「ねえねえ、いい加減無視するのやめてよ〜」
「もうっ!いつまでついてくるの!?」
女の子の後ろについてくるのはオレンジの頭の男の子。
そんな二人のお話。
「だからさ〜なんで待ち合わせには来てくれるのに僕が来たら帰るの?」
「メールがきたから。待ちぼうけさせるのは嫌いだから。義務を果たしたら帰る、それだけ」
さっぱりきっぱり言い放つがそれでも諦めない、すたすたと歩く彼女に必死についていく彼。
はたから見ると、ケンカしているカップルでしかない事は本人達にはわからない。
「私じゃなくても千石にはいっぱい女の子いるじゃん」
「何度も言ってるでしょ?こう見えて硬派なんだよなまえちゃんだけだって」
「そういう台詞が軽い!ていうかデートしないのわかってて毎週なんなの?」
道の隅でやっと向かい合う。
「なまえちゃんとデートがしたいんだって」
「じゃあ一回デートしたらもういい?私も暇じゃないの」
いい加減にして!
今までで一番強い拒絶に、一瞬傷ついた顔をしたが、真剣な表情へとかわる。初めて見る真剣な顔に今度は彼女がたじろいだ。
「僕こんなんだから本気にしてもらえないけど、本当になまえちゃんが好きなんだ」
今までも何度も好きだと伝えてきた。それでも伝わらない事がもどかしかった。
でも彼女はそれに答える事は一度もなかった、伝えるほどに不機嫌になる。
「嫌いなら嫌いだと、無理なら無理だと言ってほしい」
じゃなきゃ諦めきれないんだ、可能性にかけたくなるから。
最後の方は聞いている方が辛い声だった。
「嫌いじゃ、ない」
消えるような声で返ってくる返事に少しほっとする。
「じゃあ何でそんなに拒絶するの?」
「千石って女好きじゃん」
「まあ、否定はできないかな」
困ったように笑う彼に彼女は言った。
「だからだよ!そのうちの一人になりたくない遊ばれたくないの」
泣きそうな顔を見て頭を撫でようとしたが、今までからすると嫌がられる。上げた手の行き場をなくし、力なく戻した。
「そんな、弄んでるみたいな言い方しないでよ」
「千石とは不安になるよ」
「なまえちゃんさ、毎週なんなのって言ったでしょ?」
うつむく彼女に思い出したかのように語りかける。
「うん、言った」
「毎週会ってるんだよ」
「だから、なに?」
「僕はなまえちゃんとしか会ってない」
この意味わかる?
僕には君しかいないってこと。