レオナードに無邪気の花束を

あと一分。
バンリのスマホの時計と睨めっこして、秒数を数える。
いつもならもう寝ていないと怒られる時間だけど、今日は特別だから起きていても怒られない。
特別な日だからね!
一時間前ぐらいは眠くて何度も寝そうになったけど、バンリに頼んでおいたからしっかり起こしてくれた。
あと五秒。
談話室から部屋まで行くのに五秒はかかるとみて、談話室を飛び出して小走りで向かうは103号室。

「チカゲ〜!」

ノックをしながらドアの向こうに声をかけると、ドアはすぐに開いて出てくるのは今日の主役。

「おたんじょーびおめでとう、チカゲ!」

チカゲの首に腕を伸ばし飛び付くと、驚きもよろけもせずにしっかりと抱きとめてくれた。

「ありがとうグレース。珍しく夜更かししてるの?」
「今日はトクベツだから!わたし、いちばん?」
「いちばんだよ。…まさか飛び付いてくるとは思わなかったけどね。ずいぶんお転婆になったな」

首にぶら下がってる状態の私を軽々と抱え上げたチカゲ。
目線が高くなった事でチカゲを見下ろす形になり、見るといつもの意地悪な笑顔を浮かべていた。
その頬にキスをすると、珍しく驚いたチカゲの顔が見れて、つい意地悪な笑みがこぼれた。

「チカゲ、いつもありがとう。だいすきだよ」
「まったく…こちらこそ。俺も大好きだよ」

ぎゅうっと抱きしめられて表情が見えなくなったけど、滅多に見られない柔らかい笑顔のチカゲが一瞬だけ見えた。

唯一言葉がわかるチカゲがいなかったら、私は早々にここを出ていたと思う。
最初に発音したこの国の音は、“チカゲ”だった。
みんな大好きで大切な家族だけど、私のいちばんで特別なのはチカゲだよ。

お誕生日おめでとう、チカゲ!