これから先もずっと…
「カンパーイ!!」

カーン!!…俺の部屋に響く缶の合わさる音。
テストでの赤点をなんとか回避した俺と弾平、何を飲んでるかハッキリとは言えねーが…弾平が買ってきた『所謂美味しい飲み物』…で今日は俺達二人だけの楽しい打ち上げだ。
…本当は良くねーんだが…まぁ今日はお祝いだ、多目に見てくれや!

「いや〜しっかし良かったな!俺も弾平も無事に赤点逃れて!さすがに今回はヤバかったもんな〜」
「ははっ…まぁな!かなりギリギリだったけどな!」
「ギリギリだろーがなんだろーが結果オーライ!これで無事に進級できるな!」
「ああ!三笠さん達に頼んで勉強見て貰って本当に良かったぜ…!」

ご存じの通り、俺も弾平も勉強が大の苦手だ。
二人とも無事に同じ高校に入学できたものの試験の度に何度も赤点を取り続け…そんな俺達に担任が言ったこの言葉……
『陸王も弾平も今回のテストで赤点取ったら進級厳しいぞ!しっかり勉強しろよ!』
…これはマジでヤバイ…!!

事の重大さを認識した俺達は似たか寄ったかのお互いだけじゃどうにもならないと、弾平の先輩の三笠達に懇願して勉強を見て貰ったのだ。
…さすがエリートなヤツラは違うな!授業で聞いてても全くわからなかった問題があっという間にわかるようになって…今回のテストの結果は過去最高の高得点、しかもクラストップレベル!テストの結果を見た担任の驚いた顔が忘れられないぜ〜!
まぁ〜人に…ましてや弾平の先輩に頼るのは少々悔しいがこの際背に腹は代えられねぇ、正直言って助かった。

しかし弾平のヤツ、三笠や火浦にニコニコしやがって…勉強を見て貰ってる時のあの弾平の笑顔はなんなんだよ!
弾平にとって三笠や火浦達は小学校からの付き合いの大切な先輩で特別な存在だ。今でも連絡を取り合ってたまに会ってるしめちゃくちゃ仲が良いのは知ってるけどよ、俺の前であんなにベタベタしなくったっていいじゃねーか…!
まぁ〜結果的に赤点を回避できたんだからありがたかったけどよ、俺の愛する弾平があんなに信頼して甘えてるのを見ると…さすがに妬くっての!!


俺が少しだけ用意したつまみを肴に嬉しそうに飲んでる弾平…大好きな三笠達に救われて進級できる安堵感に酔いしれてる弾平がなんだか妙に腹立たしくも思えて…
…くっそ〜なんだよ!俺の気持ちも知らねーでのんきにしやがって!…許せん!

三笠や火浦達に囲まれて信頼度MAXの満面の笑顔を見せていた弾平を思い出して嫉妬心に駆られた俺はひとりモヤモヤ…思わず恨みの目で弾平をじーっと見てしまう。
そんな俺の繊細な男心も知らず…

「どうした陸王?お前も飲めって!」
ニコッ…!ハートが飛び散るような最高の笑顔で俺に笑いかける弾平……
…くそっ…可愛いじゃねーか!…やっぱ許す!!
あ〜〜やっぱり弾平には敵わねぇ…この笑顔に簡単に負けちまう……惚れた弱みだな……



「陸王、今回お前ほんっとにヤバかったろ?お前ってば本当にサボってばっかで…もうちょっと真面目にやれよな!」
「わかってっけどよ〜部活も忙しいしなんかめんどうになっちまって…つい…」
「つい…じゃねーよ!」
「なんだよ!弾平だって俺のこと言えねーだろ?」

部活が忙しいのも確かだが…自業自得なんだ、やってるヤツはやっている…つまり俺はやってない、そんなのわかってる。
自分でも認識してる己の弱さを弾平突かれて売り言葉に買い言葉、喧嘩なんてしたくないのに俺もつい感情的に…
弾平は『なんだと〜!』なーんていつも通り言い返してくるかと思ったが…

「……まぁ…確かに俺も人のこと言えたもんじゃねーけどさ…でももうちょっと真面目にやれよ…あんまサボってばっかだと進級できねーし…」
「弾平……」
うつむいた弾平の曇った顔…
…なんだよマジで俺のこと心配してくれてんのかよ…くぅ〜〜そんな顔しちまって…めちゃくちゃ嬉しいじゃねーか…!

普段はなかなか見せてくれない弾平の俺への愛情をひしひしと感じた俺はとにかく嬉しくて堪らない…溢れる喜びが顔出ちまう。俺はだらしなくニヤけてしまいそうになるのを必死に抑えながら真っ赤な弾平の柔らかい髪の毛をそっと撫でる…

「なになに心配してくれてんの?ほんっとに弾平は俺のこと大好きだなぁ〜」
「…っなっ…心配なんて!…陸王のバーカ!!」
口を尖らせてプイッと横を向く弾平…俺の大好きな拗ねた顔…あ〜あ〜耳まで真っ赤にしちまって…堪んねぇなぁ〜…マジで可愛いぜ…弾平!!

「…わかったぜ、心配かけてごめんな。もうちっと真面目にやるからよ…だから機嫌直せって!」
「本当か?約束だぞ!」
俺の言葉に弾平はパッと振り返ってニコッ!……誰より可愛いその笑顔……俺までつられて笑顔になっちまう…


弾平との出会いは小学の時だ。
当時、親友に裏切られた心の傷をずっと引きずっていた俺…そんな時に弾平率いる球川小闘球部と闘ったんだ。
昔の傷をいつまでも拭えず自分でもどうする事も出来なくて、誰かに助けて欲しいのに触れられるのも怖くて見せたくなくて、ひたすら鎧を纏って誰も近づかせなかった…ひねくれて荒くれ者だった俺。
……でも本当は誰かに自分をしっかり見つめてほしかった。
そんな俺になんの迷いもなく真っ直ぐに真っ正面からぶつかってきたくれたのが弾平……弾平は俺をしっかり見つめてくれて…俺はそのひねた心をえぐられるようだった。
弾平としっかり向き合う事で俺は昔のトラウマを乗り越えられた…弾平は俺の心の鎧をぶっ壊して深く刻まれていたあの傷を癒してくれた。
その時から弾平は俺の『特別』になったんだ。

中学は違ったものの、約束通り一緒の高校に進学した俺達。俺はその時から抱き続けていた弾平への愛情をようやく伝え…弾平も俺の気持ちを受け入れてくれた。俺はあの時の弾平の恥ずかしそうな嬉しそうな顔を一生忘れない。

俺と弾平は闘球部最高のコンビであり、お互い愛し合ってる最高の恋人…だと俺は思ってる。でも俺がどんなに愛情表現してもつれない態度の弾平…なんとな〜く俺が一方的に好きっぽい感じがするのは気のせいか…?
こんっっなにも弾平が好きなのに!お前だって俺の事好きなんだろ?!…絶対好きなくせに!
弾平のやつ、ほんっっとに素直じゃねーんだよな!


相思相愛なはずの俺と弾平だが、そんな微妙な関係もあり弾平とはキスまでは進んだもののそのあとは…でも俺も男、弾平の事がめちゃくちゃ好きだ、いや、愛してる!
本音は愛する可愛い弾平と最後までやっちまいたい、弾平の身体の隅々まで俺のものにして……な〜んて普通の恋人みたいに当たり前に思ってるんだがな、俺自身が1歩踏み出せずにいる……なんつーか…その…怖いんだ。

小学の頃はちっちゃくて無邪気で色恋なんてなーんにも知らねぇようなガキだった弾平も高校になって
身長も伸びてすっかり成長してなぁ〜…広い肩幅に細い腰…そしてきゅっと引き締まったちっこい尻……学校にいる時も練習中もとにかく弾平の身体に目がいってしまう…!
好きなやつと愛し合いたいと思うのは当たり前の感情だ。弾平が男だろうと関係ない、弾平は弾平、好きなもんは好きなんだ。
愛する弾平と最後まで進みたい……この小さな尻のあの穴に挿入たらどんなに気持ちいい事か……ぐぁぁ〜〜〜!!弾平を抱きてぇ…!!やりてぇ…!!

かる〜くサクッとやっちまえばいいんだよ!!弾平だっていつまでもガキじゃねーんだ、付き合うってことがそういう事をするってことぐらいわかってんだろ??いつもの俺らしく軽く…サクッと………
はぁぁ…俺は深いため息………それが出来ねぇんだよなぁ〜……

そりゃあ〜〜今までもノリでふざけて弾平に迫ったことはあるけどな、『ふざけんな!!』って一蹴されちまって…ふざけてるからこそそんなにショックは受けねーが、もし本気で迫って弾平に拒否されたら俺はもう生きていけねぇ…

弾平に拒否されて嫌われて俺から離れてしまったら?…こんなに怖いと思ったことはない。
弾平と最後まで進みたいと思いつつ、怖くて先に進めない…全く男らしくないそんな自分がほとほと嫌になる。それだけ弾平は俺にとって『特別』なんだ。
荒くれものの俺だけど、弾平の事となるとマジでダメだ…くそっ…なにやってんだ俺は…


弾平への熱い想いを遂げられず独り悶々としている俺をよそにひとり楽しそうな弾平、ふと見ると弾平の前にはチューハイの空き缶がゴロゴロ…いつもの弾平よりかなりハイペース…
ああっ?!弾平のやつもうこんなに飲んだのか??…お前そんなに強くねーだろ!ヤバくねーか??

「おっ…おい、弾平!お前ペース早くねー…うっ!」

……遅かった………
慌てて声をかけた俺を見上げた弾平の顔……あんまり赤くないものの完全に目が座ってフワフワして…明らかに酔っているじゃねーか…しかもかなりヤバそうだ!!
俺は堪らず弾平に近付き、飲みかけていたチューハイの缶をパッと奪う。

「っあっ!りくおー何すんだよ!」
いきなり奪われ怒る弾平、俺から缶を奪い返そうと俺に掴みかかったその瞬間、弾平の身体がフワッと崩れた!
あぶねぇ!!…俺はとっさに弾平の身体を支える!

「…おっおい、大丈夫か?」
「ん〜〜〜…ダメっぽい……」
くたっと俺にもたれ掛かる弾平…完全に力が抜けちまってて…あ〜あ〜これはかなり酔ってんな…

「ったく…お前そんなに強くねーのにそんな一気に飲むから…とっ…とりあえずちょっと休め」

大して強くもないくせになに一気に飲んでんだよ…!
酔いが回りすぎて俺の大事な弾平に何かあったら大変だ!とりあえずベットに寝かせようと、ボンヤリしてる弾平の身体を抱えると…弾平も俺の背中に腕を回してぎゅっとしがみついてきた。
…なんだよ酔っぱらってるくせにしっかりしがみついちまってまぁ〜……あ〜弾平可愛いぜ…
弾平の熱い吐息と温もりを感じながら俺はそのままそっとベッドに乗せる…

あまり揺らさないようにとやんわりとベッドの上に下ろしたが弾平はしっかりしがみついたまま…
…ん?どうした?寝たのか?


しがみついている弾平の腕をそっと掴んで離そうとすると、その俺の手を振り払うかのように弾平の腕がぎゅっ……
「弾平?……」

「……きだ…」
「えっ?…」

「………好きだ…りくおう…」
突然の言葉…
腕の力強さとは反対の消え入りそうな弾平の小さな声…俺の胸が一気にドキッと高鳴る…

しがみついていた弾平が俺をそっと見上げる…弾平の真っ赤な頬とうるうると潤んだ大きな瞳…緩く空いた口元からは熱い吐息が…いつもの明るく元気な弾平とは明らかに違う、これは俺の恋人としての顔…
ああっ弾平…なんつー顔してんだよ……可愛いしエロい…ヤバい………たまんねぇ…
弾平の憂いを秘めたエロい顔…まるで俺を誘っているような今にも蕩けてしまいそうなこんな顔を見せられてはひとたまりもない、俺の溜まりまくった性欲がドカーン!!
…っあーーーー!!もう無理だ……無理…我慢できねぇ…弾平とヤりてぇ……


俺の理性のタガは完全に外れちまった……
本能のままに弾平の両腕を掴んでぐっとベットに押し付けて自由を奪うと俺は一気に弾平の唇に吸い付く。弾平の小さな唇を全て覆い尽くすと、欲望のままに貪る…

「…っんっ……んっ…」
何度も何度も執拗に吸い付き弾平の唇の端からは息が詰まりそうな苦しそうな甘い声……その声が逆に俺の性欲を刺激しちまう…
…くそっ…エロい声出しやがって…堪んねぇ!!
俺はなおさらしつこく弾平の唇に絡み付いた。

長い長いキス……存分に弾平の唇を貪った俺はそっと唇を離す…
俺の唾液に濡れた弾平の唇…弾平はそれを拭いもせずひたすら潤んだ瞳で俺を見つめる…

「…っはぁ…はぁ…」
弾平の苦しそうな熱い吐息がますます俺の性欲を刺激しちまって、俺は自分の下半身の塊が弾平への欲情に比例してどんどん硬さを増していくのを感じていた…


「大丈夫か…?」
俺の唾液で濡れた弾平の唇を拭おうとそっと触れると…弾平は俺の手を握って指にそっとキスをする…
そんな可愛い仕草に俺の弾平への愛情が溢れて胸が苦しい…可愛い弾平…俺の弾平……

「……弾平!!」
俺は堪らずもう一度弾平の唇に吸い付き、今度は緩く開いた唇の隙間から無理矢理舌をねじ込んで弾平の小さな舌に絡み付く。
弾平の舌に自分の舌を激しく絡めながら、俺は弾平の甘い味を存分に味わう…

重なった肌から弾平の体温が伝わって、その部分が熱く溶けそうだ。耳を寄せなくても聞こえてくるほどの弾平の激しい鼓動…その絶え間ない拍動が俺の胸の鼓動も高めていく…

こうなるともう止まらない。
押さえ付けていた腕の力を緩めて弾平のシャツのボタンをゆっくり外す…はだけたシャツから弾平のきれいな素肌が露となり、俺は堪らずそっと手を入れてその素肌をまさぐる…すると弾平の身体がビクッ…

「…っあっ…………」
快感を噛み殺したような声…思わず目を瞑った弾平の感じてる顔………俺はもう限界だ。

「…弾平…その…い…いいか?」
無粋にもそんな事を聞いてしまった俺の頬を弾平の手が優しく撫でる…

「…いいよ…りくおう…」
俺の名前を呼ぶその愛しい声……俺は堪らず弾平の首もとに顔を埋め、身体を重ねた……



弾平との甘い甘い時間が終り…ベットで寄り添う俺と弾平。

「…大丈夫か?」
「………お前がっつき過ぎ」
「…ははっ…わりぃ…」

自覚はある。
ようやく思いを遂げられた俺の性欲…我慢に我慢を重ねてたせいかいざ始まると自分でも見境がつかねーぐらいにかなり激しく弾平を攻めちまった…弾平は初めだってのに…!

やっと俺のものになった弾平は嬉しそうに少し恥ずかしそうに俺の隣で優しい顔をしている。
弾平との愛の営みは…とにかく気持ち良かった……ものすごく…想像なんて遥かに越えちまってた……弾平への愛情がぶわーっと吹き出して心も満たれて……好きなやつとするのってこんなに幸せなもんなんだな〜なんて思ったりして……


しかし念願かなってようやく弾平と一つになって幸せを噛み締めたものの、俺の心は若干の後悔の念が…嬉しい半面なんだか府に落ちねぇ。
酔っ払った弾平相手にやっちまった……もっとこう…弾平との初めてはしっかり弾平と向き合って…弾平が俺に向き合ってくれたように…そう思ってたのに……それもこれも俺の男としての意気地が足りねーからだ。
ああああ酒の力を借りなきゃヤれねーとは…荒崎のワルの俺はどこ行ったんだ?!…なんて情けねぇ…

ひとり賢者タイムを迎える俺、
弾平はそんな不穏な顔をしていた俺に気付いたらしい

「陸王?どうした?」
「……あっ…その…なんだ…いや、なんでもねーよ……」

何事もないかのように装ったが…俺の微妙な感情を弾平は見逃さない

「…なんだよ…もしかして俺とこういうことしたの後悔してんのか?」
「ちがっ…」
「あ〜〜もしかして他のヤツと比べてんのか?!」
「まさか!!そんなわけねーだろ!」
「じゃあなんだよ!隠し事すんなよ!」
「…あ…その…なんだ…」
「なんだよ!ハッキリ言えって!」

口ごもる俺につめよる弾平、真っ直ぐな顔しやがって…弾平の透き通るような大きな瞳で真剣に見つめられたら俺にはもう逃げ場はない……


「あああくそっ!!酒の力を借りなきゃお前とヤれないなんて…そんな自分が情けねーんだよ!!」
「……はあっ?」
「俺とお前の初めてだってのに……酔っぱらってるお前と…………弾平との初めてはちゃんとしっかり向き合って…そうしようと思ってたのによ…酔っぱらってよくわかんねーまま抱いちまって…じゃねーと怖くてお前に触れねーなんて……」
「……怖い?」
「…そうだよ!真剣に迫ってもしお前に拒否されたらって思ったら怖くて……」

「……なんだ、そんなこと悩んでんのか」
「だってよ!弾平は俺と真剣に向き合ってくれたってのに俺は…」
「……バカ」
弾平はくすっと優しく笑うと俺の頬にそっと手を置く…

「……酔ってなんかねーよ…」
「…えっ?!」
「だから俺は酔ってねーの!」

弾平は酔ってなかった?まさか…だってチューハイあんなに飲んで…

「俺が飲んでたのよく見てみろよ」

弾平にそう言われてテーブルの上の空き缶を見ると…あっ……それは…『ノンアルコール』

そういや、あんだけ飲んだのに俺は全然酔ってない。どうやって弾平をそんな雰囲気に持っていくか…そんな事ばかり考えてて頭が一杯だった俺は全く気づかなかったらしい…
…そうか………酔ってなかったんだ…

「やーっと進級がなんとかなったってのに、飲んだらさすがにマズイだろ?最初からノンアルしか買ってこなかったの!」
「……じゃあお前、酔っ払ったフリしてたのかよ…」
「まーな!お前気付かないんだもんな〜へっへー俺の名演技!」
「…なんでそんな…」


「……お前と…こういうことしたかったから」
「え?!…」
「だって…そうでもしなきゃお前…俺に手ぇ出せねーだろ…」

「俺は…ずっと陸王とこういうことしたかったのに…お前はいつもふざけてばっかで…」
「いや…だって弾平が嫌がるから…」
「陸王との初めてだからふざけてするのは嫌だ。ちゃんと陸王と……」
「………」
「好きだ、俺は陸王が好きだ……」

顔を真っ赤にして俺にしがみつく弾平…柔らかい赤髪が俺の頬をくすぐって…


「りくおう…りくおう…りくおう……」
弾平が俺の名前を何度も何度も読んでくれたのに、胸が一杯の俺はなにも言えなくて…
ただひたすら弾平を抱き締めて…燃えるようなその赤い柔らかい髪を撫でていた…



次の日…

「おっす弾平!」
「うーっす!」

いつも通り学校の校門の前で待ち合わせる俺と弾平
昨日の甘い時間なんて忘れたみたいに普通な俺達。

「あっ…陸王、今日はちゃんとネクタイ閉めてんじゃん!」
「ははっ、まぁな!今日は課題もバッチリだぜ!」
「マジか?!スゲーな!」
「弾平、お前は?」
「へっへー!俺もバッチリ!」
「そっか!良かった!」

いつもはだらしなく開けているワイシャツのボタンを上まで閉じて、いつもはしないネクタイをきちんと締めて、適当にやってた課題もちゃーんとやってきた!


「どうしたんだよ、急に真面目になって…さすがの陸王も進級やばくて改心したのか?」
「バーカ!そんなことぐらいで動揺する俺様じゃねーっての!」
「ふーん…じゃあなんだよ、一体どーしたってんだ?」
「あれ?弾平、お前…覚えてねーの?」
「はっ?なにが?」

俺は周りを見渡し近くに人がいない事を確認すると弾平の耳元に口を寄せゴニョゴニョ……
カーッと一気に赤くなる弾平の顔…

「バッ…バカっ!!ちゃんとやったらまたやらせてやる…なんて俺がいつ言ったんだよ!!」
「昨日のベッドの上」
「あ〜〜もう!ベッドの上とかぁぁ〜そんなことゆーな!!」
「だってマジで言ってたぜ、俺が真面目にしてたらいつでもやらせてやる…って」
「うっ…嘘だ!そっそんなこと言ってねーし!!」

耳まで真っ赤にしてしどろもどろの弾平…くぅ〜〜可愛いぜ…!そんな可愛い弾平をもっと見たくて俺はもうちょっとイジワル!

「じゃあもうちゃんとやんねーまたテキトーにやる事にするー」
「だっ…ダメ!ちゃんと真面目にやれって!」
「弾平がやらせてくれんなら頑張る」
「そっそんなお前…!俺を脅迫すんのか〜?!」
「弾平がやらせてくれんなら頑張る」
「……ううう…すっ…好きにしろ!!」

観念した弾平はプイッと横を向いて拗ねた顔…
ははっ俺の勝ち!いっつも負けてばっかじゃ悔しいしな!

でもな、『弾平がやらせてくれるから真面目にやる』…なんて照れ臭くて弾平にはそう言ったけど本当は…
これから先もずっとずっと弾平と並んで歩くために今の俺ができること……


「…なんだよ陸王、ニコニコして!」
「……ははっ!なんでもねーよ!」


ーーキーンコーンカーンコーン……
校舎から始業を知らせるチャイムが鳴り響く

「ヤバッ!走るぞ弾平!」

隣を歩く弾平の腕を掴もうとした俺の手をするりと抜けて弾平は俺の目の前に…その瞬間、温かい風が俺達の間を走り抜け、道沿いの木々がざわめいた。
時を止めたかのような柔らかい空気がフワッと俺を包む…その真ん中には優しい顔をした弾平…
俺にそっと手を差し出した弾平が朝日を背に浴びてキラキラと輝いて見えた。

「弾平…」
俺の前には愛しい愛しい弾平…


「陸王…行こう!」
優しく温かい光の中で俺の小さな特別は、とびきりの笑顔で頬笑んだ。
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