中学校生活最後で運を使い果たしたと思った。
だって、何度も片想いすら諦めようと思っていた、すごくモテるあの財前光に告白されたのだから。
「返事ほしいんやけど」
まさか告白されると思っていなかった私は、目の前でフリーズしていたようだ。
「あ、あの、あの」
「おん」
それに告白だなんて初めてで、どうして良いかがわからない。何も言えない私にしびれを切らした彼が質問攻めをしてくる。
「今付き合ってる奴いてんの?」
「おれへん」
「ほな好きな人は?」
「す、好きな人……」
好きな人はあなたです!
そう言いたいのに、その言葉は赤くなって頬を染めていく。
「おるんや」
「それはその…ね?」
お願い、この態度と顔で察してほしい。それともわかってての意地悪なのか?まさかこの教室を射す夕陽が私を赤くしていると思っているのか?それはメルヘンだよ財前君。時々、焦る私をからかうから、きっと今もわかっていて意地悪をしているんだろう。
「ふうん……でも片想いなんやろ」
「りょ!うおもいに、なりました」
両想いと自分で放った言葉がなんだか照れ臭くて、彼の驚きの顔がまた私を照れさせる。
これで完璧に通じた、我ながら初々しいやりとりに照れくささが襲いあちこちむず痒くなってくる。
「そ、か」
「ふふ」
でも今から恋人なのかと思うと嬉しくて笑いがこぼれる。
「ふった相手によー笑えるな」
「……ふぇ?」
ふった相手に?誰が誰をふったの?
「ちなみに、誰かって聞いてもええん?」
「誰かって……」
あれ?なんか話がかみあっていない。
財前君とだよ、とは恥ずかしくて言えないので指先を綺麗に整えてあなたです、と示す。
その手を見てしばしかたまり、ちらりと後ろを振り返るが誰もいない教室。
「……俺?」
「は、はい!」
そうです!と両手を拳にして力強く答えると、ため息のようなものをついて私を見る。
「今の会話のどこに返事があったん、全然わかれへんわ」
「うええええ!?」
そう言われてみればしてないかも?
頑張って思い出そうとするが言われた通り返事をした記憶がなかった。
「ご、ごめん!私先走ってもーてこの前も家でこけた時に」
もう何を話しているのかわからないくらいに焦っていて、止まったのは両手を握られたから。
「俺のこと、好きなん?」
「す、き」
好きと伝えれば満足そうに笑った。
「ほな、ええねん」
「これから、よろしくです」
ぺこりと頭を下げると「よろしくしたるから名前で読んでやなまえ」と言われた。
「そ、そんないきなり名前呼ばれへんよ!ずっと財前君は財前君でそれで財前君も財前君が名前を」
またもやパニックになっていると「ふはっ」と笑われた。
「なまえのそういうとこ、好きやわ」
私も財前君のそういうちょっと意地悪なとこが好き!
そう返したら意地悪なことしたことはないって、本気で不思議そうにしてたから、私にはそれが不思議で二人でうーんって唸った。