雨宿り

今朝は思っていたより暑くて上着いらなかったな、なんて思いながら登校した。

今は委員会も終わり帰るところだ。先ほど一緒に参加していたちよとは教室で別れた。なんでも北海道物産展があるから豪華弁当買わないと、らしい。私も誘われたがあまり興味がないので断り今にいたる。急いで帰ったところで特に何もない……というのは言い訳で、本音は生意気で可愛くて大好きな彼を眺めたいから。が、外を見るともう彼の所属しているテニス部は誰一人コートにいなかった。

「あれ?おかしいなあ」

ゆっくりよく見えるという理由で教室に残ったのに。それならもう家に帰ろう、彼がいないのなら学校に残る意味がない。はやく帰ってゆっくりしよう。

荷物をさっさとまとめ下駄箱で靴を履き替え外に……

「出られへん。なんでや。あんなに晴れとったやん」

今朝はあんなに晴れていたに、いつの間に雨が降りだしたのか。そうか、なるほど。だからテニス部誰もいないのか。そこまで疑問に思うこともなかった謎が解けた。窓越しに気づかなかったのは降り始めてすぐだったからかもしれない。豪雨ではないがこの中を歩いて帰るとなれば電車に乗るのをためらう程度に濡れるだろう。

「ついてないなあ」

濡れて帰るか小降りなるのを待つか。ボーっと外を眺めながら考えていると、隣に人の影ができた。まだ残ってる人いたんだなー帰るのかなー私は待とうかなー、なんて考えている私に話しかけてきた。


「傘、ないんすか」

「財前……」

「返事なっとらんし」

「いや、財前だと思わんかったし声かけられると思ってへんくて」

ツンデレの彼が自分から声をかけてくれるだなんて夢のようだ。さっきまで探していた彼が目の前にいることだけで嬉しいのに、会話ができるだなんて。

「で、みょうじ先輩は傘持ってへんのですね」

「あ、うん。まさか降るなんて思ってへんくて」

「ありえへん、今日70%や言うてましたよ」

すっごい見下した顔をして話す彼に、ニュースどころか天気予報すら見て来なかったのを知られ恥ずかしくなる。

「き、今日は寝坊してニュース見られへんかってん」

「そうですか、朝はよからメール入ってたのは気のせいですかね」

「う……」

朝起きて携帯チェックしたら寝てる間に返事が届いていた。それが嬉しくてすぐにメール返してしまったのだ。明日からはニュース、せめて天気予報だけでも見ようと心に誓った。

「ほな」

「え、ちょ、待ってや!まさか帰るん?」

歩き出した彼の腕をつかむと、当たり前だろと言わんばかりの振り向き顔。

「傘ない女の子を置いて一人で帰るん?!」

思わず制服をつかむ。睨んできたかと思えば小さくふるえ「ぶっっ」と声をだして笑いはじめた。少し待ってみたものの終わる気配はない。

「あの、何をそんなに笑ってるんですかね」

「冗談のつもりやったのに、あんまり必死やから」

ニヤニヤした顔。生意気。でも可愛い。

だって

「ほら、行くで」

手をひいて傘に入れてくれたんだもん。



こういうところがたまらなく好き。