喜ばせてやりたくて…」
「……五大…………」
逆巻は俺の言葉に嬉しそうな安心した顔を見せた。
そして…少し照れながらそっと呟く…

「俺…もしかしたら……五大は俺の事嫌いになっちゃったのかな〜…なんて思って不安で…」
「……そ…それはない!絶対ない!…俺がお前の事嫌いになる事なんて…絶対ない!」
逆巻の言葉を慌てて否定した俺…
俺を見つめる逆巻の顔が一気に赤くなって…俺もなんだか恥ずかしくなってしまって………
真っ赤な顔で見つめあう俺と逆巻……かなり…かなり恥ずかしい………
俺と逆巻の間にとても甘い空気が流れる…
その甘い雰囲気に俺はなんだかすごく照れてしまって慌てて言葉を続けた。

「で…でも…すまなかったな!…お前にそんな思いをさせてたなんて…」
「…本当だぜ!…まったく五大は……でも…ありがとな…そんなに悩んでくれて…」
逆巻は真っ赤な顔のまま照れながら言うと、真っ直ぐ俺を見据えた。

「……じゃあ…俺が本当に欲しいもの教えてやるよ…」
「欲しいものがあるのか?…それなら教えて貰えると助かる!」

逆巻はすっと俺に近付くと…俺の顔を真剣な顔で見つめる…
「………俺が欲しいもの…それは…五大と一緒に過ごす時間だ…」
「…え?…それはどういう……」
「………俺は…五大が好きだ!仲間としてじゃなく…お前の事が大好きだ!!」

「…………」
次の瞬間…俺は今まで経験した事のない様な温もりを全身に感じた…
俺を好きだと言った逆巻が…俺の胸にしっかりと抱き付いている…
初めて感じる逆巻の温もり…俺の身体が一気に熱を持ち…胸が急激にドキドキと高鳴る…

「…五大…好きだ…好きだ……」
逆巻は俺の胸にしっかりとしがみつき、何度もその言葉を繰り返す……
その言葉を聞く度に身体が熱を帯び…俺の胸の鼓動がより一層激しく打ち付ける……

「…そ…れはどう…いう……」
熱くなった俺の身体……激しい胸の高鳴りが喉まで迫ってしまい最後まで声が出ない…
上から見下ろす逆巻の耳が真っ赤に燃えている…

「…あんま…深く考えんな…そのまんま…だから…」
俺の胸に顔をうずめる逆巻にそう言われ、俺は本能の赴くままに逆巻の背中に腕を回すとその背中を強くしっかりと抱き締めた。


次の日曜日…逆巻の誕生日。

約束は10時。
俺は10分前に到着して逆巻を待つ…
あいつはけろっとした顔で「待たせたな!」なんて言って5分遅れてやって来た。

「……で、今日はどうしたいんだ?どこへ行くかちゃんと考えたのか?」
「…う〜ん…まだ考えてない!」
「…な…なにぃ!!」

…それでは今日という日があっという間に終わってしまうじゃないか!

「さ…逆巻…じゃあ…これから計画を立てて……」
「…いいじゃねーか!…行き当たりバッタリで行こーぜ!」
ニコッと笑って逆巻は俺の手を引っ張る…その可愛い笑顔……逆巻には敵わない…

…こいつと一緒ならそれも良いかも知れないな…

そんな風に思った俺は軽く頷くと、逆巻に引っ張られるままに歩き出した。

「さ…逆巻…!誕生日おめでとう!!」
「…サンキュー五大!」
逆巻は特別嬉しそうな笑顔を見せた…



実は…逆巻へのプレゼントに悩んでいた頃、それと同時に俺はもう1つ悩んでいた事があった。
それは…自分はどうして逆巻の事となるとこんなにも悩んでしまうのか…という事だ。
しかし、これに関してはいつも通り考えた末に答えが出た。

それは……俺が逆巻を好きだから…

俺にしてはなんて簡単な答えなんだと思った。




*このサイト初の鉄板誕生日ネタをまさかの五×逆でやってしまいました〜♪でもいいですよね!本当に五×逆は可愛いです。逆巻の可愛さは半端なしです。
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