#3 [一日の終わりに]
「あ〜…もうこんな時間か…一日って早いな…」
腕時計を見て五大が呟く。

時刻は夕方…
すっかり日は落ち、辺りには少しずつ夜が迫ってきている…
デートを終えた俺と五大は、朝待ち合わせたバス停まで戻ってきた。
楽しかった一日はあっという間に終わり、それぞれ帰路に付く時間…でもなんとなく帰りがたい俺達はバス停に留まっていた。
五大がしゃがむと俺の方がちょっとだけ背が高い…いつもは見上げるばかりの五大の顔が、今は俺の少し下にある…

「…逆巻…今日は楽しかったか?」
「……うん…」
「…なんだ?元気ないな…腹でも減ったか?」
五大は元気のない俺の様子に気が付くと、冗談っぽく聞く。
「…バカ!違うよ!……」
「……?…」
「……だって…また暫く二人で会えないだろ?…試合もあるし…」
「………逆巻……」
二人で会えないという事は…つまり俺は五大と主将と部員の関係でしかいられないという事…
もちろん練習も試合も大事だけど……恋人同士になれないのは俺にとってかなり寂しい事だ。
これは俺のワガママだってわかってても、つい拗ねてしまう。

「それにさ、練習の時のお前…すっげー怖いし厳しーし!仕方ねーけどな!」
「……逆巻は嫌か?」
五大の顔が一瞬曇る…

「…冗談だろ!…嫌じゃねーよ。それでこそお前って感じだからな!」
俺の言葉に五大は安心した様な顔を見せ…小さな声で呟いた…
「……まぁ…外見は…そう見えるかもしれんがな…」

「…なになに?…あんなに俺に厳しくしてるくせに、腹ん中では俺の事可愛いと思ってんの?」

…俺は軽い冗談で言ったのに……
五大の次の言葉によって、俺の身体の奥がきゅーんと疼き…胸がドキドキと一気に高鳴ってしまった…
……だって五大が…
「……あぁ……そうだよ……」
なんて言うから……

「…五大…」
「……ん?」
俺は少し屈むと、五大に触れるか触れないかの軽いキスをした…

「……五大…大好き。」
……俺は五大の頬を優しく撫でてそっと囁く…
五大は身動き一つしないで真っ赤な顔で俺を見つめている…
そんな五大の可愛い顔に、キスをした俺の方が恥ずかしくなってきてしまった…

「…じゃ…じゃーな!」
恥ずかしさで一杯の俺はそう言うと、軽く手を挙げて朝来た道を走って戻る。

…五大のヤツ…あんなに俺に厳しくしておきながら可愛いなんて思ってたなんて…
俺は恥ずかしいやら可笑しいやら…でも…すごく嬉しくて嬉しくて仕方なくて…

…明日からの練習、五大の顔をまともに見れるかな…

空を見ると、さっきまで青白かった大きな月が、黄色く色づき始めていた……




*最後まで仲良しな二人です♪明日から、逆巻はどうするんでしょうね〜…練習中、二人ともにやけずにいられるんでしょうかね〜…
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