05

皆はもう夕飯を終えていたみたいで、チカゲと、一緒に帰ってきたもう一人と、私の三人でテーブルについた。
「今日は野菜たっぷりカレーです!召し上がれ」
カントクが用意してくれたのは美味しそうなカレーだった。
国は違えど食事はそんなに変わらないみたいで安心した。
食事前のお祈りを、と手を組むと、向かいに座っていたお兄さんにじっと見られていた。
何かおかしかった…?
「映画でよく見るやつだ…すごい」
「いや至さん語彙力の低下やばいだろ」
「俺今天使と同じ食卓にいるのやばくない?」
お兄さんと呆れたように話していたバンリが、隣に座ってきて機械の画面を差し出してきた。翻訳のやつだ。
『日本ではお祈りのかわりに〈いただきます〉って言うんだよ』
「?」
バンリはお手本、というように手を合わせて「いただきます」とゆっくり喋ってくれた。
バンリの真似をしてみる。
「いただき、ます?」
「そうそう」
スプーンを持ってカレーをすくうと、湯気と一緒にいい香りが鼻に抜ける。
熱そう、ふーふーして一口含む。
おいしい!!こんなに美味しいカレー初めて食べた!
「ははっ、すごいわかりやすい」
「耳と尻尾が見えるわ」
チカゲとバンリに笑われてる気がするけど、すごく美味しいから気にしない!
『すごくおいしい!カントクが作ったの?!』
『そうだよ。監督さんの得意料理』
『すごい!』
思わずたくさん頬張ったため、熱くてはふはふしてしまった。

「天使がすぎる…浄化されそう…」
「至さん早く食えよ」

「ごちそうさま」
向かいのお兄さんが食べ終わって、何か言いながら食器を持ち、席を立った。
隣にいたバンリはお兄さんを待っていたようで、お兄さんと一緒に行ってしまった。
チカゲも食べ終わっていたが、私が食べ終わるのを待ってくれてるみたい。
コーヒーを飲みながらテレビを見ているけど、こちらの様子を伺っているようだった。
急いで食べなきゃ、食べるペースを少し上げる。
私の様子に気付いたチカゲは『ゆっくり食べていいよ』と笑っていた。

「ごちそうさまでした」
私が食べ終わると、チカゲは手を合わせて言った。
それを真似して私も同じように手を合わす。
「ごちそう、さま、でした」
食事の最初みたいに最後にもお祈りみたいな事をするみたい。
『グレースは覚えるのが早いね』
『みんなが教えてくれて嬉しい!ありがとう、チカゲ』
髪をくしゃっとするように撫でてくれた。褒められると嬉しいな。
チカゲと一緒に食器をキッチンに持っていく。
カントクがいたので渡すと笑顔で受け取ってくれた。
「すごく美味しいって喜んでたよ」
「本当ですか!よかった〜」
チカゲと一言二言話して、カントクはシンクに立ってスポンジを持った。
洗い物なら私にも出来ないかな…カントクの服を少し引っ張ってみる。
「どうしたの?」
『洗い物、手伝うよ!』
自分とシンクを交互に指さして手伝う旨を言ってみるが、伝わるだろうか。
「もしかして、手伝ってくれるのかな?」
わからないけど、多分伝わった!
私は3回ぐらい頷いた。
黙って見ていたチカゲが吹き出すのが聞こえて、彼を見上げると笑いを堪えていた。
堪えきれてないけどね!
『届かないだろうから、踏み台を持ってくるよ』
『と、届くもん!』
『はいはい』

チカゲが持ってきてくれた踏み台にしぶしぶ乗り、カントクが洗った食器を濯いでいく。
綺麗になったお皿はキュッキュッと音がして楽しい。
ここにはたくさんの人が住んでいるのが、洗い終わった食器の数でもわかる。
全員の名前を覚えられるだろうか…少し不安だ。
私が拭いた食器をカントクが棚にしまっていく。
全て終わって一息つくと、カントクに頭を撫でられた。
「ありがとうグレースちゃん」
「あり、がとう」
「うん、ありがとう!」
なんだろう、お礼みたいな言葉かな?
カントクが嬉しそうだから悪い言葉ではないみたい。