04
「お手伝いとして一緒に住むことになりましたグレースちゃんです!言葉は翻訳アプリでなんとかしていきましょう!」
カントクって呼ばれてた人が私を紹介しているのだろう。
多分、そう。そんな雰囲気を感じてとりあえずお辞儀をしてみると拍手が聞こえた。
「はい!カズナリミヨシでっす!カズでいいよん!」
「俺っち七尾太一ッス!」
「シトロンだヨ!外国人ナカマネ〜!」
一斉に何か言ってるけどぜんぜんわからない!!!
気迫に負けて思わずカントクの背中に隠れてしまった。
「ちょっと待って!言葉も通じないし怖がらせちゃうでしょ!自己紹介はまた後でね!」
カントクがなにか機械を操作して、画面を見せてきた。
『お腹すいてない?ご飯食べようか』
そこには母国語で文章がかかれていた。
翻訳されるらしい。すごい!
『夕飯の用意するからちょっと待っててね』
と機械で言われたので椅子に座って待つ。
言葉がわかる眼鏡の人が気付いたらいなくなっていて、キョロキョロしていると後ろから肩を叩かれた。
マシュマロの人だ。
「千景を探してるの?」
『…?』
さっきのカントクみたいに翻訳の機械は使ってくれないみたいだ…。
彼は両手で丸を作って目にあてた。
眼鏡…?
「…これ、千景」
「…チ、カゲ?」
眼鏡の人の名前だろうか。
言葉を真似て言ってみると、彼は頷いた。
「千景」
「チカゲ」
眼鏡の人はチカゲっていうんだ!
マシュマロの人の名前はなんだろう。
彼を指さして首をかしげてみると、伝わったようで自分を指さして言葉を紡いだ。
「俺は、密」
「ヒソカ?」
「うん」
名前を呼ぶと少し笑って頷いてくれた。
私も嬉しくなって、頬が緩むのがわかった。
「千景は着替えに行ったから、もうすぐ来るよ」
チカゲ以外はわからなかったけど、曖昧に頷いてしまった。
出会った時のようにマシュマロを差し出されて、今度はちゃんと受け取った。
『ありがとう』
「うん」
お礼が通じたのか、ヒソカは頷きながら自分でもマシュマロを食べ始めた。
「おい、夕飯前に何食べさせてるんだ」
後ろから探してた人の声が聞こえた。
振り向くと、スーツではなくラフな服に着替えたチカゲが呆れたようにヒソカに文句を言っているようだった。
「チカゲ!」
『どうしたの?』
覚えたての彼の名前を呼ぶと、一瞬目を丸くしていたけど視線を合わすように屈んでくれた。
『この国の言葉を教えて欲しいの』
『もちろん、いいよ』
二つ返事で頷いてくれたが、すこし考えているようだった。
『昼間は仕事があるから、俺以外にも先生が必要だな』
チカゲは立ち上がって少し周りを見渡すと、目当てを見つけたようで私の手を引いてそちらに向かう。
「紬、ちょっとお願いがあるんだけど」
チカゲが声をかけたのは、ソファーで何人かでお話していた中の優しそうでおっとりしたお兄さんだった。
「グレースに日本語を教えて欲しいんだけど、暇な時で良いからお願いできないか?」
「えぇ?!俺に務まりますかね…」
「紬さん教えるの上手いから大丈夫ッスよ!」
「成績上がんねー奴に言われてもなぁ?」
「万ちゃん!ひどい!!」
言葉はわからないけど、ここの人たちは皆仲がいいんだなあってわかる。
ツムギ、と呼ばれた人と目が合う。
「月岡紬です。グレースちゃん、お勉強がんばろうね」
チカゲを見ると、『紬も教えてくれるって』と翻訳してくれたので、感謝を込めて頭を下げた。
「…ツムギ?」
名前だけなら覚えられるかも、と不安ではあったが声に出してみると、ツムギは嬉しそうに頷いてくれた。
「俺っちも!名前覚えてもらいたいッス!!太一ッスよ!」
赤い髪の元気な男の子が自分を指しながら何やら喚いてる。
「えっと…タイチ?」
「そう!太一ッス!」
「タイチ!」
「グレースちゃん覚えるの早い!こっちは万ちゃん!」
タイチは隣にいた茶髪のお兄さんも紹介してくれてるみたい。
「バンチャン!」
「おい!教えるならちゃんと教えろ!」
タイチの言葉を真似してみたけど、バンチャンはタイチの頭を叩いていた…痛そう。
「万里だ、万里」
「…バンリ?」
「おー」
間違えたら怒られそうで、恐る恐る口に出してみると、頭を撫でてくれた。
嬉しくてついいっぱい呼んでしまう。
「バンリ!バンリ!」
「はいはい」
バンリはちょっと怖いと思ったけど、笑うとぜんぜん怖くないし優しかった。
「ペットみたいだな」
『…?なんて言ったの?』
『なんでもないよ』