(01の続き)
リビングには数名の劇団員がいた。
何度か公演を見に行ってるので、名前までは言えないが皆見覚えのある顔だった。
「噂のあざみんのお姉さん?!めっちゃ美人さん!!」
「すげー!そっくりじゃん!莇が女の人になった感じ!」
すごい元気だな…たしか猫のお話で準主役だった子だ。
それからこの前の主役だった新しく入団したっていう子。
お邪魔します、と軽く挨拶をする。
め、めちゃくちゃ見られてる。すごい。
「あれ、ケーキ屋のおねーさんじゃん」
ソファーから声をかけてきた茶色のサラサラヘアーの男の子。
うちのカフェによく来てくれる子で、この子は左京くんから話を聞いてるから名前も知ってる。摂津くんだ。
私が一方的に知ってるだけで、ちゃんと話した事は無いけど。
「こんにちは。いつもご贔屓にありがとう」
その摂津くんの隣で気まずそうに座っている、莇と迫田くん。
これから親に叱られるのを察してる子供みたいでちょっと面白い。
「学生組が多いので少し騒がしくてすみません。こちら座って下さい、今お茶いれてきますね!」
「いえ、すみません。ありがとうございます」
「おい、坊もこっち座れ」
「…」
大きめのテーブルに案内されて座ると、向いに左京くんが座る。
続いて呼ばれた莇がめちゃくちゃ嫌そうに私の隣に腰掛けた。
「…なんかあの光景見た事あんな」
「あれっス、学校の三者面談みたいっス…」
それ私も思った。
紅茶をいれてくれた監督さんが戻ってきて、寮のシステムや現在次の公演に向けて稽古中、など簡単に説明を聞いた。
莇と左京くんが同室なのは普通に驚いたし、ちょっと面白い。
「…というわけなんだが、悪いがこの事はまだ会長には黙っててくれねぇか」
「わかってるよ。そもそも私は莇を連れ戻そうとか考えてなかったからね?ただ心配だから居場所を知りたかっただけ」
左京くんに頼まれるまでもないけど、時間の問題だ。
父は毎回公演を見に行くから、今回も例外無く行くはずだし…バレて連れ戻される最悪の事態は回避しないとなあ。
莇、と声をかけると、隣で少し肩を振るわせたのがわかった。
「普通に心配だから、どこで何してるかぐらい教えて。子供扱いするなって思うだろうけど、子供だからじゃなくて弟だからだよ」
「…わかった。ごめん」
「よろしい」
莇にはやりたいことをやって欲しい。
それがメイクなのか演劇なのか、私にはわからないけど。
家のせいで夢が叶えられないなら、家を出てしまうのも手段だと思う。
…とは言っても、それは私が寂しくて怖いからまだ言い出せないけど。